『悲しくて涙が出た』『やりきれないモヤモヤ感』『裏切られた気分』
週末のtwitterのタイムライン、乳がんり患者の言葉であふれていた。
ことの発端は毎年行われている『ピンクリボンデザイン大賞』の2021年第17回の受賞作ポスター。『まさか、私が と毎年9万人が言う』というキャッチコピーとともに商店街の抽選ガラポンが描かれていた。みなさんはどう感じるだろうか?
https://www.pinkribbonfestival.jp/design_award_17/
2021年の受賞作の発表は10月。今、2月。どうしていまになって”炎上”したのか。それは一部の医療機関にこのポスターが貼られ始め、患者さんが目にしたからである。未病であるまだ、検診にいっていない方々への啓発のために作られたポスターで、すでに告知を受け、治療と向き合う患者さんが傷ついてしまった。イラストもよくできていて、インパクトもある。誰もがなる可能性があることから、くじ的な要素があることも否定しない。しかし、もしも自分が患者だったら、見てどう感じるだろう。
*乳がんになったときにまさか私がと思ったけれど、福引きにあたった気持ちにはならなかった。
*下の(赤い)玉が取れた乳首のように見えて悲しい
*福引とがん告知は逆。
*今回のポスターは突き刺さりました
*グランプリになった経緯、その審査観点に違和感
*毎日、不安を抱えながら生活している患者を追い詰めるのが啓発なのか?
*がんの啓発にインパクトはいるのか?
*こどもにがん教育といっているが、大人も学ばないといけないのではないか。
こんな声が寄せられた。
さらに私がfacebookに書いたコメントだ。多少語気が強いのをお許しいただきたい。
『炎上させるつもりはないけれど、これは患者の気持ちを考えているのだろうか。私たちはくじで当たりはずれを言われたくない。これはまだ未病の方向けのだから、驚かせる方向にいってしまったのだろうが、誰かにちゃんと気づいて欲しかった。ずっと啓発活動を続け、自らもり患してしまったからこそ、この表現は許せない。ヘルスリテラシー、メディカルリテラシー、大人へもきちんとしないとダメなのではないだろうか。
り患者ではない人が、我々を見て、こう思っているんだなという例としてはわかりやすい。人生会議のときもそうだったけれど、逆の立場になったときにどう思うかを考慮に入れないのだろうか。テレビドラマ、ニュースの特集、記事などなどすべての人を傷つけない表現は難しいし、大衆に広げるライトな笑いを含めたキャッチーな表現ができなくなり、表現の幅が狭まる、なんて声もある。でも今回は我々と共にいてくれると思っていた方々のこと。せめてこのポスター、医療機関には貼ってほしくない。』
そして、ポスターだけでなく、次年度のポスターのキャッチフレーズにもなる、『乳がんの一番の症状は、無関心です。』これにも批判が相次いでいる。この方の受賞コメントからは『乳がんにかかるリスクは誰にでもあるのだと訴えることで、一人一人が自分の事として考えるきっかけになればと思って書いたコピー』とあり、その考えは全く間違っていない。しかし、乳がんの一番の症状は・・・と今、治療されている乳がん患者さんも含めて無関心だからがんになったのだ、という印象を与えてしまっていることが残念でならない。整理するならば、『乳がん検診に行かない人の一番の問題は無関心です。』だ。でもこんなまどろっこしい表現がキャッチフレーズになるはずもない。
メディアの仕事をしている中で、すべての人の気持ちを傷つけない表現は難しい。病を患っていれば医療物のドラマは見られないだろうし、CMひとつとっても、未病の方にはいいのかもしれないがこの表現はよいのだろうか、と思うものもある。早期発見で治ります、も違うし、恐怖をあおり、がんイコール死という一方的な価値観にとらわれた表現も、時には必要な場合もあるので、なくならない。本当に難しい。
今回のポスターも考えたクリエイターの方を責めるつもりはない。受賞コメントを拝読すると、あたりが出たときの『くじ』と『まさか』の驚きは同じ心の動きなのだろう。喜びと悲しみの驚きの表現にまで考えが及ばなかったのは、周りに患者さんがいなかったり、そのイメージ・さらに知識がないと、正直わからなくて仕方がないのかもしれないとも思う。
知っていただきたいのは、私たちは『当たったこと』で深く傷つく。がんが『あたり』だとすれば、なぜこんなに苦しむのだろうかと私たちは考える。
患者さんの一人は『また壁ができた』と話す。
よく壁を作っているのは患者側だ、と言われる。そうではない。どこか自分だけは違う、と思っている方が作っている壁ではないのか。未病のみなさんにはがんについて知ることを恐れず、もっと知ってほしい。がんを知ることで、自分の体を守るためにどうすればいいのかわかると思うし、その患者さんの気持ちを少しでも知ることで生き方、そしてかける言葉が変わるのではないかと私は思う。
つい先ほど、主管する日本対がん協会がWEB上でコメントを出した。
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「ピンクリボンデザイン大賞について」
日本対がん協会が主管するピンクリボンデザイン大賞は、乳がんの早期発見の大切さを伝え、検診受診を呼びかけるとともに、正しい知識を習得していただき、ご自分に合った適切な行動を起こしていただくことを目的に実施しております。しかしながら、これまでの入選作品に対し、問題点を指摘する多くのご意見が寄せられております。選考の責任はわたくしども協会にあり、お気持ちを傷つけてしまった患者さんやご家族のみなさまにお詫びを申し上げます。また、偏った価値観に基づいて作品が選ばれているとのご批判もいただきました。ご意見を真摯に受け止め、よりよい啓発活動のあり方を探ってまいります。
公益財団法人 日本対がん協会
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今回の受賞作をきっかけとして、過去の受賞作に関してもジェンダーの観点から問題、などの意見もでている。丁寧に寄せられた声を拾いあげていただき、また新しいカタチのコンペとなり、より広く、深く、様々な人に乳がんについて、検診の大切さについて、知ってもらいたいと願ってやまない。
そして、きょうのTwitterのタイムラインは患者・当事者たちが作るキャッチコピーも見かけるようになった。力強いし、一人でも多く検診に行ってほしいと望んでいる。たとえ、そこで診断を受けたとしても、私たちは決してひとりではない。
がんとともに、、、。
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決して1人ではありません。