「インフラとしてのサウナ」
「心と体がととのう」サウナ。
日本サウナ学会代表理事・加藤容祟ドクターが「日本サウナ大学」を開講の準備を進めています。目指すはサウナ人材の育成と地域色あふれた魅惑のサウナを日本各地につくること。
2月開講!「日本サウナ大学」とは?
さて、『日本サウナ大学』はサウナの基礎知識が学べるオンラインスクールです。開講は22年2月予定で定員は50名。現在一期生の2次募集を行っています。
(発起人の3人のサウナーのみなさん。左:北海道ホテル林克彦社長、中央:加藤ドクター、右:エリア・イノベーション・アライアンス木下斉代表理事)
サウナをつくり、運営する上で不可欠な医学的な知識、経営ノウハウ、必ずぶつかる法律の壁への対処法などを、各分野の専門家が体系的に学べるカリキュラム。
☆『日本サウナ大学』HPはこちらっ!
学長は「予防医学としてのサウナ」の第一人者で、日本サウナ学会代表理事の加藤容祟ドクターというわけです。
加藤容祟(かとうやすたか)ドクター
慶応義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット 特任助教 北斗病院腫瘍医学研究所 医師 専門は膵臓癌。(『CancerX』HPから抜粋)
(©One Green)
5万部突破!『医者が教えるサウナの教科書』
20年3月に出版した『医者が教えるサウナの教科書 ~ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか?~』(ダイヤモンド社)は5万部7版の大ヒットを記録。サウナ前とサウナ後の脳波を調べることでサウナのコンディショニング効果を世界で初めて科学的に実証した内容が20代男性を中心に刺さり、ロングセラーを続けています。
日本サウナ大学・加藤学長のサウナトーク!
『日本サウナ大学』とは?今なぜ「サウナ大学」なのか?この度日本サウナ大学学長に就任した加藤容祟ドクターに詳しく伺いました。(インタビュー&文責:パンダ・リー。聞き手:十勝サウナ協議会後藤陽介会長、十勝地サイダー研究会副会長ザクおじ)
―日本サウナ大学はどんな「大学」ですか?
「『日本サウナ大学』はまさに(サウナを)サウナが好きで自分のこだわりのサウナを作り、みんなに入ってもらいたい、サウナを活かして何か面白いことをしたい、サウナについてもっと深く知りたい、というサウナ愛溢れる人の”愛”をキチンと形にするために必要な基礎的な知識を系統的に学べる日本初のサウナ学習プラットフォームです。」
―自由にサウナを作りたい人の場?
「サウナに関する正しい医学的知識、法律・規制、サウナ設備、サウナ施設マネージメント、地方創生、サウナイベントなどサウナにはいろんな側面がある。全部そこで学べて、サウナに関する基礎を身につけて、自由にサウナを作ってほしい。土を育ててそこから芽がでて木になり森に育っていくような、豊かなサウナ文化になって欲しい。
そういうサウナに関する総合学習プラットフォーム。それぞれのサウナをつくりたいという熱意のある人が。魅力的なその地方にしかないような、その人にしか作れないようなサウナがきちんとうまく作れるように土壌整備をしたいというのがコンセプトですね」
「サウナの土壌整備をしたい」
―サウナの土壌整備?
「自由につくってもらったほうがいいじゃないですか。自由にたくさん面白いサウナが各地にできれば、サウナファンも増えるし。サウナ業界だけじゃなく日本全体が明るく良くなると思うので。まさに土壌の部分ですよね」
「せっかくサウナが好きでこだわりのサウナを作ろうとしているのに、法律や役所との交渉のコツを知らなかったから足踏みしてその間にお金がなくなっちゃってうまくいかなくてっていう勿体無いことが結構起きちゃってますね。」
サウナの失敗例:「ドア」
加藤「意外とサウナの設計って奥が深いんですよ。一番笑える失敗例は。サウナ室の『ドア』のところって木でできているように見えるじゃないですか」
後藤「ははは」
加藤「あれ(多くは)鉄なんですよ。中身ね。歪んじゃうから鉄じゃないと入らないんですけど。木でつくっちゃって。『開かないんですけど、助けて!』みたいな(笑)中に人がいるのに開かなくなっちゃう」
後藤:「皆さん(鉄板に)もく(木)を張ってる」
加藤「鉄も、斜めになってて縮まないようにできた特別な扉なんですよ。木質も材質を変えているんですよね。熱の反射と吸湿性が違うんで実は変えてたりしてるんですよ」
―そうなんですね。
「あとは空気とかも。サウナストーブ周辺も気流の通り道なんでふさいじゃいけなくて。レンガでできている場合でもわざわざ隙間を開けて熱の通りを良くしたりして工夫するんですよね。」
失敗しないための知識を伝授
「サウナが大好きで。お金かけてこだわってつくったサウナがよくないって。一番勿体無いじゃないっすか。基礎知識の部分はみんな共通なので知識をシェアして効率化して、できた余力を、例えばサウナドリンクの開発に使うとか。実際に十勝サウナ協議会ではオリジナルサイダーの開発をしてますしね。もっと地域の価値を高めるようなところに、お金とか時間とか気持ちを割いてほしくて。僕はサウナ施設が失敗してほしくない。自分が行きたくなるようなキチンとしていてかつ個性的なサウナがいろんなところにあると最高ですよね」
―知識の部分やほかに具体的には?
