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みなさん、入浴着ってご存じですか?手術の痕を気にせずに入浴できる専用のものです。(厚生労働省も理解を求めています)タオルで隠した方が目立たなくはありますが、体を洗ったりするときやお風呂に入る前後にどうしてもタオルは外さねばならないのでなかなかに難しい。
子どもや周りに手術の痕を見せたくない 入浴着ができること
その面倒さと気遣いが相まって『温泉に行きたいけどいけない』『子どもや周りに手術痕を見せたくない』などの声はよく届きます。それを解決したいと立ち上がった女性たちがいます。
まったく新しいアプローチで作られた『入浴着』をご紹介したいと思います。
開発したのは畿央大学健康科学部人間環境デザイン学科のみなさん。村田浩子教授と助手の小松智菜美さんにお話を伺いました。
村田先生『2016年に入浴着のテーマで開発を始めました。
主に2人の学生が関わりました。ひとりは身内が乳がん経験者で温泉にいけないという悩みがあったのです。本当に研究にぴったりのテーマでした。まだ入浴着について、よくわからずに、こういうのがあるんだと思って・・・。』
2016年に行った乳がん術後女性への予備調査では、回答者の約半数の人が「温泉に行きたくてもいけない経験をした」と答え、市販されている入浴着についても半数の人が「知らない」と答えていました。入浴施設でも入浴着が認知されておらず、奈良県内の施設ではほとんど知られていませんでした。
村田先生『卒業研究として、3月にひとつのものを作って、着用いただくところまでいったのですが、その後、研究は一旦とん挫しました。』
患者さんの手に届くまでやりたい・・・。
研究は2019年度に再スタート。入浴着の開発に熱意を持つ2人の学生(現在は卒業)が現れました。福祉などにも興味を持つ学生さんでした。
2020年に実施したアンケート調査(※奈良県福祉医療部疾病対策課、文化・教育・くらし創造部消費・生活安全課の協力を得て、奈良県内の乳がん術後女性および入浴施設へ調査)でも、入浴着の認知度は術後女性・施設とも低く、「知らない」「あまり知らない」と回答した女性が57%、施設で88%にも及んでいました。認知度も低く、使えるところでも運用が徹底されていないことも明らかに。
さらに当事者に必要とされる入浴着のタイプや入浴着に必要な機能・素材等の課題も浮かび上がってきました。
実際に村田先生は近隣府県で入浴着を扱っている入浴施設を回られたそうです。
村田先生『レンタルを申し込んだらボロボロだったんです。これを貸してもらっても、、でした。もうレンタルじゃなくて使い切りで検討してみてはどうか、と一気に舵を切りました。』
これまでいくつも市販されている入浴着のほとんどはポリエステル素材が多く、水切れがよくなかったり、軽くて浮いてくるなどの課題がありました。私自身も実感しています。『着脱が簡単』『お湯の中でも生地が浮かず』『ぬれても不快感のない素材』を探す日々。
撥水性のある布地を探していて、生地問屋を回って探したそうです。
そこで見つけたのが今回の生地にもなった、不織布。なんと元は防災用のもの。業者の方は最初はピンと来られてなかったとか。
試作や着用テストを繰り返して行い、着脱がしやすく、お湯切れの良いデザインにたどりついたそうです。
愛がなければ、熱意がなければできない作業です。
村田先生『速乾性と吸水性は相反するものなので、今回の生地が見つかってよかったです。
サンドイッチのような生地の構造になっていて、ゴムが伸縮性を出しているのです。』
デザインの特長は、肌に近い色の生地を使用することで着用していることが目立たず、胸の上部の切り替え部分にギャザーを入れることにより、左右の胸のバランスをカバー。
生地の外側にはっ水性、内側に吸水性の性能を持つ素材を使用。湯につかっても浮き上がらず、湯船から出た時にも湯切れを良くしました。
生地の内層部に伸縮性のあるポリウレタンを使用し、背中をV字型に大きく開けるデザインにすることで身体を洗い易くしました。
結果、首、裾部分のどちらからでも、着用時の動作や脱着がしやすくなりました。
実際に私も使用させていただきましたが、これまでのものとはまったく違うアプローチ、こんなの待ってました、、というものでした。
脱ぎ着の兼ね合いから片方だけ肩がある入浴着が多いのですが、私は両側。着ると上から見えちゃうのです。
このデザインは左右どちらでも、両側でも安心感あるデザインでギャザーが入ってふくらみがあるので助かります。
ピンクだけでなく、肌なじみのよいベージュやボーダー、グレーを含めた全4色。パッケージもかわいらしく仕上がっています。
そもそも着目したのは乳がん治癒後の健康改善、QOL向上を支援すること。日常の楽しみの一つである温泉への入浴に着目してくださったことがうれしい限り。
一方で『使っていると目立つ』という声へも配慮されています。なんと入浴着が、公衆浴場、旅館・ホテルの浴場、サウナなどで活用できるよう奈良県では、今年の3月、県内すべての施設に「入浴着を着用した入浴に理解を求める」ポスターを制作・配布し、県民への周知と理解を求めているとのこと。
学生さんと先生の熱意がすべてを動かしているんですね。各地に広がるとうれしいです。
入浴着は乳がんの患者さんに限ったものではありません。心臓病などで手術痕がある方などにも使用できると思います。乳がん患者さんの目線でこうなったらいいな、という社会課題が解決すると広くみなさんの課題を解決することも多いなあと感じます。
バスタイムトップス 価格は500円程度で販売される予定です。これまでの入浴着は5000円程度のものも多く、年に一回、2回のために買うのはちょっと、、と思っていた方にも手に届きやすい価格です。
(販売はまずは奈良県内からということですが、ご興味のある方は GSIクレオス 0120-506036(お客様相談室)までお問合せください。)
今月9月はがん征圧月間
みなさん、今月はがん征圧月間、とご存じですか?
札幌市のがん検診の受診の大切さを伝える啓発動画でお話させていただきました。
そして、1年以上連載をさせていただいているフリーペーパー『まま・ここっと』さんでも2021秋 最新号が出ました。
今回、お話を伺ったのは、サキさん。30歳でシングルマザーでお子さんを育てながら病と向き合っておられました。この春、めでたくご結婚。お子さんに言われた『ママ、おっぱいなくても好きになってくれるかもしれないじゃん。今、探しにいこう』というストーリーは是非読んでいただきたいです。(後日サイトにアップされたらお知らせ https://in-cross.com/ )
見開きで検診についてもわかりやすく書かれていますのでこちらも是非。乳がんは9人にひとり、がんだけでいうと2人にひとり、の時代。コロナ渦で検診を控えたり、再検査を先延ばししている方もおられます。自分のいのちは自分で救うしかありません。勇気を出してその検診への一歩を。
がんとともに、、、。
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