コロナ禍の学生生活。
学生の生活を支えるアルバイト、特に飲食店はコロナによって大きな打撃を受け、それまでの勤務からシフトが減って満足な収入が得られなくなり、生活に困窮する学生がいます。
また、現1,2年生は入学以来コロナ禍でキャンパスでの出会いがなく、道外からやってきた学生は友達も出来ずに孤独に過ごしていることも。
このような苦しい生活を送る学生に力になりたいと支援の輪が広がっています。
出世払いでパンを無償提供。ペンギンベーカリー
道内で9店舗を展開し、道産小麦の旨味や風味を最大限に生かした食パンが人気のペンギンベーカリーでは、生活が苦しくなった大学生や専門学校生を対象に、パンを「出世払い」として、事実上無償提供する取り組みを行ってきました。
去年の5月にも行っていたこちらの取り組み。2021年も6月10日から再度スタート。メールやSNSでの事前連絡をすることで、無償支援を受けることができます。
「アルバイトが出来ず、生活が困窮し大学や専門学校を退学して未来が絶たれる。そういったことがないように手助けできないかと思い、学生へのパンの無償提供をしています。」
そう話していただいたのはペンギンベーカリーの道本孝一常務。
食べることで明日を元気に過ごしてほしい、北海道を元気にしたい。そんな思いで始めたこの取り組み。
無償で提供されるパンは5つ。組み合わせは日によって変わります。
「バイトが減り、やりくりが大変でした。」
この支援を利用した学生は、食費を切り詰めるなどして交通費や学費をねん出していた中、友人からこの取り組みの話題を聞き、やってきたそう。
春から始めた就職活動。就職先がうまく決まった際には「パンを買うならペンギンベーカリーへ、ぜひ買いに来たい」と話していました。
パンの美味しさを通じて元気と明るさを届けるこの取り組み。既に利用者は4,000人を超えていました。
ペンギンベーカリー
https://www.penguinbakery.com/
学生を"孤立"から救う。学生による学生のための食事会
「友達を作る機会がゼロだった1,2年生も多かったはず。」
そう語るのは北海道大学医学部6年生の高桑雅弘さん。
高桑さんは今、孤立する学生の支援策として「学生による、学生のための食事会」を週に一度開催しています。
きっかけは顔なじみの飲食店、北大にほど近い「ハヤシ商店」店主との会話でした。
「道外から進学してきた当時1年生の学生が、何のつながりもなく札幌で暮らす中で心がやられてしまってうまく勉強が手につかなかった。そのまま単位を取り切れなかったかも。」
ということを店主の林成樹さんに相談する中で、
「孤立する学生をなくすには、誰もが一緒に食事をし、語らい、居心地よく過ごせる時間が必要だ」
と考えるに至りました。
林さんからの「同じように学生を支援したい飲食店と学生とのパイプ役になれるのでは」というアドバイスから、高桑さんは実際に食事会を開催するために行動を開始。
将来、食を大切にする医師を目指しているという高桑さん。
大学近くの飲食店に対し、食事会のための食材や料理の提供をお願いして回り、会場は大学近くの「UNTAPPED HOSTEL」の一部を無償で借りることができ、密にならないスペースを確保することもできました。
「今回大事だと思っているのは、学生自身が学生を支えること。」
そう語るのは会場を提供したUNTAPPED HOSTELの神 輝哉さん。
「何かしてもらったという思いをしたら自分も手を差し伸べよう、という連鎖が起こればいいなと。」
その思いから生まれた食事会の場。
様々な協力の元生まれたこの機会には北大の1,2年生5人が集まりました。
コロナ禍に入学したこの5人、対面授業の経験もほとんどありませんでした。
道外からの進学者も多い北大生。まずは出身地の方言で自己紹介を通じて緊張をほぐしながら距離を縮めます。
中には北海道の人とのかかわりがないまま過ごしてきたという参加者も。
そうしているうちに料理が完成。
地域の飲食店の協力で出来た料理を、みんなでいただきます。
「オンライン越しでのつながりだけだったので、こうやって人と面と向かって話せる機会を設けてくれて、すごいありがたいと思いました。」
参加者の一人は語りました。
この日で4回目となった食事会が無事終了。
高桑さんは手ごたえと次なる課題を感じたそう。
「本当に困っている人はこういった場所にも出てこられないかもしれない。それでも、いつでもなりうる孤立した状況を防ぐ予防線になることもできる。」
高桑さんはまた取り組みに向かって歩み始めています。
ハヤシ商店
https://hayashi-shoten-sapporo.shopinfo.jp/
UNTAPPED HOSTEL