現役内科医が語る:そんなに都合のいい食べ物はありません。でも修行もいりません。

 外来でよく「何を食べたらいいですか?」という相談を受けます。糖尿病や脂質異常症、高血圧症などの生活習慣病の方々にとっては、きっと切実なのだと思います。

「何をやっても痩せません、自分はそんなに食べていない筈です、テレビで〇〇がいいと言っていたのですが・・・」みたいな感じです。

そんな患者さんに対してまず私が言うことは大体決まっています。「何を食べるかよりどれだけ食べるかですよ」。次が「ふつうの患者さんが摂取するカロリーは100パーセント口から入ってきます」。さらに「摂取するカロリーと消費するカロリーの差し引きで太るか痩せるかは決まります」。

どれも、それだけ聞けば当たり前のことなのですよね。でも言われてハッとする人が多いのです。

当然ながら、低カロリーのものをいっぱい食べてお腹を一杯にすれば一日の摂取カロリーは減ります。なのでどんなものを食べるかは、まるで意味のないことではありません。また、炭水化物だけドカ食いしたら血糖値が急に跳ね上がって色々悪さをする話も最近は随分と有名になっています。色々なものを組み合わせて食べるといった工夫はもちろん大事なことです。

でも、いくら体にいいと言われている食品であっても、普段の食事をそのまま食べて、そのうえ追加で食べるのでは、単に摂取カロリーが増えるだけです。組み合わせでカロリーの吸収が穏やかになる効果を打ち消して余りある量を食べてしまえば、あまり意味がありません。

たとえてよくお話するのですが、「バナナが体にいいと健康番組でやっていたからといって、毎日一房バナナを食べ続けたらどうなると思いますか?」というと、大抵の患者さんは笑います。カロリーの摂りすぎですよねと指摘すると、そうだそうだとなります。でも実生活では似たようなことをやってしまうものなのです。

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毎日一房バナナを食べ続けたらどうなると思いますか?

そんな患者さんたちには、足すのではなくて置き換える発想を強く持って下さいと説明します。そして、別に健康にいいと言われているものばかり食べなきゃいけないなんてことはない、基本的には食べたいものを食べていいのですとお話します。

その代わり、足してどれだけの量を食べたかを意識しましょうと言います。総量が程々におさまっていればなんでもいいのですよとお話します。すると皆さん安心して帰っていかれます。

まあ、だからと言って皆さんすっかりうまくいくわけではないのですけどね。でも食は人生の喜びのかなり大きな部分を占めますから、出来るだけ食べたいものを食べ続けられるように少しの心がけを継続してほしいなと、そんな風に思います。皆さんの健康と楽しい飲食生活を心から願っております。くれぐれもやりすぎませんように。

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この記事を書いたのは

小野江 和之

医師、医学博士。札幌南高校卒、北大医学部卒。1971年生まれ。 医療法人社団 緑稜会 みどりクリニック医師。 2004年愛知県の某大学病院へ赴任。医療を取り巻く情勢の変化や様々な体験から一念発起、2007年北大ロースクールへ進学。子連れ学生であったため、修習期間中の資金確保目的で2009年休学して外務省へ入省、中米ホンジュラスへ赴任。2011年帰国を果たすもロースクールを自主退学、2020年6月より現職場。道外からみた北海道、業界外からみた医療業界、海外からみた日本。視点の多様性がいかに重要であるかひしひしと感じます。弁護士さん方とともに、医療と法律にまたがる各種問題解決についても携わっています。

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