だんだんと冬が深まり、本格的なスキーシーズンが近づいてきた旭川。
2018年に「旭川、スキー都市宣言」を発表し、世界屈伸のスノーリゾートとして名を馳せる旭川は、東西南北に豊富で上質なパウダースノーが楽しめる山々が並び、その日のコンディションに合わせてバラエティー豊かなスポットでスキー・スノーボードが楽しめることから年々評価を高めています。
さらに旭川はスキー場やバックカントリースポットの山々に旭川の街中からアクセスできることがポイント。世界のウィンターリゾートは山の中に一大リゾートが形作られるのが一般的ですが、旭川は"街中"から各スポットに1時間ほどでアクセスできるため、街中で宿泊しながら地元の人の通う飲食店で街の空気を感じて夜を過ごし、また朝からスキー・スノーボードを楽しむことができます。
その旭川を含む富良野やカムイ、トマムなどが点在する北海道の中央に南北約200kmに広がるパウダースノーエリア「北海道パウダーベルト」を熱く語るトークセッションが旭川の中心地に位置するOMO7旭川 by 星野リゾートで開催されました。
トークセッションに登壇したのは、スキーを背負って世界を股にかけ「地球を滑る旅」を毎年重ねてきたプロスキーヤー児玉毅さんとカメラマン佐藤圭さん、そして北海道パウダーベルトに位置する星野リゾート トマムを運営する星野リゾート代表の星野佳路さんの3名。
これを見守るオーディエンスも地元のスノーシーンに深く関わる方や、中には世界的に有名なスキーヤー、地元のレジェンドスキーヤーまで。雪好きな皆さんの熱い視線が注がれる中、セッションは始まりました。
旅の中で見つけた最高のスノーリゾート「北海道」の魅力
まず登壇したのは今回のトークセッションをテーマとなった写真集「RIDE THE EARTH 08 HOKKAIDO POWDER BELT」を刊行した児玉さんと佐藤さん。
これまでレバノン、モロッコ、アイスランド、カシミール、ロシア、ギリシャ、中国を旅しながら佐藤さんが撮影した写真とエッセイからなる「RIDE THE EARTH」シリーズの制作を通じて感じた、世界のスノーシーンを児玉さんが臨場感たっぷりにプレゼンテーション。
各国を回りながら実際に滑った雄大な斜面、その際に訪れた街の様子や日本とのスキー文化の違いについてやその国のスノーシーンがどのような発展をしているか等から児玉さん達の旅にひきこまれていきます。
話題はコロナ禍の2019-20シーズンへ。
児玉さん、佐藤さんとしても「今年もどこかへ旅するんだろう」と思っていた矢先のコロナウィルス感染症の拡大。国内にいることを余儀なくされる中で児玉さんは、シーズンオフを北海道で過ごすことで、改めてこの土地のポテンシャルに気づいたと語ります。
そしてシーズンイン後も、これまで体験し得なかった多くのスキーヤー・スノーボーダーとの北海道の雪山でのセッションを通じ、「いつか形にしたかった」という大雪山、十勝岳を中心としたパウダーベルトを「RIDE THE EARTH」の8巻目として撮影開始。
佐藤さんの住む中富良野から1時間程でアクセスできるお気に入りのポイントを中心に、地元故に知るスポットを最高のタイミングで撮影した様子も語られました。
子どもたちへ北海道のポテンシャルを感じてもらう
そして話題はこれからを担う子供たち世代に、北海道のポテンシャルを感じてもらおうと取り組んでいる「雪育」の活動へ。
まずは実際に児玉さんが雪育の現場で使っているという資料から「世界の中でも有名なスノーリゾートがある都市の年間積雪量」を当てるクイズに皆で挑戦。
数ある著名なスノーリゾートに比べ、いかに日本の、北海道の積雪が恵まれていることに聴衆も驚き!
