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労働あり、なまはげあり、スケバンあり、きのこありのワークインプログレス

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「ダンス作品の創造」と「表現者の権利や暮らしを考えること」を軸に活動する【Sapporo Dance Collective(サッポロダンスコレクティブ・以下SDC)】。上に立つ人の指示で動くのではなく、「集まった人々」の考えや行動で成り立つSDCについての不定期連載の2回目は、2019年11月22日に行われた第2回ワークインプログレスの模様をご紹介します。

前回の記事:集まった人々、集まった表現で、作り上げるダンス―Sapporo Dance Collectiveとは?

作る過程を見せて研ぎ澄ましていく

生活支援型文化施設コンカリーニョにて、9月に引き続き2回目となるSDCのワークインプログレスが行われました。

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photo:ナガオサヤカ

ワークインプログレス(work in progress)とは、直訳すると生産途中の製品、進行中の作業、取り組み中という意味で、現代アートの分野では完成までの過程も作品としてみなす手法のことです。SDCでも、本公演に先駆けてワークインプログレスとして、3回に渡り創作途上の作品を上演しているのです。

2019年はSDC内にていくつかのチームが自主的につくられ、【HOME】をテーマにダンスの創作が進められています。ワークインプログレスは2月の本公演までに全3回行われ、それぞれのチームの作品がオムニバス形式で上演されます。

ワークインプログレスで発表されるのは、前述の通り完成された作品ではなく、創作途上のものです。その都度の観客の反応や他のチームからの意見に触れて、さらに練り上げた上で作品を完成させていきます。公演の開始時間を20:00からと遅めに設定したのも、「どのような時間帯であれば観客の足が向きやすいか」という実験だったそうです。

また、今回のワークインプログレスでは、【Hokkaido Artists Union studies (ホッカイドウ・アーティスツ・ユニオン・スタディーズ・以下HAUS)】の、クリエイターの労働に関する勉強会が各チームの公演に先立って行われました。
HAUSとは、アーティストや芸術に関わる人たちの労働環境の見直しや権利について考える取り組みです。ダンス作品を創作して見せるだけがSDCの活動ではないのです。

労働問題そのものとともに物事の見方を変えることを学ぶ

HAUSの勉強会はゲストの齊藤勉さんの手品からスタート。

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photo:ナガオサヤカ

春闘をはじめとして、勤労者の生活改善のための運動などを行う労働組合の集まりである、「連合北海道」の副事務局長でありながらラジオパーソナリティもつとめる齊藤さん。今回は「労働漫談家」として、労働に関する権利やトラブル、労働問題に直結する法律などをコミカルに語りました。

全国の中学校の教科書を引き合いに出し、労働者の権利を守るための法律などについて学生のうちに学ぶ機会がいかに少ないか、そのために職場や労働に関するトラブルに悩む若者が増えていることなどをわかりやすく解説してくださいました。齋藤さんいわく、「まずは労働に関する権利と義務を知ることから始め、困った時には専門の人に直接相談するのがよい」とのことでした。

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資料として、HAUSが9月末から行っていた「アーティストの働き方と現状と意識に関するアンケート」のまとめも配布され、アーティストやクリエイターの活動のリアルが垣間見られました。

「変化を楽しむ」ワークインプログレス

いよいよダンスの上演に入ります。まずはBチームから。
メインテーマの【HOME】からインスピレーションを受けたキーワードを元に創作を行っています。

Bチームの創作の原点は、「なまはげ」「子ども食堂」「ひきこもり」。

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人と人を区切ったり繋いだりするアイテムとして「枠」が初めて登場 photo:ナガオサヤカ

他者との関わりを表現の軸に盛り込もうとしています。

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photo:ナガオサヤカ

今回から参加のAチームのキーワードは「スケバン」。目指すは昭和のスケバン! 

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「コーヒールンバ」のメロディーに乗って乱暴なルンバを photo:ナガオサヤカ

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photo:ナガオサヤカ

でも、単なる反抗やファッションとしての非行を表現したいわけではないようです。

Cチームは「労働ときのこ」。
HAUSの活動と最も近いところを表現しようとしています。

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photo:ナガオサヤカ

圧力の高いノイズときのこの胞子がステージを覆います。

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photo:ナガオサヤカ

1回目のワークインプログレスから特に大きく変化をしたのはCチームだったようです。

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前回のワークインプログレスでのCチーム photo:ナガオサヤカ

全チームの上演終了後、観客とのトークセッションが行われました。今、見たばかりの作品の印象や感想、疑問を客席から出してもらい、それに答える形で進みます。

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観客から声を発しやすいよう、プログラムとともに付せんを事前に配布。トークの前に記入された付せんを集める

客席からは、素朴な疑問やダンスの手法に対する鋭い質問、チームすべてへの丁寧な感想などが上がりました。それぞれが貴重なものだったようで、今後の創作にどう影響が出てくるのかが楽しみです。

客席の傍らでは、温かい飲み物やグッズの販売など、SDCの発表の場に訪れた観客をいかにもてなし、楽しんでもらえるかの試みも行われていました。

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Cチームの舞台で登場したプリニョンも新グッズとして好評

作品の成長過程を目にするという機会は、なかなかありません。ワークインプログレスを通してダンサーたちが試行錯誤し、進んだり後退したりする姿を目の当たりにすることで、仕上がった作品の重みや意味をより強く感じることができるでしょう。

本公演までに、ワークインプログレスはもう1回行われます。
小さい子どもの成長を見るように、表現やダンサーたちの変化を楽しんでみてはいかがでしょうか。

この記事を書いたのは

わたなべひろみ

フリーライター・捌けるライター。
食と生産者、クルマ、多様な生き方など多岐に渡る分野で執筆中。
魚を捌いてレポートするのが得意。
ひょんなことから現代アート・演劇・ダンスに引きつけられて十数年。
ライヴな魅力を伝え、1人でも多くの人と一緒に体験したいという野望のために日々勉強中。
札幌以外に住んだことのない札幌生まれ。