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現役内科医が語る:インフルエンザ大流行。インフルエンザのインフルエンサーにならないために。

 今年はインフルエンザの流行が早そうですね。ちょっと前のニュースでは沖縄での大流行を伝えていましたが、もう札幌市内でも学級閉鎖や臨時休校をしている学校があるようです。危険はもうすぐそこまで迫っています。

 「ここ数年インフルエンザなんてかかったことがない」と豪語する人、たまにいますよね。おそらくその人は本当に元気でここ数年具合が悪くなって寝込んだことなどなかったのでしょう。しかし、それは本当にインフルエンザにかかったことがなかったと言い切れるのでしょうか?


 「不顕性(ふけんせい)感染」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。何かの感染症にかかっているけれどもそれに伴う症状がない状態のことです。上のインフルエンザの話になぞらえて言えば、「インフルエンザウィルスに感染していない」のではなくて「インフルエンザウィルスに感染しているけど症状がない、具合が悪くない」ということです。

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自覚症状がなくともウイルスを排出しています。

 ここらへん、本人の体調としてはおそらく大きな問題ではありません。なぜなら、感染していようがいまいが当の本人は具合が悪くないからです。

 しかし、もし「今後」この人がまたインフルエンザウィルスに曝露されて感染した時、その時も間違いなく無症状で済むと言えるでしょうか?

 言えないですよね。同じ病気であってもその時々によって経過はさまざま、症状のないこともあれば軽い症状がでることもありますし、もちろん重い症状でかなり具合が悪くなることだってありえます。

 体力があって毎度元気な人は次回も何もなく過ごす見込みは高いかもしれません、でもそれは絶対とは言えないのです。次は症状が出るかもしれませんし、そこで無理をするとこじれて大変なことになる可能性だって当然あります。

 また、インフルエンザは人から人に容易にうつります。不顕性感染の人だって体外にウィルスなどの病原体を放出しています。そのウィルスに曝露されて別の誰かも感染した時、果たしてその人の症状や経過はうつした人とまるで同じでしょうか?答えはもちろん違います。これは経験的にわかると思います。自分が大丈夫だから他人も大丈夫と思ってはいけないのです。

 こう考えてみた時に、インフルエンザが流行している時期に予防を心がけることがいかに大切かわかっていただけると思います。自分自身だけではなく社会全体の問題なのです。ウィルスを放出している時期、むやみやたらに外出したり他人と接触することがいかに無責任なことか。


 インフルエンザ感染を予防する上での要となるのがワクチン接種です。ワクチンというものは宿命的に効果を実感しにくいもので、たとえば頭が痛い時に痛み止めをのめば多くの人は「あ、効いてきた」とわかるわけですが、ワクチンをうってもし感染防御出来たとしても、その効果を実感することは困難です。

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要となるのはワクチン接種

 ワクチンをうたなくたってインフルエンザにかからなかった可能性は当然あります。また、もしうってもかかってしまった場合に、実はワクチンのおかげで不顕性感染化したり軽症化していたとして、それを実感することもおそらく難しいでしょう。個人レベルの体験談で語ることの出来ない性質の問題なのですね。


 しかし、大きな集団で見た場合にはその差がきちんとつくのです。ですから私たち医者はインフルエンザワクチンの接種を皆さんに強くお勧めします。ワクチンを接種することで自分だけではなく周囲の人々、それは家族であったり同級生や同僚であったり、さらには社会全体の色々な人々、乳幼児や高齢者、重篤な基礎疾患を持つ人や妊婦さん(致命的になります)、何かの医学的理由でワクチンをうてない人々など、世の中全体に大いに利益があるのだということを理解したうえで接種の判断をして欲しいと、一呼吸器内科医は切に願います。皆の幸せが自分の幸せにもつながる、素敵なことだと思いませんか。

 特に今シーズンは流行が早く、感染力もかなり強い印象を受けます(おそらく正しいです)。出来るだけ早めのワクチン接種を強くお勧めします。ちなみに私は数日前に接種を済ませました、私が患者さんにうつしてしまっては大変ですし、もし発症したら自分自身も辛いですからね。

この記事を書いたのは

小野江 和之

医師、医学博士。札幌南高校卒、北大医学部卒。1971年生まれ。 札幌白石記念病院勤務。 2004年愛知県の某大学病院へ赴任。医療を取り巻く情勢の変化や様々な体験から一念発起、2007年北大ロースクールへ進学。子連れ学生であったため、修習期間中の資金確保目的で2009年休学して外務省へ入省、中米ホンジュラスへ赴任。2011年帰国を果たすもロースクールを自主退学、2020年6月より現職場。道外からみた北海道、業界外からみた医療業界、海外からみた日本。視点の多様性がいかに重要であるかひしひしと感じます。弁護士さん方とともに、医療と法律にまたがる各種問題解決についても携わっています。