さらになぜ日本がこれまで雪に恵まれた土地なのかを「雪が降る条件」「日本の地理的特徴」から説明。
そして児玉さんは「ここまで恵まれた環境を楽しむためには、雪を好きになることが条件。」と提起します。
世界的に恵まれた環境も、雪を好きにならなくては大変な土地。子供たちがこの環境を世界に誇ってもらうためにも、スキーやスノーボードを通じて雪のすばらしさを感じてもらう活動を続けています。
日本のスノーリゾートの課題と未来
そしてここで二人のセッションを見守っていた星野佳路代表が登壇。
まずは児玉さん・佐藤さんと、自身もスキーヤーとして北海道の雪山を攻め滑る、星野代表のスキーセッションのトーク。
トマムリゾートや旭岳を滑りながら感じた各々の滑りの特徴や、今回オーディエンスで参加している、その際一緒に滑ったスキーヤーの方々との思い出話が弾みます。
そういった中、話題はさらに星野代表の語る「日本のスノーリゾートの課題と未来」へ。
実際に星野リゾート トマムを運営しながら感じた「スノーシーズン以外の8か月をどう運営するか=いかに春~秋に集客するか」という課題。これについてトマムは雲海テラスなどで夏の集客に成功したため、索道を夏季も止めることなく、従業員も正社員として雇用することができたとのこと。
しかしながら、そういった施策は各地ごとに状況が異なるため成功パターンがつかめないとも。
さらに、日本のスノーリゾートが圧倒的に海外に負けているのは「食」だとトークはヒートアップ。
海外のスキー場のレストランで提供されている「山の中にこんなにクオリティの高いレストランがあるのか」というレベルのサービスが生むのは単なる食事の満足度だけでなく"「滑らない時間」の質を上げること"につながると語ります。
日本はスキー・スノーボード経験者数では海外に引けを取らない一方で"続ける人"の少なさによってスキー人口が少ないという実態があるそう。その理由の一つに「滑るだけではないスノートリップの魅力」が見出せていないことが挙げられる、とさらにセッションは盛り上がります。
山で滑る時間以外の食事やお酒、家族で楽しめるアクティビティなどの過ごし方がカギとなり、旭川はその魅力が街中にあることがポテンシャルであると星野代表は指摘。
児玉さん、佐藤さんも「RIDE THE EARTH」を通じて伝える「旅をしながらスキーをする」こととリンクするように、滑るだけではない魅力をどう取り入れるかがポイントになる、日本でもぜひ感じてほしいと続けました。
さらに、日本の観光についての課題にもアプローチ。
これまで日本の観光地は、「流行って廃れる」を繰り返してきた歴史があると星野代表は語気を強めました。
軽井沢、箱根、湯布院といった人気が出た観光地は「ルールが整備されていない」ために、ブランドが保たれずに廃れていったという経緯をリアルな視点から解説。
北海道パウダーベルトにおいっても”人気が出る前にルール化する”ことが必要になってくる、そうしないと「オーバーツーリズム(過剰な観光客の流入で発生する諸問題でその土地の観光が楽しめなくなること)」に必ずつながると指摘。
実際に、児玉さんの目にも既にバックカントリーエリアでの駐車スペースにまつわる問題やルールが整備されていないことによる地元の方との問題などがあると指摘、共感を呼んでいました。
さらに、質疑応答を通じて北海道の他のスノーリゾートの今後や、各自治体などの動きへの期待などにも活発な議論が行われ、時間一杯、密度の高い「雪の話」が語られた2時間となりました。
これからの「北海道パウダーベルト」に寄せられる期待
「RIDE THE EARTH」を通じて盛り上がったトークセッション。
その盛り上がりの根底にあるのは、やはりこの土地をの「雪」を通じて生まれた登壇したお三方、参加者のみなさんの強い思い、そしてつながりだったと感じます。
この土地を持続可能な形でよりよく発展させていくために、それぞれが当事者となって楽しみ、そしてルールづくりに参加していくことが何より大切なことだと強く思われた時間でした。
まだ今年はゆっくりとした冬の到来ですが、今年も必ず感動を生む雪が降るはず。
2021-22シーズン、冬の旅程に、こんな熱い雪への思いが積もる「北海道パウダーベルト」を組み込んでみてはいかがでしょうか。
HOKKAIDO POWDER BELT
https://www.snowtomamu.jp/special/powderbelt/