次の誰かのためにと綴っています。
JOHBOC 日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構の第2回の学術総会が札幌で開かれました。(主催事務局:札幌医科大学医学部遺伝医学)
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。遺伝性のがんのひとつです。この診療・治療などに関わる先生方の発表の場です。
HBOCとは乳がん、卵巣がんだけではなく、すい臓がん、前立腺がんのリスクも高める遺伝子疾患です。だから、女性のことだけではありません。BRCA1・BRCA2の遺伝子の変化または変異によるもので母親または父親から受け継ぐ可能性があります。これら4種のがんにはPARP阻害薬による治療が有効とされ、治療手段として確立しています。正しく知り、適切な診療を受けてほしいと先生方は日々考えておられます。
理化学研究所などの国際共同研究グループにより、このBRCA1/2はこれまで明らかにされてこなかった、胃がん、食道がん、胆道癌の発症リスク上昇にも寄与することが発表されたばかり。こうした研究が進むことでゲノム情報や生活環境に合わせた個別化医療がより進むことが望まれています。
今回、会長を務められた櫻井 晃洋先生 (札幌医科大学医学部 遺伝医学)は『すべてのがんは遺伝的要因。遺伝要因と環境要因、に・・・偶然。たまたまが重なったときになる。すべての患者さんに遺伝性の可能性を意識すべき。』とし、『今後の遺伝医療での知識を広める担い手が圧倒的に不足している』と指摘しました。
しかし、よくがん家系っていうけれどもそもそも『遺伝性のがん』っていったい何だろう、という方が多いと思います。ご自身がり患されて、言葉を知り、慌てたという方も多いのではないでしょうか。
2020年からは、乳がんにおいては術前に血液で遺伝子検査を行う例も増えています。HBOCかどうかで推奨される手術の方法(術式)が異なるからです。
診断されたらどんな選択肢があるのか、どうすればいいのか。大人にとってもそうですが、昨年度から小中学校、本年度から高校でもがん教育が始まりましたが、『遺伝』ということはあまり触れられていない、のが実情です。
認定遺伝カウンセラーであり、教員として学校教育の現場にも立っている佐々木 元子先生(お茶の水女子大学基幹研究院 自然科学系)は『遺伝のリテラシーを上げたい。生活習慣病の一部として語られるがんは新たな差別を生む』と問題提起。
越智 龍太郎先生(町立別海病院 内科・脳神経内科/特定非営利活動法人クラヴィスアルクス北海道支部)は『怖いという思いを抱かせないような個性のひとつだよというところで疾患を説明。心臓病もがんもそうだよ、と中立的なところからがいいのかと。積極的に予防的な話は成人してからでもいいのでは?と思う』と話しました。
武藤 香織先生(東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター 公共政策研究分野)は“遺伝的特徴・情報に基づく差別防止の現状”にも触れ、『差別の防止の話は遺伝情報の提供と両輪なので、それを享受するマナーとして取り組んでほしい』としました。
6月には「遺伝性乳がん卵巣がんを知ろう!みんなのためのガイドブック」が発刊されます。
中心となられた小林 佑介先生(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室)によりますと『患者市民の参画、やりとりを大事に作り、基本的にはQ&A方式で作成。持ちやすいようにB5判とこだわった』とのこと。
乳がん・卵巣がんをより知りたいという方、実際に診断されたらどんなことが起きるのか、という説明はさることながら、精神腫瘍科の先生も加わられており、心理面でのケアやご家族へどう説明するか悩まれている方などへの示唆もあるそうです。
すでにその前段でもある、『ご理解いただくために ver2022_1』がwebサイトに公開されているので知識を深めてみるのはいかがでしょうか?
https://johboc.jp/wp/wp-content/uploads/2022/02/hboc_ver_2022_1.pdf
両側乳がんになりました 姉も治療中です
いただいたメールをご紹介します。
『小学校の保健室に勤務する45歳、中高生の2人の娘の母です。1年前に両側乳がんと診断されました。両胸全摘と2回の再建術を受けて、現在ホルモン治療中です。診断されたばかりの時はがんと言うワードを目にすることも辛く泣いてばかりいましたが、今はこうして体験談も読めるくらいまでメンタルも回復してきました。職場にも悩み抜いた末に病名まで伝えて、様々な配慮をしてもらいながら仕事と治療を両立しています。とはいえ、薬の影響で体調が今ひとつだったり、ふと気持ちの落ちる時もあります。また実姉も乳がん治療をしており、実家の両親の気持ちを思うと、2人で病気になってごめんねと言う気持ちにもなります。でも今日も何とか元気に一日を過ごしました。生きていることに感謝です。まだまだ道のり半ばのガン治療ですが、前向きに頑張ります。』
再建もされ、お仕事と治療の両立、大変だったと思います。体調いまひとつも非常によくわかります。私も母に病気になってごめんね、という気持ちにもなりましたが、母からは『誰も悪くない。悪いといわれると私もどうしたらいいのかわからない』と言われて、それから思わなくなりました。私の場合は母も乳がんだったりしますので、そんな体にしてしまって、という思いが少なからずあったんだと思います。なのでやはり誰にでもなる、ということでだれも悪くないと本当に思います。
38歳『いつも読みながら共感させていただいてます!私は母子で乳がん罹患です!母は帯広市の検診で見つかりました!早期発見でした!いまコロナ禍で検診いく人が少なくなってると聞いて早期発見が大事なのにと思いながらいます!私は早期発見ではありませんでしたが・・・入浴着、今回はポスターのない施設にて使わせていただきました!ありがたい話でした!』
ありがとうございます。入浴着、使える施設がどんどん増えることを願っています。目立ってしまうから使えない、という方もいるのですが、実は乳がんではなくても手術のあとを隠したい場合や外国の方なども使えます。誰でも使えて、温泉を楽しんでこころゆるやかなひとときを過ごしてもらいたいなと思うのです。
今回、学会にも出ましたが、すべての人に遺伝の可能性を考える、という言葉をかみしめています。誰にでもなる可能性があるから、だからこそなる前の方にもその恩恵をもたらすことはできないのか?そのためにクリアしなくてはならない倫理的な課題や制度、気持ちの問題など考えなくてはならないことが山積です。
がんとともに、、、。
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