sodane

食品にあるまじき禁断のビジュアル――ゾンラーメンを食べてみた

これまで北海道珍土産として、「名前から」味が想像できない製品を紹介してきた。

しかし、珍土産には「見た目から」味が想像できない製品も含まれるのではないだろうか。

そう考えて調べた結果、とんでもない見た目の珍土産を見つけてしまった。

食欲減退は免れない、ゾンビもびっくりの青い麺

今回紹介する北海道珍土産は、有限会社ハシエンダインターナショナルが販売する「ゾンラーメン」だ。

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黒を基調としたパッケージに描かれているのは、北海道小樽市をPRする非公認キャラクターで、ゾンビのクマであるゾンベアーのイラストだ。

ゾンベアーは、自分をかわいがってくれた持ち主の少年を探し、70年も散歩を続けているぬいぐるみのクマである。

歩き続けるうちにどんどん体がほつれてくるが、いつも優しい人が直してくれるという強運の持ち主だ。

ゾンベアーのラーメンなので、ゾンラーメンという名がつけられている。

パッケージにはゾンベアーのイラストとともに、目玉が浮いたラーメンの写真が使用されている。

本当に食品として売る気があるのか、疑問を隠せないビジュアルだ。

とりあえず、開封してみよう。

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青い乾麺とゾンベアーのイラストつきラーメンスープ、そしてゾンベアーの紹介カードが入っていた。

この時点で、パッケージに使われていたラーメンの写真は、合成でもなんでもないと知る。

本当に、青い麺なのだ。

ラーメンに使われる中華麺は、どんな味のスープにも映える控えめな黄色だろう。

一方こちらの麺は、食欲を減退させる色といわれている青だ。

なぜ、青色の麺を生み出してしまったのだろうか。ご担当者様は、こう語る。

「ゾンベアーの雑貨はいろいろ作ったけれど、食品は作ったことがなかった。

ゾンベアーの食品を作るとしたら、食欲が失せそうだけど食べるとおいしいラーメンを作ってみたいと思っていた」

食欲が失せそうな食品なんて、本末転倒だろう。

しかしゾンベアーらしさを追求し、グロく見えるけどウマいラーメン、つまり"グロウマ"なラーメンを開発しようと決意したのだそうだ。

麺の青色を出すためには、クチナシ色素が必須だった。

しかし、入れすぎると麺の味を損なってしまうし、減らしすぎると麺が緑色になってしまうため、調整は困難を極めた。

北海道のメーカーと相談し、試行錯誤を重ね、ようやく納得できる青色麺のグロウマラーメンを開発できたという。

しかし、そんな感動的な苦労話を聞いてもなお、パッケージの写真はグロマズにしか見えない。

1ミリも、いや1ミクロンも、おいしそうだとは思えない。

本当に買う人がいるのか疑問に思うが、そこはやはり北海道が誇る珍土産。

数多のテレビ番組で紹介され、北海道土産店でも通販でも長く取り扱われている人気の品だ。

リサーチをしてみると、チャレンジャーたちが盛り付けにこだわったゾンラーメンの画像が次々と出てくる。

グロテスクなものが苦手な私は、リサーチの時点で軽く吐き気を覚えたほどだ。

正直、珍土産記事の題材にせずスルーしてしまおうかという考えも頭をよぎった。

しかし、ここでご担当者様の快い一言。

「おもしろければ、どんな記事にしていただいても構いません。」

なんという懐の深さだ。この麺の青色のように、どこまでも深い。

それならば、思いっきりやってやろうじゃないか。美術センスもグロテスク耐性もゼロの、この私が。

やるならとことんグロさを極めろ!調理&盛り付けの軌跡

早速青い麺をゆでてみたくなる気持ちを抑えて、まずはラーメンに必須であるトッピングを準備する。

今回はグロウマラーメンを作るため、普通のラーメンとは少々異なるトッピングをそろえた。

まずは、ゆで卵を作る。

ゆで卵の殻にヒビを入れ、食紅をとかした水に数時間つけておくと、模様が入る。

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しっかりとヒビ模様が入ったことを確認し、焼きのりとチーズ、ケチャップで飾って目玉のようにする。

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うわぁ......。想像以上に目玉だ。

ヒビが充血しているさまを表している。この時点でもう気持ち悪い。

続いて、ウインナーで指を作る。

爪や関節も表現するため、丁寧に皮を剥いで切り込みを入れていく。

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そしてケチャップで飾りつけをして、完成だ。

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指っぽい......。これ、私が食べるのか。オエェ......。