加藤「医学的に正しい入り方ですね。最近サウナに入り慣れた人が極端な入り方をしてしまっているのを見ます。極端な冷たすぎる水風呂とかね。アヴァント*とかあるけど(笑)」
後藤「あれはアクティビティですから」
加藤「そうね。アウトドア・アクティビティの一環だから。もちろん体への負担は大きくリスクはあります。大事なのは、医学的に自分のコンディションを把握して、万全の状態で入ること、そしてアヴァントなんかで大事なのは最悪の場合を想定して準備しておくこと。A E Dはもちろんですが、常に救護スタッフを配置して、その地域の救急医療体制を確認しておく。最近ではコロナ禍で救急病院の受け入れが困難な場合もありますので。」
後藤:「ほんとはドキドキしてるんだから」
一同:(爆笑)
(『AVANTO37』加藤学長は安全面のアドバイスや…モデルも務めています)
☆『AVANTO37』詳細&参加申し込みはこちら!
https://tokachi-sauna.com/avanto/
(1月15日スタート「お祭り男Goto熱波師」©お祭り男Goto)
加藤「アヴァントに参加する人は持病がなく丈夫な人で、リスクがあるってことを了承した上でやってくださいっていうのが基本だと思うんですけど。普段のサウナで、水を飲まずに入っていたり、酒飲んで入ったり、休憩をはさまずに長時間入ったり間違った入り方をしている人がいる。もちろん人それぞれ好きな入り方をして貰えば良いんですが、体に悪い入り方は避けて欲しいですね。せっかくサウナって健康に良いのに、台無しになっててもったいないから。」
―「正しいサウナの入り方」、先生の本でだいぶ浸透してきた印象があります。
加藤「あとサウナイベントも多くなってきてますが、関係者に聞くと、役所とのやり取りがうまくいくのかとか。結構ノウハウがあるんですよ、あれって。直球で管轄の保健所に行っちゃいけないとかいろんな経験談がありますよね。」
後藤「100%断られます」
サウナは「健康インフラ」
―なぜ今サウナなんすかね?
「コロナ禍で社会的に困難な状況にあって、みんな明るい癒しを求めているんじゃないですかね。サウナにはいると脳科学的には、深くリラックスして、感覚が敏感になり頭がすっきりします。いわゆる「ととのう」という状態。すっきりリラックスして、サウナ後のサウナ飯や生ビール、レモンサワーが美味しい、これって最高じゃないですか。さらに健康にもつながっちゃう。」
「サウナ愛好家の意識調査をすると、サウナの目的が変化してて、『リラクゼーション』から『健康』になってきてるんです。今の若い世代の中では病気にならないという健康ではなくて、『コンディショニング』なんですよ。自分の体調やパフォーマンスを上げるという意味での健康なんですよ」
(©HTB)
「植林サウナ」はいらない!
加藤「最近のサウナブームでいろいろなサウナができてますが、個人的には『植林サウナ』は好きじゃありません。自治体とか、ホテル、温浴チェーンがある程度大きな予算を割いて、有名な建築家に頼んでよくあるおしゃれサウナを建てるじゃないですか。それって『植林』のようなものだと思うんですよね。他の土地ででっかく育った木を持ってきて植えて『どうだ立派な木だろ』と。確かに立派なんだけど、そこに生えてる意味あります?って話じゃないですか」
―ないよりいいとは思いますが・・・
加藤「ないよりいいけど。別にそこに行く価値はなくて。東京近郊でいいじゃないですか。おしゃれサウナあるんだったら奥多摩とか秩父とか千葉の方が近くて良いし、実際にたくさんの人が行ってますよね。わざわざ遠方まで足を伸ばす人って少ないと思うんですよ。逆にそこに来ないと体験できない価値ってのがないからリピーターにならないわけですよ」
―北海道・十勝にはサウナのコミュニティがある!
加藤「まさに『コミュニティこそが土壌』なんですよ。で、種をまいて生えてくる土壌なんで。サウナ好きでいろいろやってみようという盛り上げるコミュニティ自体が凄い大事で。その地域の個性化につながるので。実は北海道十勝が急先鋒で各地に出来つつあります」
種まきが大事
―アドバイスを求められているとか?
「私はサウナ業者ではないのでサウナコンサルみたいなことはやりません。でも、地道にサウナの基礎的な啓発活動を行ったり、サウナの魅力や意義を伝える活動を通じてサウナ文化の土壌を育てて、サウナを通じて社会に貢献することが自分の中では大事ですね。」
―サウナ好きが大切だと?
「サウナ好きって全国津々浦々いろんなところにいて、自分の地域にはこんなサウナが良いんじゃないかって妄想しているサウナー。その人を核にして。その地方の最高のサウナは何か?妄想する会をするんですよ。この地方の、世界一を狙えるサウナってどんなだろう?ってふっかけて。そして、妄想していくと自動的にその地域のユニークなサウナができるんですよ」
土壌づくりでサウナを文化に!
加藤「おしゃれサウナもサウナの大事な方向性の一つだと思うけど、サウナが社会に根付く文化になるためにはやっぱりサウナの土壌を育てて自然に芽が生えていくような地盤整備をしていかないと。ほんとにおもしろいものってできないなぁと。」
加藤「サウナ好きたちが自由に妄想したものをつくっていけるような未来があったらいいなと思って。この活動を通じて私も気づいたことなんですけどね…」
(©One Green)
今、手がけている『サウナで地域創生』モデルもあるとか。2月開講、日本サウナ大学からどんな人材が飛び出すのか・・・目が離せません。