二刀流生みの親・栗山監督が語る大谷翔平

ーー2021年のシーズン途中ではありますが、大谷翔平選手のここまでの成績についてはどうでしょうか?

試合数をこなせればこのぐらいの感じなんだろうな、という感じはします。

技術的にもボールの捕まえ方とか、球数を減らしてイニングを進めるとか、こっちがすごい課題に挙げてたものがクリアされているものもあるので、そういう意味では自分の思った通りに身体が使え始めた。本人が一番うれしいんじゃないかなと。

数字は確かに素晴らしいですが、自分が一番天井高く見ていたので、これがすごいとも思わないし、試合数こなしたらこんな感じなんだろうな、ここからだな、という。
ここからどっちへ行くかな、と見てます。

ーーどの辺が栗山監督の考える天井か?

みんなが「この人よりすごい」と言ってる間は、違う。大谷翔平の持つ数字というものがあるはず。

大谷翔平だったらこのくらい普通だよねという数字が出てくるはずだと思う。

今はまだ評価が「ベーブルースに比べると」「過去のバッターに比べると」という比較でしかないので、そういう風に見てると、どうしても先入観で「このくらい」と決まってきてしまうし、翔平もそういう認識になってしまうのが怖い。なるべくそうならないようにとは思っています。

ーー2013年にファイターズに入ってきて、5年間でしたが何を見たからそう思えますか?

僕は申し訳ないですけど、高校野球の時代から彼のピッチングもバッティングも見てきたし、そういう中で「これぐらいやれるんじゃないか」、人に「お前の野球観間違ってる」というのは構わなくて、僕が実際に見たものなので、体が感じたものなので、それを信じるというのは、申し訳ないですけど僕の中では信じたい。

僕の身体が感じてたものなので、それを見させてもらってきたという経緯があるので、5年で出したというのも、本当に世界一の選手になれると僕もGMも思ってたし、今すごいなっていう感じじゃなくて、ここからどれくらいの数字を残すのかっていうのがすごい楽しみ。
やっとスタートしたというか。

ーー「メジャーで40本ホームラン打つ」というが天井の人もいる中で大谷翔平選手は違う。その特別感はどこで感じているのか?

なんで二刀流ができるかってもともとの発想として、50%、60%の力で、普通の人よりも数字が上がらないと二刀流ってできないはず。

そういう目安で持っていのるで、こっち側(投手か野手片方)によれば人の倍くらいの感じって行けるんじゃないのっていう勝手な感覚ですか。

偉そうかもしれないですけど、そういう感覚がなければ本気になって二刀流なんて向かう感じにはならないわけで、そこは僕は信じてたし、だから、「練習しない」とみんなに言われるけど、2つの目一杯の運動量なんて身体壊れちゃうんで。

それを抑え込んで「これくらいの状態でどれくらいの数字ができるんだ」っていうのを考えてたつもり。それが日本でああいう証明をしたわけで、明らかに投げるのも打つのも人よりも突出してたはずだと僕は思ってるし、何度ベンチでこっちが驚かされるようなものがいっぱいあった。

そういう風な“持っているもの”が、あの環境にさえ慣れれば、その環境に入って、その環境といつも同じような、ホームラン30本、少年野球でも30本なんだけど高校野球でも30本で、プロ野球でも30本で、という人いるじゃないですか。その環境に合わせられるという。その適応能力は間違いなくあると思っていたので。ちょっと偉そうですけど、僕はそういう風に思って前に進めたつもりだった。

これは本当僕だけの勝手な意見です。本当は人に伝えたくもないし、語りたくもないし、自分が思ったことが本当にどうだったんだろうかっていう。

で、自分がいつも思っているのは翔平に注目されますけど、もっとたくさんいたはずなんです、二刀流出来る人が。今でもいるはずだし、これからも出てくるはずだし。

それが消えてただけだと僕は思ってるので、新しい可能性を翔平が見せてくれてるなと思います。

ーーずっと高校時代から見てきて、自分のチームに入ってきたときにビックリしたことは?

まあまあまあ。まあ思った通りで色んな部分でビックリしましたけど一番核心、一番わかりやすい例で言えば、いつも遠征先にリュックサック背負って10時になったらホテルのロビーにいて、トレーニング会場に向かってる。

で、彼がいつも言っていたのは「今の体の筋力では動きたい動きが出来ないんです」と。「今疲れてもいいんです、いまじゃないんだ、僕が目指すところは今じゃないのでぼくはやります」といつも言っていて、いつも10時になるとそこに向かっていたっていう姿が一番わかりやすいかもしれないですね。

そこまで考えてトレーニングをやってたはずだし、「今の僕だとこれしかできない」っていうのもわかっていたし、僕らが信じるだけではなくて、本人も出来ると本当に思っていた、ということが大きかったかなと思います。

ーー道がない状態で2つやっていくという、監督として、管理する側で一番難しかったことは?