さらにダメ押しで、鱈の白子(北海道では"マダチ"と呼ぶ)をゆでる。

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白子自体はプリプリとしていて、とてもおいしそうだ。

これにポン酢をかけ、ネギともみじおろしを添えれば、間違いなく日本酒が進む。

そろえたトッピングを、すべて並べてみる。

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並べてみると、白子も気持ち悪く見えてきた。

目玉の上に置いたことで、脳みそ感が高まっている。

さて、トッピングの用意が終わったところで、いよいよ麺の調理をしていこう。

まずは麺をゆで、その後スープを入れるという手順だ。

お湯が沸騰したところで、麺を入れる。

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私は今、何をゆでているんだろう。

思わずそんなことを考えてしまうのも、仕方がない。

なぜなら鍋のなかには、見慣れない色をした麺が入っているのだから。

麺がほぐれたところで、スープを投入する。

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麺の青さに気を取られていたが、スープも黒ずんだ青色だった。

パッケージには「ガラ塩味」と書かれていたが、ガラ塩の色ではない。

なんというか、「地獄味〜現世の恨みをすべて詰め込んで〜」みたいな色だ。

このラーメンを作るために新しく購入した白い鍋が、余計に青色の異質さを際立たせる。

この鍋も、まさか買われて早々に青いラーメンを入れられるなんて夢にも思わなかっただろう。

自分で購入したものの、少しばかり鍋には同情してしまう。

そうこうしているうちにゆで上がったので、麺とスープを丼に移す。

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そして、先ほど用意したトッピングたちを盛り付ける。

これで、グロウマゾンラーメンの完成だ。

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気持ち悪い......。

こんなの、どこからどう見ても食べ物ではない。

我ながら、かなりグロテスクに作れたと思う。

苦労して完成させたので、友人知人に写真を送りつけてみた。

「え、何これ食べ物?」
「おいしそうとは全く思えない」
「白子が良い感じに気持ち悪い」

みんな、予想通りの拒絶反応をくれた。

地獄のようなスープも麺も、意外と......?

さて、盛り付けた時点で達成感に包まれかけたが、まだ実食という大仕事が残っている。

そう。食品である以上、肝心なのは味だ。

正直、気持ち悪さを我慢しながら調理し盛り付けたので、味くらいはまともなものであってほしいと願う。

一方、こんな見た目のラーメンがおいしいわけがないとも思ってしまう。

覚悟を決め、まずはスープを一口。

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......あれ?

......おいしい。

パッケージに記載されていたとおり、きちんとガラ塩の味がする。

見た目の禍々しさに反し、癖のないあっさりとしたスープ。

現世の恨みも妬み嫉みも詰まっていない、むしろそんな感情は捨て去りましたというくらい、すっきりとしているスープだ。

続いて、ゆでてもあせることなく青色が保たれた麺をすする。

変な味がついているわけでもなく、小麦の味がしっかりとする普通の麺だ。

ガラ塩スープがしっかりと絡んだ麺は、見た目に反しておだやかな旨味を口内に届けてくれる。

だが、麺に練りこまれているクチナシ色素の影響だろうか。

普通のラーメンとは異なり、後味にほんのりと苦さが感じられる。

しかし、ラーメンの味を崩壊させるような強い苦味ではないので、問題なく食べ進められる。

なんだ、普通においしいじゃないか。

そう思って丼を見ると、青々としたスープと麺が視界に飛び込んでくる。

おまけに、自作の目玉がギョロリとこちらを睨んでくる。

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これだけおいしくても、やはりこの異常な青さを見てしまうと食欲は失せる。

食べている最中は、必要以上に丼へ視線を落とさないことがコツかもしれない。

そして、グロさを高めるためにあしらった白子が、意外な効果を生み出した。

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さっぱりとした塩味のスープに、白子からあふれる濃厚なエキスが絡む。

スープを一気にワンランク上の味に仕上げる、革命的なマリアージュ。

白子は間違いなく、今回乗せたトッピングのなかでベストな働きをしてくれた。

一方、卵やウインナーの飾りに使用したケチャップの甘みと酸味は、スープの繊細な味を邪魔しているように思えた。

ケチャップは効果的に使うとグロさを倍増させられる便利なアイテムだが、あまりスープに混ざらないよう工夫する必要がある。

アレンジの幅は無限大。インパクト抜群のゾンラーメンを作ろう

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今回は、強烈な見た目のゾンラーメンを紹介した。

口にするのがためらわれるほどの禍々しい見た目だが、味は普通においしかった。

ユーモアが通じる間柄であれば、爆笑必至のお土産となるだろう。

ゾンビ感が増すようにトッピングを工夫すると、異質なビジュアルを楽しみながら食べられる。

チャーシューやメンマといった定番の具を盛り付けても、普通のラーメンとの違いが浮き彫りになっておもしろいかもしれない。

楽しくおいしく、一風変わった北海道土産を堪能したい方は、ゾンラーメンにチャレンジしてみてほしい。

この記事を書いたのは

相良海琴

札幌在住のライター。 珍土産実食レポートやインタビュー音源記事化など、引きこもり型執筆スタイルを貫く。
人や商品の魅力を伝える記事を多数執筆。
写真が趣味で、撮影と記事執筆を同時に担当することも。
好奇心旺盛で食の冒険をすることが多く、不思議な食べ物を見つけたらとりあえず口にしてみる。