感染拡大続く北海道 小野江医師の呼びかけ【新型コロナ:こんな時期だからこそ、インフルエンザ予防もしっかり!】

 先日、市内某企業さんのインフルエンザワクチン集団接種を担当しました。その日ワクチン接種を受けた患者さんは100人強、私は接種希望者の問診をして接種出来るかどうかを判断、接種後の注意点を説明する担当でした。

 その時の経験から思ったこと、連想されたことを書きます。

 まず、今年生まれて初めてワクチン接種を受けますという人や、前回いつワクチン接種を受けたか覚えていないくらい大昔という人が実に多かったです。5年以内にワクチン接種を受けた記憶があるかどうかで区切って質問してみたところ、半分以上の人は5年以内に受けた記憶がないとのことでした。一方で毎年受けている人は10人もいなかったと思います。医療機関にいるとインフルエンザワクチンは基本全員毎年接種ですから、自分の感覚がずれているなあと自覚させられました。

 ここの企業さんは去年まで会社での集団接種は行っていなかったとのことです。新型コロナ関連ではじめられたのですね。個人ではわざわざ医療機関まで出向いてワクチン接種を受けようとは思わなくても、会社で勧められ、まとめて手続きして職場で接種を受けられる状況だと、こうやって普段はうたなかったような人もワクチン接種を受けることになるのです。ふと子供時代、学校でみんなでワクチンを打たれたのを思い出しました(個人的には復活させたらいいと思っています)。

 今後はこういう形で個人の自主性に任せるだけではなく集団単位での接種を考えるところが増えてくるのではないかと思います。

 まず会社の立場で考えて、もし発熱して仕事を休む従業員がでたり職場内にインフルエンザが蔓延して休業者が増えたら、仕事が滞り困ることになるはずです。会社が多少の費用負担をしてでも集団接種をすることは会社にとって大きなプラスの意味があります(今までもそうだったということです)。

 個人レベルで考えても、まずワクチン接種を受けた自分自身はその効果で感染から守られます。それと同時にワクチン接種を受けた同僚も守られているわけですから、職場でお互いにうつしあうリスクがぐっと引き下げられることになります。もし持病などで接種を受けられない人がいたとしても、その人も間接的に守られることになります。

 ましてや今は新型コロナの患者数も増えてきています。もし風邪かインフルエンザか新型コロナか紛らわしい症状が出たならば、個人レベルでも職場レベルでも例年以上に厳密な対応をとらざるを得ず(具体的には自宅療養、重症なら医療機関受診)、場合によっては業務が回らなくなってしまうでしょう。だからといって甘い対応をして、もし万が一職場で新型コロナのクラスターが形成されたら・・・(インフルエンザならいいということではありません、もちろん普通の風邪もです)。

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 まだ新型コロナのワクチンは実用化されていませんが、インフルエンザワクチンを接種するだけでもインフルエンザにかかるリスクや重症化する危険性は間違いなく減ります。インフルエンザ発症による色々な症状がでるリスクが減れば、それ自体にももちろん意味がありますし、新型コロナの疑いがかからないことによる利益も莫大です。インフルエンザワクチン接種には個人レベルでも企業レベルでも利益があること、ご理解いただけると思います。

 まだワクチンの在庫がある医療機関はあると思います。もしまだの方は急ぎ問い合わせなさることをお勧めします。そして来年以降も。よろしくご検討下さいますよう>企業担当者各位

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この記事を書いたのは

小野江 和之

医師、医学博士。札幌南高校卒、北大医学部卒。1971年生まれ。 医療法人社団 緑稜会 みどりクリニック医師。 2004年愛知県の某大学病院へ赴任。医療を取り巻く情勢の変化や様々な体験から一念発起、2007年北大ロースクールへ進学。子連れ学生であったため、修習期間中の資金確保目的で2009年休学して外務省へ入省、中米ホンジュラスへ赴任。2011年帰国を果たすもロースクールを自主退学、2020年6月より現職場。道外からみた北海道、業界外からみた医療業界、海外からみた日本。視点の多様性がいかに重要であるかひしひしと感じます。弁護士さん方とともに、医療と法律にまたがる各種問題解決についても携わっています。

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