SDGsの目標の一つである「住み続けられるまちづくり」などにつながるある取り組みに注目しました。
「北海道の地域のために働きたい」という人材を、ある方法で獲得しようというのですが、これが実にユニークな方法なんです。
幸運を引き寄せるのは・・・
「おーっ!」 会場に広がる歓声。
「クジ運無いですね」
「引いてやりました」
「狙っていた人、だいたい獲られちゃった」
「嬉しいです」
喜ぶ人、悔しがる人、様々な反応が。
”わがマチを盛り上げてくれる人材”を外部から獲得しようというイベント、その名も北海道移住ドラフト会議です。
北海道に移住したい人、対する、呼び込みたい自治体や企業。幸運を引き寄せたのは、果たして・・・。
今年で4回目を迎えた北海道移住ドラフト会議。
プロ野球のドラフト会議をモチーフに2018年にはじまりました。
道内に拠点がある企業や団体を「球団」、移住して仕事したい人を「選手」と見立て、2日間にわたり球団が選手への交渉権を争います。
無事、交渉が成立すれば、仲間が獲得できるというイベントです。
横浜からの参加者
「大学生で休学中でいまは、インターンをしていてデザイン関係の会社につとめている」
大阪からの参加者
「書家とカメラマンをやっています、アーティストです。行きたいと思えば移住したいと思いますし」
一方、球団の数は12。地方のベンチャー企業やまちづくりを仕掛ける団体など、道内10の地域から集まりました。
人口およそ1万5300人のマチ、八雲町。漁業をはじめ、一次産業が盛んです。
2030年度には北海道新幹線が伸び、八雲町にも駅ができるため、観光が大きな課題となっています。
NPOやくも元気村の赤井義大さん。
古い建物を再利用してゲストハウスやカフェに改装し、町に人が集まる、場所づくりに力を入れています。
その仲間を増やそうとドラフト会議に期待を込めます。
赤井義大さん
赤井義大さん
「リノベーションしているので、一緒にかかわってもらうこともできますし、単純にここで一緒に仕事したりもできるのでチャレンジの場としてもらっても・・・」
八雲町 岩村克詔町長
「ドラフトに参加したりしながら、この八雲町に人を呼び込むのは本当にうれしいことだし、ぜひ応援したいと思っています」
初日は選手のプレゼンタイムから始まりました。
自分がマチでどんな活躍ができるか、どんなことを実現させたいかをアピールします。
プレゼンタイム
「ロックフェスをやりたい」
「キャンプ場にトレーラーハウスを用いて、キャンプをしながら仕事をする新しい職場づくり」
中野智文さん
「お寺で寺子屋の運営をしてたりとか・・」
愛知県出身の中野智文さん。大学院を休学し、各インターン先で得た豊富な経験をアピールしました。
赤井さん
「経験とかもすごく大事だと思うので、バランス考えながら選んでいきたいと思います」
続いては、球団と選手が直接話せる「お見合いタイム」です。
気になる選手に球団側の熱い眼差しが向けられます。
「お見合いタイム」
赤井さん率いる「やくも元気村」のブースには、プレゼンタイムで注目が集まっていた中野さんが訪れていました。
Q「フィンランド語しゃべられるんですか?」
中野さん
「フィンランド語しゃべれる24歳で売っています。フィンランドは⒙歳の時に、1年間交換留学のプログラムで行っていて」
注目の中野さんは・・・
話が弾むお見合いタイム。球団は誰を選ぶのでしょうか。
中野智文さん
「結構、興味のある範囲っていうのが似てるっていうのが認識できたので、楽しいお話だった」
イベント2日目。いよいよ選手指名の時を迎えました。
赤井さん
Q他の球団との被りは?
「かぶりそうだと思っていて、ドラフト、ひけるのであれが楽しみ」
球団が交渉権を獲得できるのは36人のうちの3人。
誰を最初に指名するのか。プロ野球さながらの読み合いとなりました。
「第1巡選択選手、安平町。中野智文」
「SHAKOTANGO、中野智文」
「ファームノート、中野智文」
注目の中野さんは、早々と3球団が指名しました。
そして・・・。
「やくも元気村、野口剛輔」
IT系の経験豊富な野口剛輔さん。
赤井さんチームは、キャリアのある即戦力を選び、単独で交渉権を得ました。
野口剛輔さん
「かなり予想外でした。非常にありがたいという気持ちと、このあとの交渉がどういう感じになるか、非常に楽しみ」
一方、3球団の獲りあいとなった中野さん。交渉権を勝ち取ったのは…。
運命のくじ引き
「開封してください!」「おーーー!」
引き当てたのは、積丹町のベンチャー企業「SHAKOTANGO」でした。
積丹ブルーの海を見下ろす温泉施設の再生を目指しています。
中野智文さん
「積丹、実際に関わってみたかったので、すごく嬉しいです。建築とか学んでいたこととかデザイン学んでいたことを、少し生かせるかと思っています」
五十嵐慎一郎社長
「やっぱウニのパワーですかね。いきなりつかんじゃいましたね、ばしっと!」
マチの活性化のカギを握る人材争奪戦は、運を引き寄せる発熱した勝負に。
こうして36人の選手の交渉先がすべて決まりました。
注目のやくも元気村は、結局3人とも「単独指名」に。赤井さんの勝負の2日間は、穏やかに終わりました。
赤井さん
「ストレートに獲得できたのは素直にうれしいですね。クジは1回も引かなかったですね。そこはちょっと残念です」
やくも元気村が交渉権を獲得した3人です。
野口剛輔さんはIT業界経験が豊富でエンジニアでありクリエーターです。スタッフにいない世代で、ITネットワークやホームぺージ運営に期待されます。
平野佑樹さんは自転車で全国の旅をしている方。ゲストハウスの運営について旅人目線でのアドバイスを期待しています。
亀井聡さんは建築設計士です。施設のリノベーション、空間づくりの即戦力に期待しています。
今回「北海道移住ドラフト会議」を取材したHTBの本吉智彦記者の制作後記です。
「移住を受け入れる”球団”、移住を希望する”選手”、それぞれの熱意に圧倒されました。”選手”の皆さんが各球団で活躍し、どんな面白いことが起こっていくのか。移住ドラフト会議のその後、気になっています」