北海道のお盆の行事と言えば、何を思い浮かべますか? 57歳、さっぽろ単身日記

お盆の行事と言えば、何を思い浮かべますか?

京都の五山の送り火でしょうか。

長く関西に赴任していたので、何度か見に行ったことがあります。

8月16日午後8時。まず東の大文字に点灯されます。小さな火がしだいに大きくなり、やがて炎と煙に包まれた幻想的な光景が広がります。

ただ眺めているだけで、亡き家族や友人らさまざまな人のことが頭をよぎる、とても不思議な時間でした。

ところで、私はずっと五山の送り火のことを「大文字焼き」と言っていましたが、これはNGワードなんです。いけずな京都人の前でその言葉を使うと「へえ、そないな菓子がおますの? そら食うてみたいわ」と言われるから要注意。私は、たまたま聴いた浜村淳さんのラジオで教わったのでセーフでした。

一昨年は、初めて長崎の精霊流しを見ました。

8月15日の夜、初盆を迎えた家族が故人の霊を載せた精霊船を運ぶ行事です。

まず驚いたのは、グレープのあの名曲とのギャップ。

哀愁漂うバイオリンの旋律からは、小さな船を静かに川や海に流すといった光景を想像するかも知れませんが、実際には鼓膜が破れるかと思うほどの爆竹の破裂音のなかで行われる、ものすごく賑やかな行事でした。耳をつんざく喧騒がかえって心の中の静けさを際立たせているのかも知れません。

ちなみに、朝日新聞「be」の企画「今こそ!聴きたい」読者ランキングのさだまさし編では、なんとグレープ時代の「精霊流し」が「秋桜」(2位)や「関白宣言」(3位)、道民が愛する「北の国から」(6位)を押しのけて1位でした。自分の中では「案山子」(5位)でしたが。

ところで、札幌のお盆の行事って何だろう。

長く札幌で暮らしている同僚に聞いてみました。

う~ん、としばらく考えたあと、

「盆踊り、ですかね」

盆踊りか……

聞くと、毎年お盆の時期に大通公園で大規模な盆踊り大会が開催されているとか。

ところが、残念ながら今年は中止。去年はオンライン開催(盆踊りのオンラインって…)、一昨年もコロナで中止だったので、リアル開催は3年以上もやってないことに。これだともう人々の記憶から消えてしまうんじゃないか、心配です。

3年前に開催された大通公園の盆踊り大会がユーチューブで公開されていたので、のぞいてみました。

大きなやぐらを囲むように人々が輪になって踊っています。

みんな、楽しそうですね。

スピーカーをオンにした瞬間、流れてきた唄声にハッとしてしまいました。

「エンヤーコラヤッ、ドッコイジャンジャンコーラヤッ」

これって、「8時だョ!全員集合」ですよね。

そっか、あの曲はもともと「北海盆唄」だったんだ。

土曜日の夜8時、家族で欠かさず見ていたドリフの番組。そのオープニングで、いかりや長介が「さぁ元気よく、いってみよう!」とかけ声をかけて始まる、あの曲です。

テレビの前で振り付けのまねをしていたぐらいですから(もちろんドリフと本家とではぜんぜん違うと思いますが…)、これはぜひ参加したかった。

諦めきれなくなった私は、札幌以外でもやっていないか探しました。

すると、なんと三笠市で3年ぶりに「北海盆踊り」が復活するというニュースを発見。

三笠市といえば、北海盆唄の発祥である炭鉱があったところ。つまり、北海盆唄の発祥の地なのです。

北海盆唄は、もともと卑猥な歌詞の炭鉱節だったようですが、戦後に作り直され、三橋美智也がレコード化して大ヒットしたとのこと。

「8時だョ!」のオープニング曲はそのヒット曲の替え歌で、タイトルは「チョットだけョ!全員集合」。エッチな要素はカトちゃんのギャグに引き継がれたということでしょうか。

三笠市の盆踊り大会には、北海盆唄を全国に広めたとしてドリフの高木ブーさんが招待されたこともあったそうです。加藤茶でも志村けんでもなく高木ブーというのが微妙ですが。

いやあ、ますます興味がわいてきました。

これはもう行くしかないでしょう。

っていうか、元気よく、いってみよう!

といきたかったのですが、仕事の都合と、このところのコロナの急拡大もあって断念。

代わりに、というもの変ですが、レンタルビデオ店で「8時だョ!全員集合」のDVDを借りてきました。

「エンヤーコラヤ」のオープニングから、爆笑コント、少年少女合唱隊、ヒゲダンス、「はぁビバノンノン」のエンディング……

加藤茶に「宿題やれよ」と言われて、「やべっ」と我に返った小学生の自分に引き戻されてしまいました。

あっという間の60分。

当時の私にとって、土曜夜8時は家族3人で笑いながら過ごした至福の時間でした。

染色職人でふだんは寡黙な父が、荒井注のギャグ「ディス イズ ア ペン」の意味を得意げに話してくれたっけ。

その父が他界してからもう7年か。

なぜか涙が止まらなくなってしまった。

おやじが一人、ドリフを見ながら泣いているとは……

ダメだこりゃ

1

この記事を書いたのは

山崎 靖

元朝日新聞記者、キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、温泉学会員、温泉ソムリエ

昭和40年生まれ
新潟県十日町市出身


コラム「新聞の片隅に」
https://www.asahi-afc.jp/features/index/shimbun

合わせて読みたい