今回は、乳がん治療で個人差はあるもののみな、悩まされる、副作用についてです。特に日本人女性の乳がん患者さんの7割が該当する、ホルモン治療での副作用のお話です。
まずは、お便りから
43歳女性から
『私は2019年7月にステージ1の乳がんが見つかり、手術、放射線治療を受けました。祖母、母、私と3世代乳がんサバイバーです。遺伝性乳がんかどうかは、発症時点ではまだ自費検査だったこともあり、調べませんでした。私は女系家族なので、発症していない姉や姪っ子たちに重い十字架を背負わせてしまいそうで怖かったのもあります。いつかは乳がんになるだろうと覚悟はしていたものの、祖母や母は還暦を超えてから罹患したので、40歳で乳がんになったときは思っていたより早かったな、と感じました。抗がん剤治療はしていませんが、ホルモン治療がもたらす地味な副作用は術後の痛みよりも辛く感じるときがあります。でも見た目には何ら変わりがないので、その辛さを周りに理解してもらうことが難しく、様々な場面で葛藤もあります。今は婦人科で漢方の処方を受けながらホルモン治療を何とか継続しています。』
漢方ですね、、私と一緒です。。
今回も、ホルモン治療とどう向き合うか、札幌フィメールクリニック 矢嶋彰子先生に聞きました。
キーワードはエストロゲン(女性ホルモン)です。
まず、エストロゲンは何をしてるの?
矢嶋先生『エストロゲンの働きはいろいろです。子宮や膣の生育、乳腺の発達に生理周期、妊娠の準備などなど納得するものもたくさんありますが、実は骨の代謝とか脂質代謝にも影響していて、必要なものなのだけれど、悪さもする。子宮内膜がんのリスクや血栓症のリスクもあるというものなのです。』
女性ホルモンであるエストロゲンががん細胞のエストロゲン受容体に結合することでがん細胞の増殖がおこる。
エストロゲン受容体は乳腺の正常な細胞にも存在しています。日本人のおよそ7割の乳がん患者さんがエストロゲン受容体陽性の乳がん。エストロゲンを抑える治療をしていくことになります。
①エストロゲンとエストロゲン受容体をくっつかないようにする、そして、②作らないようにする、の2つをしていくのです。
閉経前の乳がん患者さんの治療で使われる、タモキシフェンなどはエストロゲンと競い合って、結合して作用を阻害。フルベストラントはエストロゲン受容体と結合して、それを崩壊させて増殖しないようにするものです。
それぞれに役割、特徴があります。
閉経するとエストロゲンなくなるのではないの?
矢嶋先生『卵巣からは出ないということになるけれども、閉経したら男性ホルモンから脂肪組織などから活性化されて、エストロゲンができるのです。これを阻害するのがアリミデックスなどのアロマターゼ阻害剤といいます。閉経前と閉経後とは治療方法が違うのです。』
『ホルモン治療は一昔前は5年と言われていましたが、様々な試験が行われて現在は10年のほうが効果が高いということで推奨されています。
なので、副作用に悩まされる期間も長くなります。
タモキシフェンに多いのは
ホットフラッシュ
膣出血
膣分泌
子宮内膜がん
虚血性脳血管イベント
静脈血栓塞栓症
深部静脈血栓症
アナストロゾールに多いのは
関節痛
骨折
そのほか、悪心・嘔吐・疲労感・倦怠感・白内障なども。
矢嶋先生『副作用もホットフラッシュ、やる気が出ない、関節痛などなど。コレステロールが上がる、認知機能も調整していることがわかっていて気分にむらが出たり、眠れなかったりすることもある。治療をやめるのが解決にはつながるけれど、長く飲んだ方が効果がある。』
今回、新しい発見は、”指の関節がこわばったりするんですけど、軟骨の部分にエストロゲン受容体があるので、減ると痛い。”のだとか。
私も関節痛やひざ痛に悩まされているのですが。こうしたことがわかるだけでも、だからか、、、と納得できるのではないかと思います。
治療法はあるの?
明確に誰にでも効果があるものはなかなかない、というのが実情。どううまく付き合っていくのか、が重要です。
矢嶋先生『よく行われているものは漢方薬の投与です。当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸、温清飲、五積散、温経湯などが知られています。
本来は体格なども考慮して処方を決めていくのが東洋医学。中でも当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸がよく処方されていて、すぐに効果があるものではなく、効果が出るのか見ていきます。すごくぴたっとはまる人もいれば、効果が感じられない人もいる。その場合はさらに、漢方医で相談するのも一つの方法です。そして、サプリメントは何が成分として入っているのかなどもあるので、主治医の先生と相談してください。』
矢嶋先生『ホットフラッシュは自然で起こる更年期でも苦労されている。服装に気を付ける、気分転換、運動などがあります。できれば運動はやったほうがいい。予防につながるのは明確なので体を動かすことで気分を副作用の方にいかないようにすることも大事ではないかと思います。』
悩みを先生に伝えて、少しずつ試していくことも大事です。ひとりでもんもんとしない方がいいと思います。
矢嶋先生『最初に立ち返って、再発がどの程度抑えられるかということを思い出してもらって自分にとって必要かを考えられるかどうか。副作用だけじゃなくて効果にも考えを及ばせた方がいいのではないかと思います。』
閉経後、閉経前をまたぐときに治療は変わる?
矢嶋先生『ホルモン治療の段階で最初から閉経期にまたがりそうなときはタモキシフェン5年→アロマターゼ5年もあるが、40代であればタモキシフェン10年かが主流です。どんどんその治療の効果や組み合わせ、新しい薬も出てきていますので、そのときに合わせた最善の治療を続けましょう。』
このお話はピンクリボントーク#9からの抜粋でした。乳がん患者さん向けのヨガ講師の先生に教えていただいた簡単なヨガも含めて、動画もぜひご覧ください。
前回の『検診啓発ポスター』に関する患者さんの声が多く届いていますので次回取り上げます。みなさんもぜひお寄せください。
https://www3.htb.co.jp/cgi-bin2/webform/webform.cgi/pinkribbon/form
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