小野江医師の呼びかけ【新型コロナ:これから涼しい時期を迎えるに当たり】

 今年は(も?)残暑の厳しい夏でしたが、最近はいよいよ秋の気配が漂っています。空にはトンボが飛び、日が短くなって夕方暗くなるのも早くなり、夜は虫の声がにぎやかです。スーパーには生筋子が並びはじめました。
 今までは暑くてドアや窓を開けっぱなしで過ごしていた皆さんも、そろそろ夜は窓を閉め切るのではないでしょうか。街の賑わいがだんだん元通りになりつつあります。世の中の色々な活動についても制限が減ってきています。大規模なイベントの人数上限も撤廃になるという話ですよね。夏の間、なんだかんだで新型コロナの患者数が増えても重症者はそんなに増えない状況が続いていました。しかし上記の通り、世の中の状況はだんだん変わってきています。再度の患者数急増が懸念されます。
 流行が若い人たちの間だけであれば重症者もそんなに増えないのでしょうが、家庭内や職場内のどこかで、必ず世代をまたいだ感染の連鎖が起こります。秋から冬にかけて、中高齢者や体が弱った人の多い屋内に感染が拡がるのではないかと心配しています。

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寒くなると窓も開けづらくなりますね 画像:PIXTA

 北海道で非常事態宣言が出された2月下旬以降、手洗いやマスク、いわゆる「3密」回避など、皆で色々なことに気を付けながらここまでやってきました。欧米諸国などと比べて重症者や死亡者が圧倒的に少ない理由の一つは間違いなく市民レベルの取り組みの徹底です。すごいことだと思います。 国内外の専門家の間では、日本の現状は高く評価されています。指揮をとった専門家会議や保健所などの行政各部署はもっと市民から高評価されるべきだと思いますし、実際に色々と最前線で頑張った主役の我々自身も、もっと胸を張っていいと思います。私たちはここまでうまくやってきました。
 出だしの頃は敵の正体が見えませんでしたから、とにかく出来る対策を順番にしっかりやっていこうという方針でした。学校は休校になりましたし仕事も在宅で出来るものは在宅に移行、色々なお店が休業したり時間短縮営業を行いました。危険と想定されるものは皆で極力避けました。
 しかし今はあの頃とはちょっと違います。新型コロナについてわかっていることが増えてきました。とても有効な対策、そうでもない対策、いろいろみえてきました。また、流行のたびに社会全体で外出自粛するようなやり方では、新型コロナの流行は抑えられても社会や経済がおかしくなってしまい、無視出来ない色々な不利益が生じます。ですから今後は、より優先して行うべき対策を、メリハリつけてしっかりやっていくことが大事になります。
 手洗いの徹底や屋内の「密」な空間でのマスク着用は今まで通りです。そして、今はまだやることを控えるべきこと、皆さんなんとなくわかりますよね。たとえば大人数の飲み会。接待を伴う飲食店への出入り。カラオケ。他にもいくつか思い浮かぶものがあると思います。こういったことは引き続き極力避けましょう。ここが守れなければ、流行の蔓延と患者数の激増を招く恐れがありますし、本当であればそんなに危険でもない社会経済活動まで一律に制限しなければいけないことになります。今日控えるべきことを控えないことが、巡り巡って自分たちの首を絞めることになるのだということを、ふと思い出して欲しいと思います。
 来月中にはインフルエンザワクチンの接種が始まると思います。私自身は例年も積極的にお勧めする立場なのですが、特に今年は可能であればみなさん接種した方が宜しいかと思います。
 インフルエンザにかかりにくく、かかっても重症化しにくくするだけでも、新型コロナと紛らわしい状況に陥ることをある程度防げるのです。自分のためでもあり、世のため人のためでもあります。よろしくお願い致します。

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この記事を書いたのは

小野江 和之

医師、医学博士。札幌南高校卒、北大医学部卒。1971年生まれ。 医療法人社団 緑稜会 みどりクリニック医師。 2004年愛知県の某大学病院へ赴任。医療を取り巻く情勢の変化や様々な体験から一念発起、2007年北大ロースクールへ進学。子連れ学生であったため、修習期間中の資金確保目的で2009年休学して外務省へ入省、中米ホンジュラスへ赴任。2011年帰国を果たすもロースクールを自主退学、2020年6月より現職場。道外からみた北海道、業界外からみた医療業界、海外からみた日本。視点の多様性がいかに重要であるかひしひしと感じます。弁護士さん方とともに、医療と法律にまたがる各種問題解決についても携わっています。

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