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”介護崩壊”はなぜ起きた?③ 警戒ステージ3の札幌で”いまできること”は? 

 今年5月、北海道を襲った新型コロナウィルスの感染第2波。
その波の中で起きていたのは”介護崩壊”でした。

 札幌市の介護老人保健施設、茨戸アカシアハイツ。最終的には92人が感染、17人が死亡しました。

 HTBは市の報告書と施設の報告書、さらに独自取材を加えてなぜ起きたのかを検証しています。


 「アカシアの入所者が次々と運ばれていきます…」92人が感染した、茨戸アカシアハイツ。搬送開始から4日後に、札幌市はようやく現地に対策本部を置きました。設置を勧めたのは、国が派遣した災害対応を担う医療チーム=DMATの医師たちです。

 厚労省DMAT医師「人員がどれだけ足りないか。入院が必要な人がどれだけいるか、物資がどれだけ必要か。行政内での情報共有がうまくいかなくて。全体を見て何が一番必要かというのを判断する責任者が当時いなかった」

 アカシアハイツの前には、休憩用のプレハブが建てられました。食事をとるテーブルを決めたら、隣の人と2m以上間隔を空けて座ってもらいます。仮眠用のベッドも整え、改めて、マスクの付け方、外し方など職員への感染症対策の研修も始まりました。

 残る課題は人材不足です。DMATの医師は一枚の表を作りました。

 医師「業務内容が何で、何の職種が何人いつまでに必要なのか、安全に勤務できるようにこんな感染対策をしていますというところまで、しっかり情報が吸収されないと、なかなか人は集められなくて」表をもとに保健所以外の部署も人材確保に動き出し、応援のスタッフが集まり始めました。

 応援に入った人は「わが法人にもあり得ることだなと。他人事でないと。」「人がくれば助かるという話があったので、連絡をとった」

 "中止されていた、入浴支援が再開。1日2回だった食事も、3回に戻りました。感染したり、濃厚接触者になっていた職員も復帰。施設内に陽性者はいなくなりました。"

 7月3日に茨戸アカシアハイツのクラスターは終息しました。感染者は92人 死者17人でこのうち施設内12人に上りました。

 終息から3か月後に出た、市の報告書です。ここで初めて感染拡大のきっかけが明らかになりました。

 クラスターに認定される2週間前の4月15日。同じ建物にあるデイケアで陽性者が出ました。6日後には利用者一人の感染と職員一人の発熱が発覚。しかし、市は電話の調査だけで「デイケアとアカシアには往来がほぼない」と判断。アカシアハイツでは普段通りの生活が続けられました。

 市は24日に初めて「デイケアとアカシアの入所者が同じ機能訓練室を利用していた」こと、「従業員も同じ配膳室やロッカー室を使っていた」ことを把握したのです。
 アカシアで最初の患者が出てから、わずか一週間で入所者42人、職員9人が感染しました。見えないウイルスは施設全体に広がっていたのです。

 市は「より慎重な聞き取り調査が必要」だったと対応の遅れを認めたものの内容に関する私たちの取材には、応えませんでした。

 アカシアハイツ以降、札幌市は、高齢者施設の陽性者は全て病院へ搬送し、すぐに現地対策本部を設置しています。その後、クラスターとなった施設では、死者が出ていません。

 応援に入った看護師「フロアのなかに歩ける人が1人発症したら…」DMATの医師「全員が濃厚接触者になっちゃいますよね」

アカシアの運営法人の別の施設です。応援に入った看護師とD-MATの医師の姿がありました。新型コロナの「対策マニュアル」を作り始めたのです。

看護師「全員出てきてここで食事なんですよ。」
医師「それを二つに分けるのは難しいんですね?」 看護師「難しいですね」

 重視するのは”初動の早さ”です。不調がある人が少し増えたと思ったら、検査結果を待たずに発熱者を隔離し、防護服を着用します。

 DMATの医師は「発熱者が出たタイミングで何か行政が対応することはない。発熱者が出てから一例目が確定するまでの間は病院や施設の対応にかかっている。」そう話します。

 クラスターの中、診察に当たった医師は、経験を一つでも多くの施設に知ってもらおうと活動しています。

「どこかで感染者が3人、違う階で1人出たという想定で考えてゾーニングしてみる。施設の平面図を使い、実際に感染者が出た時に、どうエリアを分けるか考えます。」

 参加した人は「発生場所によっては何十人にもうつることがわかった」「ゆとりのある職員配置にはなっていないので、想定しておくことの大切さがよくわかった」と心配を口にしました。

 医師は「自分事になっていないところがいっぱいあって、あそこで起きちゃった、ああ恐ろしいで終わっているところが多いと思う。」「本当に新型コロナウイルスの本番はこの冬だと思うので、今できる対策をしっかりすることだと思います。」

 茨戸アカシアハイツには、まだ8割しか職員が戻っていません。心に傷を抱えている人も多くいます。

 立ちはだかるのはウィルスだけでしょうか。

北海道テレビ制作 テレメンタリー2020 ”介護崩壊 ~救えなかったクラスター~”
テレビ朝日系列・日時違い全国放送 (後日 AbemaTVで配信)

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この記事を書いたのは

HTB 新型コロナウイルス取材班

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