「短歌」と出会ったときのこと 歌人・北山あさひ
2021.07.22
#北海道はじめまして。北山あさひです。
私は短歌をやっています。
短歌は57577の「定型詩」です。57577という音数以外にルールはありません。
短歌は1首、2首と数えます。「百人一首」の「一首」ですね。
これに対して、575、“季語”を用いるというのが俳句です。
俳句は1句、2句と数えます。
「短歌」と出会ったときのこと
私が短歌にはじめて接したのは、高校生のとき。
国語の授業で短歌を読みました。
驚いたのは小野小町のこんな一首でした。
うたた寝に恋しき人を見てしより夢てふものは頼みそめてき
詳しく解説しなくてもだいたいの意味はわかると思います。
「うたた寝をしていると、好きなあの人が夢に出てきてくれた。素敵な夢だったなあ。あれ以来、夢というものを頼みにするようになってしまいました。せめて夢の中でも、また会えたらいいなあ」という感じです。
きっとみなさんにもこういう経験があるのではないでしょうか?
当時、同級生に片思いしていた16歳の私も胸がキュン❤となりました。
しかし、キュン❤となったあと、じわじわと怖いような気持ちがわいてきたのです。
私、平安時代の人に共感してる……!?
千年も昔の、十二単を着て麿眉毛をした平安貴族の言葉が、セーラー服を着て「桃の天然水」を飲んでいる平成の高校生に届くということに、私はとてつもない衝撃を受けたのでした。
映画や小説の中にしかないと思っていた平安時代と現在がつながり、ごうごうと血が巡り出した感じ。
千年という時を超えて人の心を揺さぶることができる「短歌」って、実はすごいものなんじゃないか。
その日のお昼休み。私は図書室に直行し、先生が話題にしていた『サラダ記念日』を手に取りました。「私のほうが面白いものを書ける」と、謎の自信がありました。
その後、私は北海道新聞の短歌欄に短歌を投稿しはじめ、途中、歌と離れたりしながらも、昨年『崖にて』という短歌の作品集を出し、その本で「現代歌人協会賞」という賞をいただきました。これは33年前に『サラダ記念日』も取った賞です。
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 俵万智
三十年以上の時を経て、「サラダ記念日」の歌は人の心に残り続けています。
はたして、私の歌は三十年後、百年後、千年後まで耐えられるような強度があるか――。
そんなことを考えながら、日々、歌を詠んでいます。
北にすむ人よ南にすむ人よ空を見上げるだけで手紙だ 北山あさひ
歌集『崖にて』(現代短歌社)
http://gendaitanka.jp/book/kashu/063/