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このコロナ禍でがんとうまく付き合っていこうというテーマで
斗南病院の精神科長 上村先生にお話を伺いました。
(7月8日(木)ピンクリボントーク その後の患者さんとのお話とともにフルバージョンはYouTubeをご覧ください。)
□コロナ感染症は『3つの側面』がある
まず冒頭で上村先生からコロナの感染症については感染症は【三つの側面がある】と切り出されました。
上村先生『今、コロナの病気そのものが第1の感染症。
二つ目は”不安”というのもひとつの感染症。
三つ目は差別、これもこのコロナの感染症の重要な側面だよっていう風に言われています。
不安からあの人と遠ざけよう、人と接しないようにしようなどの差別が生まれてしまったら、その差別から別な病気が生まれてしまう。
こういった負のスパイラルがこの感染症にはあるって言う風に言われています。
精神科医としてちょっと考えてみたところ、基本的には自己愛っていうか自分を守ろうとする、家族を守ろうとすることから起きちゃうんじゃないかなという風に思っています。』
コロナに関係なく、がん患者さんで普段からどんな悩みがあるのか、というアンケートの紹介もありました。
上村先生『患者さんって実は病気の体の問題というよりも不安などの心の問題を抱えてる人の割合が多いということが分かっています。病気の症状の問題が23%だったのに、不安などの問題を抱える人は34%がいることで気持ちの問題が一番がん患者さんが抱えている悩みといえます。』
みんな多かれ少なかれ、心の問題を抱えている、という事実を知るだけでも少しホッとするのではないかと思います。
□コロナ禍の”受診”控えはダメ!
上村先生『私の目から見ても、去年このコロナの状況が始まってから、がんがすごく進んでから受診してしまう人が増えています。
早期がんで発見されるっていう事がちょっと少なくなってきていてその理由は病院に行きにくくなってることだと思います。
検診して(再検査になったら)すぐ来ればよかったんだけどもう病院に来たらコロナがうつると思うので全然来れませんでした、と。半年くらい経ってから来るとすでに骨に転移があったり、肝臓に転移があるという患者さんが非常に増えていてやはりこれはよくないよ、と思います。』
コロナ禍で悩みが増えたと訴える例も増えています。
情報が入りにくくなることがその一つ。今回も打ち合わせから本番まですべてリモートで
先生にはお会いできていません。これまでであれば実際にお会いできているかもしれません。私自身もそうでしたが、がんと診断された瞬間からインターネットで情報をとろうという気持ちになります。それがコロナ禍でさらに増えていると感じます。
これまでであれば、リアルでお会いできる患者さんのサロンとか、がん相談支援センターで人に聞くことができる、(今でもできるのですが)それがしずらい状況があるのかもしれません。
上村先生『ところがですね、健康な時からインターネットを使って調べている人とがんと診断されて急にインターネットを使うようになった人は大きく違います。
患者さんの例なのですが、”先生、インターネットで四足の肉は良くないと聞いたのでもう肉を食べのはやめます”とか、ブログを読んでしまって、同じ症状の人を探すことに1日以上費やしちゃうとか。肺がんのステージ4は平均余命一年未満というふうに聞いて私はもう1年しか生きられないんでしょうかって言ってパニックになる患者さんが増えてきています。
インターネットの検索ツールは、信用できるモノが上に上がってくるっていうシステムになっていない。広告の免疫療法とか民間療法の話が出てきてしまったりする。
最も信頼のおけるサイトはこちらにあるがん情報サービスという国立がん研究センターが作っています。正確でニュートラル、つまり中立性の高い情報になっています。検索などするときに正しい情報がどうか、少し注意をして頂きたいなという風に思っています。』
□緩和ケアは終末期のものだけではない
上村先生『私は緩和ケアを専門にしているんですが今、緩和ケアというのは診断された時から誰でも受けられるサービスです。がんを扱ってる病院だとどこでも緩和ケアに対応できるようになってきています。』
※上村先生が取り汲まれている『緩和ケア』チャンネル
https://www.youtube.com/user/kanwacare
(がん研有明病院の清水先生解説なども)
上村先生『この10年間だいぶ変わってきたとはいえども、抗がん剤が使えなくなってから半年くらいになってから始まるのが緩和ケアだよねっていう風に思ってる人がまだまだたくさんいます。これはターミナルケアということで緩和ケアというのとは全く違う言葉なんですね。
今は診断の時から緩和ケアってのは始まります。やはり、診断時にすごい衝撃を受けますから、がんと言われると。そこのサポートをするのが緩和ケア、これはイコール心のケアと思っています。その後は抗がん剤の副作用とかがあるので、体の治療がメインになりますが次第に緩和ケアが果たす役割が大きくなりまして、グリーフケアという風に書いています。
がん患者さんの本人が亡くなった後にご遺族を支えるグリーフケアもあります。これも大事な緩和ケアの一部だという風に思っています。』
※斗南病院では、ご遺族のための外来もあります。
□セルフモニタリングが大事
上村先生『セルフモニタリングというのは自分の症状を自分で把握すること。日記につけるとか自分の症状の観察記録をつけるなどした人たちとそれを全くしなかった人達で両方、同じ治療を受けていたら自分の症状をきちんと記録していた人たちの方が5ヶ月長く生きていたよという研究結果があります。
自分の症状をつけるって事だけが5ヶ月の長生きにつながったよって言う、衝撃的な研究でした。
自分の今置かれた状況、例えば自分の体力とか自分の生活の質、これをよく知っている人が長生きするということが言えると思うんです。もうどうにもこうにも動けないのでのに無理に何かをするというよりはこういうタイミングでこういう治療を受けるのがベストだよ、と必ずがんを治療する先生は適切なアドバイスしてくれますね。
主治医ときちっと相談して、適切に緩和ケアの先生も相談できるって言うことがすごく長生きにも繋がったんだよっていうようなことが言えてるかと思います。』
自分で自分を知って、俯瞰で見て、治療などを冷静に専門家の意見を聞いて決める心の余裕。なかなかすぐには難しいかもしれませんが、大切なことだと思います。
上村先生の貴重なお話はまだ続きます。
【上村恵一先生】
斗南病院 精神科長
精神科専門医・指導医、一般病院連携精神科専門医・指導医
臨床精神薬理学専門医・指導医、
日本サイコオンコロジー学会 登録精神腫瘍医
(文:阿久津友紀 乳がん患者)
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