僕ら監督の仕事って結果が出れば喜んでもらえるし、結果が出なければすべてはダメなんで。

自分に能力がないとか自分がダメな感じっていうのはもちろん自分ではわかっているので、怒られたりとか色々あって。それはもう全然いいんですけど、僕がもしそこに間違いを犯すとこの大切な宝物の素材を、野球界の大切なものを壊してしまう可能性があるというのは本当に怖かったし、二度とそれは、彼と一緒に野球やりたくないし。

本当にあの時のプレッシャーというか責任の重さというのは二度と経験したくない、そんな感じです。

だから、出来たとも出来てないとも思わないですけど、最低限壊れないままアメリカの勝負にいってくれたという点に関して、感謝するしかないですけど、ふとそういった時のことを思い出すと「怖かったな~」というのが正直なことなので。

怖いだけにそれは考えましたし、色んな人に相談したし、丁寧にも行ったし、でも丁寧すぎたらあの短期間では前に進まないので、そういう意味では、ただただ怖かったっていうだけですけど。

ーー最初にメニューを組む時、どうやって組んでいったのか?

コンディショニングの専門家など色んな人たちと、身体のことで僕が無理言うので、「監督それは無理だ、でもこういうやり方ならできるかもしれない」と、選択肢をみんなが考えてくれた。

ただ、最後はこっちが決めていかなければいかないところがあるので、翔平としっかり話し込む、でも本人は「大丈夫」「行きます」しか言わないので、その「行きます」の言葉の中にちょっと不安があるのかとか、そういうのを全部嗅ぎ取りながら。雰囲気だったり返事の仕方だったりというのを見ながら判断していくしかないし、もちろん本人と相談もしたし、何が難しくて何が大変なのかっていうのはありますけど、それは本当に一つ一つ確認して探し続けて道を一本一本歩むしかないので。

ーー今でもやり取りはありますか?

いいときは一切、何も言わないので、今年も一回も連絡してないですけど、悪いときには連絡しますし、1年に1回会いますし。

ーーシーズンオフに食事に行ったりとかそういう機会は?

そこでじっくり話はします。(大谷選手は)一人でしゃべってますよ。一人でっておかしいな(笑)。一人でというか普通にしゃべってますよ。すごい大人になりました。

ーーイメージ的には監督がわーっと喋ってるのかなと。

いえいえ全然(笑)。

ーー5年前にも同じように大谷翔平選手のことについてインタビューさせていただいた際、「投げるのはとにかく下手ですけどね」って言っていたの、覚えていらっしゃいますか?上手くなりましたか?

腕の使い方なんか見てもらうと、あれだけコンパクトに使って変な動きが行かないようにとか。そういう意味ではすごく前には進んだとは思いますけど、まだまだ、まだもっと良くなると思いますんで。

ーーバッターに関しては「今行っても三本の指だ」と言ってました。5年たって本当にそうだったと思うのですが、監督はどうですか?5年もかかった、なのか?

あれだけ能力あるバッターが、打ち方、完全に動作が。去年会った時に自分の打ち方研究してたし、すぐアメリカ帰って研究して、そこまでして自分がもっといいものに向かって、あれだけのバッターが大きく自分の形を変えるすごさっていうのをみんな気が付かなきゃいけないし、もっと自分が行けるんじゃないかな、というのを形にしようとする、そこがやっぱすげえなと。

こんな期間に思いっきり変えたなっていうのはありますけど、やっぱり変える怖さは選手にはあるので。ダメになっちゃうかもしれないという。

自分の感覚と色んなものを探しながら見つけたな。5年もかかったというか5年間やりたい練習が、色んな所が悪くて出来なかった。やっぱりそれが出来て、自分の良さを出そうと思うとああいう風になるなと。短期間でスパーンと。大谷翔平の道には赤い絨毯が敷かれているっていう。

いつも選手見ていて、人が歩いているのは誰でもわかるんだけれども、その下にその人の道が、絨毯が敷かれているかがいつも一番問題だと思って見ているんですけど、その見極めがすごい難しくて、彼は自分の道をしっかり歩けるなと。それは感じますけど。

ーー自分でもそれ、見えてそうですもんね。

身体が感じるんでしょうね。「あ、これ違う」っていう感覚っていうんですかね。

ーー我々は見てて、すごい!すごいな!と本当に楽しいんですけどそういう楽しみ方が出来ないっていうのは、監督はちょっと損だなと思いますが…

僕はいいです(笑)。それは今でも翔平にもよく言いますけど、「いつまでも文句言うからな」と。よくなればよくなる程、みんなが賞賛してしまいすぎるから。人間って、僕らもそうですけど、ダメなところあるじゃないですか。誰かがダメなものはダメなんだ、っていう人がいないと。
一生嫌われていくっていう。僕の場合は。でもまあ、そういう出会いですね。

ーーダメなところ見えないですけど。

いやー、ダメなところ、ありますねぇ。

今は見えてこないですけど、これが本当に世界中から賞賛されて、本当はもっとすごい道を歩めるはずなのに、スピード落ちたりする可能性が。「こんな感じかなー」とかそういう風にならないようにと、そう思っています。

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この記事を書いたのは

SODANE編集部

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