農家から直接お店に!?…「やさいバス」
パクチーを収穫しているのは、千歳市で農家を営む松浦勇さん。
松浦さんの農園に1台のトラックが到着しました。
ドライバーが倉庫の前に置いてあった白いケースを運んでいきます。
中を見ると収穫して袋詰めされたばかりのパクチーや、越冬ジャガイモが。
実はこれ・・・
「やさいバスです」「農家から直接集荷して、このまま同じトラックでその日のうちにお店に届けます」
松浦農場 松浦勇さん
全国で11例目となる営業が、先月、道内で始まった「やさいバス」。
トラックなのに”バス”と呼ばれる理由は、その仕組みにあります。
「やさいバス」は、飲食店などから注文があった野菜を生産者がバス停と呼ばれる所定の場所に持ち込むと、その野菜を冷蔵トラックがバス停を回って回収。
お店か最寄りのバス停へ新鮮な状態のままその日の内に届けてくれるという、燃料代や人件費を削減できるシステムなのです。
送料は購入者が負担
送料は1ケース350円で、購入者が負担、生産者にとっては一般的な卸売市場を介した物流よりも、売り上げが2倍になり出荷コストもおよそ10パーセント削減とうれしい仕組みです。しかも新鮮!
新鮮なまま売り場へ…「野菜が客」
午前10時前、やさいバスが松浦さんの農園を後にしてまず向かったバス停は、車で15分ほどの隣町の郵便局です。
この郵便局では、地元の野菜を地域の人に買ってもらおうと、郵便局の一角に野菜販売コーナーが設けられています。
終点は札幌市内の百貨店。
松浦さんの野菜に加えて江別市の農家からバスで運んだ水菜やレタスなどがその日のうちに地下食品売り場に並びます。
フレッシュワン札幌店栗原智一店長
デパ地下フレッシュワン札幌店栗原智一店長「(市場流通は)早くても1、2日、長ければ3,4日とあるので、やさバスはタイムリーに商品が届き鮮度をウリにできる」
物流コストの低減で「生産者と消費者のミスマッチの解決を」
静岡県で2017年に運用が始まったこの物流システムを考案したのはこちらの女性。「やさいバス」社長の加藤百合子さんです。
東京大学農学部を卒業、環境問題と食糧難に関心があったと言いますが「農家が思った値段で販売されないという課題を農家からいただいた。
やさいバス 加藤百合子社長
購買者もおいしい農産物が欲しいんだけども物流コストが高すぎて買い続けられないということでミスマッチがあり、そこを解決したいと立ち上げた」と語ります。
大手飲料会社とコラボ
現在、道内のやさいバスは石狩・江別地区からと、恵庭・千歳地区から大消費地の札幌を結ぶ2ルート。
大手飲料会社が事務局を担い、その関連会社が運送を行います。
■北海道コカ・コーラボトリング株式会社 三浦世子さん
「当社の取引先が道内にくまなくいるので、やさいバスに役立にたてるのではないかと思いました」
「やさいバス」で拡がる販路…そして「野菜ロス」の低減
松浦農園 松浦勇さん「とうもろこしで10万本ぐらいは作っているんですけど、3割ぐらいは処分していると思います」「無駄な野菜を減らせば利益も増える全部売れれば一番いいですよね」
日本酒などおよそ70種類のお酒がズラリと並ぶ中、店の一角に「やさいバス」で届けられた野菜が販売されています。
カネキ小飼商店 小飼英祐代表「野菜とかかっていただく方が増えるということは、お年寄りや女性も入りやすくなったのではないかと思います」
野菜ソムリエの資格を持つ店主の奥さんは、これらの野菜を使った料理のレシピを日々SNSで発信しています。
奥さん「お酒は単体で飲むものでないと思っているので食と合わせてご提案を出来るような形にしたい」
少量ながらも小回りの利いた配送システムで廃棄される野菜を減らし農家の収入をアップ。新たな物流革命を担う「やさいバス」。
今後はルートと利用者の更なる拡大を目指します。
更なる拡大を目指す「やさいバス」
※HTBイチオシ!!で2022年6月22日に放送
https://www.youtube.com/watch?v=XlqcFm3cAWQ&t=309s
HTBは今年、「サステナ宣言」をしています。
SDGsの17ある目標のうち今回お伝えするのは、8の「働きがいも経済成長も」、15の「陸の豊さを守ろう」に当てはまる取り組みです。