HTB(北海道テレビ)は10月17日(日)深夜0時25分から、
「夢のあとに –東京五輪は何を残したか-」を放送します。(北海道ローカル)
番組のディレクターを担当した、網走市立二見ケ岡小学校-第五中学校-池田高校出身の太田です。
私は、2010年のバンクーバー五輪にスピードスケート日本代表として出場しました。
2014年、現役引退後にHTBに就職し現在スポーツ部で番組制作やスポーツ中継を担当しています。
去年3月、東京五輪の延期が決まりました。
どうしても選手目線で考えてしまう私にとって、
そのニュースは世間で言われている以上に深刻に聞こえました。
アスリートの生活は過酷です。毎日毎日、同じようなトレーニングの繰り返し。
妥協しそうになったら「ライバルはもっと練習しているかもしれない」と自分に喝を入れ、
食事も節制して好きなお菓子は我慢。
友人に誘われても、シーズンオフでない限りなかなか飲みにもいけません。
アマチュアスポーツの場合、努力の全ては
「オリンピックに出場するため」
「オリンピックでメダルをとるため」
そう考えている選手が多いと思います。
それが1年延期って・・
「緊張感は保てるのか」
「今持っている良い感覚が失われてしまうんじゃないか」
「若手が台頭して来たら抜かされてしまうんじゃないか」
老婆心ながら、選手たちのことが心配になりました。
新型コロナウイルスの勢いは止まりません。
当時の組織委員会会長の女性蔑視発言なども影響し、
5月には84%の国民が開催に「反対」と答えました。(4283人が回答・HTB調べ)
コロナ禍で対面の取材はできませんでしたが、リモートで選手たちに話を聞くと
様々な思いを打ち明けてくれました。
やり投の小南拓人選手は、
開催反対の声の中「東京五輪を目指すことは正しいのか」葛藤していました。
自国で開催される五輪での引退を表明していたマウンテンバイク競技の山本幸平選手は
「心に穴が空いた」と言いながらも「僕たち家族にしかできない今を全力で生きてやる」と
ポジティブな言葉を返してくれました。
やっていいのか? やめた方がいいのか? 誰も答えがわからないまま開幕した東京五輪でしたが、
国民の関心は予想以上に高く、開会式の視聴率は33.1%を記録。
(北海道地区・個人全体・NHK総合 ビデオリサーチ調べ)
多くの感動が生まれた大会となりました。
今月、番組で改めてアンケートを行うと
68%の人が「東京五輪をやってよかった」と答えています。(2189人が回答・HTB調べ)
東京五輪閉幕後の8月20日には
新型コロナウイルスの新規陽性者数が過去最多の2万5851人に達しました。
因果関係はわかりませんが、東京五輪開催の影響が無かったとは言い切れません。
それでも私は、五輪後にインタビューした子どもたちのキラキラした顔が忘れられません。
「(開)心那ちゃんをこえるくらい上手くなりたい」
「金井選手みたいに立派な選手になって五輪で活躍したい」
12歳にしてスケートボードでメダルを獲得した開心那選手への憧れ。
歯科医師になるため、最初で最後のオリンピックと決めて110メートルハードルに臨んだ
金井大旺選手の姿を目指そうという情熱。
東京五輪が中止になっていたら、その「夢」も生まれることはありませんでした。
この番組を観て、もう一度「東京五輪」を考えるきっかけになっていただければと思います。