1月30日に行われたCancerXのWorld Cancer Week2022のレポートです。
オープニングでは今、解決すべきがん領域における課題を仕分けした18項目のCancer Agendaを発表。
そのアジェンダを組み合わせながら、課題解決に向けて各セッションが行われました。
https://drive.google.com/file/d/1eU8RA6XqxX6PDVs8D359A6eLic33oNH6/view
一回目は『社会』をレポートします。
がん×『社会』
がんにおける社会課題。解決するためのアクションとは?をテーマにトークセッションが行われました。
【登壇者】
秋山 正子さん (認定NPO法人マギーズ東京 センター長 / 看護師)
上野 直人さん (CancerX 共同代表理事 / テキサス大学MDアンダーソンがんセンター腫瘍内科教授)
及川 美紀さん (株式会社ポーラ 代表取締役社長)
前村聡さん (日本経済新聞 社会保障エディター)
モデレーター : 半澤 絵里奈さん (CancerX 共同代表理事 / ㈱電通 プロデューサー / cococolor編集長)
がんの社会課題に潜む格差(ギャップ)とは?
秋山さん『このコロナ禍でオンラインを利用できる人と利用できない人の格差が広がっている。一方で海外などにいても(マギーズ東京に)相談できるので格差が縮まった場所、部分もあるのではないか。しかし、コロナ禍で診断から治療を始めるまでだったり、方向性が決まるまでの時間がかかっていることが散見され、悩む時間を伸ばしている。その間にネットの情報を検索し、かえって不安になって、相談電話がかかってくる。
そのネットの情報の中身で心配、不安。不要不急とされる乳がんの乳房再建についてでは同時再建ができなくなった、またセカンドオピニオンの予約も取りづらいと寄せられている。不安が助長されたときには、誰かと話すことで少しゆとりが生まれ、待てるようになるが、それが今のコロナ禍では難しい。がんサロンが閉じていたり、入院してもカーテンを閉めて話ができず、病院もピリピリ。ゆっくり話をしたり、相談センターにたどり着けないという声もある。』
上野さん『コロナ禍では、ITのアクセスとリテラシーの問題が出てしまう。』
及川さん『(ポーラ)社員のがんのり患率は2%くらい。50人にひとりの割合。マイノリティである。その方ひとりに何ができるか、が向き合っていないとできない。向き合ってもらえてないと当事者も事情を話せない。排除ではなくて、チームビルディングをして、心理的安全性を保って、いかに語れる環境を作れるかが大事だと思う。
本社に6割の社員がいるが、全国には人数の少ない事業所もある。り患者が肩身の狭い思い、申し訳ない思いをして、一人で耐えてしまう人もいる。
コロナ禍のリモートは優位に作用したと思う。会いたいひとと会いたいときに話せる。リモートとリアルを組み合わせて、出勤時間も選べるフルフレックスを導入。(り患者が)自分で仕事をデザインできることになる。少しずつ、主体的で選べる環境を整えることが、”格差解消”につながるのではないかと考えている。』
前村さん『がんの5年生存率や早期発見率などは地域間やがん拠点病院間で格差がある。公正性を保つためにも自分が住んでいる都道府県のがん計画なども気にしてみて欲しいと思う。』
格差(ギャップ)に向き合う具体的なアクションとは?
ポーラの『フレンドリーアクション』が紹介されました。ポーラでは、2018年から『がんとともに生きる』ための「がん共生プログラム」を進めています。3つの柱があります。
■がんに対する理解を深める
がんと共に生きることが身近なことと理解し、がんと共に生きるために大切なこと(早期発見、治療環境、罹患者や家族の悩み、心構え)を深く学ぶ。
■安心してがんと向き合う
一人ひとりがかけがえのない存在として認め合う関係の中で、安心して治療や看護に専念できるよう、心のケアや不安要素の低減をサポートする。
■経験を大切に学ぶ
がんと向き合った経験そのものが貴重なものと捉え、会社全体が理解し、その経験を共有しあえる風土に。またその経験を社内に留めることなく、広く社会にも伝えていく。
会社全体でがんを理解することに重きを置いています。これをさらに、いかに社会に還元するかを目指して作ったのが『フレンドリーアクション』です。
がんをり患し、悩んでいるお客様とそのご家族に寄り添うことができないか。お店でできる具体的なアクションを中心に独自の教育プログラムを構築されました。
及川さん『どういう接客が悩んでいるお客様に寄り添うことができるか、衛生的な不安を取り除けるかなどを考えて取り組んでいる。そしてがんを語れる場を増やしたい、とイベントなどに協賛。共に頑張る企業を増やしたいと活動している。』
印象的な言葉がありました。
及川さん『やはり、誰に話すかが重要で、り患者はわかってくれる人に話したい。自分がわがままを言っているのかも、と落ち込んでしまう人がいる。制度を作っても、がんの不安と向き合っている人が、それを申し訳なく感じながら使うことになる。これは育産休も同じで、がん患者の場合は時間的拘束もヘビー。いかに周囲が理解するか。上司が理解しなくても、隣の上司、または役員でも誰かに相談できることが大事。そして、ただ理解しても、その人にとっての最適解を話し合わないと意味がない。個人個人でone on oneが大事ということをひしひしと感じている。』
普段、取材の中でも感じていることで、こうした先進的な取り組みがシェアされ広がることでより多くの方がその恩恵を受けられるよう望みたいと思います。
さらにがんサバイバーでもある上野さんは『許容できるカルチャー』が大事と話しました。
上野さん『(自分のように)医療従事者でがんをり患しているときっちりしゃべる人が意外と少ない。社会を変えたい思いは強いが、医療従事者ががんになったときにぶつかる問題点が厳しいものがある。がんを公表したが気を使われてしまうのと、自分らしく働ける、生きることは多様でなかなか医療従事者でも理解できていない。
いくつものストーリーがいくつも世の中に出ないといけない。社会全体としてカミングアウトが許されるカルチャー、多様性を許容できる雰囲気を作っていくかが格差の変化につながる。医療従事者には(プライバシーもあるが)自分自身を語ってもらってもいいのかなと思う。』
格差や思い込み(バイアス)をなくすことはみなさん同意されると思いますが、どんなことにでもバイアス、格差もありえる、という前提でものを見ると問題点が可視化できるのではないかとも提案がありました。
まずはつながること、理解すること。
がんの人もそうでない人もがんを語れる状況になるにはどうすればいいのか。
がん教育にヒントがありそうです。
次回はがん教育のセッションを振り返ります。
https://cancerx.jp/summit/wcw2022/
がんとともに、、、。
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決して1人ではありません。