『再建しなくても再現はできる』装着型人工乳房という選択肢 両側乳がんになりました160

次の誰かのために・・・

乳がん患者さんのアピアランス・ケアに注目が集まっています。

乳房再建したかった私はいわゆるアラガン・ショックで手術が取りやめになりました。それ以降はコロナ禍ということもあり、なかなかエキスパンダー→再建と2回の休養に踏み切れず、まる3年がたっています。

今回お話しするのは、手術の必要がない、『人工乳房』のお話しです。

どんなものなのか?新潟にあるレリエンスメディケアの社長・小林勝広さんに伺いました。

『肌の色にあわせた人工乳房』

レリエンスメディケアが手掛けているのは皮膚の上に着けるシリコン製の人工乳房です。色や形、サイズが決まっている既製品に肌の色をあわせるセミオーダー、色も形もすべて自分にあわせることができるフルオーダーの3種類を展開しています。

今回、お話を伺うことになり、お送りいただいたのは『セミオーダー』。色をつけていない人工乳房がご自宅に配送されます。そのサンプルを身につけて写真を撮ってもらうとその方に合わせた肌の色を再現して送ってもらえる、というものです。

その肌色、血管、ほくろ、肌の透け具合など非常にリアルなことに驚きました。高性能の色彩分析ソフトを導入し、職人の方のチカラも借りて実現に至ったそうです。

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(着色の様子 レリエンスメディケア提供)

小林さん『人工乳房を扱う会社はほとんどが対面だと思いますが、非対面販売はコロナ前から取り組んでいました。JR新潟駅にあるサロンに来店していただき、販売していましたが当時から9割方、県外のお客様。新幹線でいらっしゃる方もいました。でもそのときから、中には来られない方もいるだろうと。ご年配だと長旅も厳しいのではと考え、スマホで画像をとってもらってメールやラインで送ってもらい、着色できるのではとすすめていました。』

コロナ禍で経営厳しく、非対面を本格化

新型コロナウイルスの感染拡大で来店をためらう声が多く寄せられたことで非対面での販売に舵を切りました。20年10月にWEBサイトで既製品の販売を開始。準備を進めていた高性能の色彩分析ソフトを本格的に導入。

スマホのカメラで撮影した画像でも肌の色を再現できるようになり、セミオーダー品もネット販売が可能になりました。お胸を他の方に見せることに抵抗のある方もいらっしゃると思います。非対面はメリットが大きいといえます。

人工乳房の取り扱いを始めたきっかけ

小林さんはかつらメーカーの研究開発がキャリアのスタート。長く医療用かつらの製造にも携わっていました。

小林さん『妹が小児科の看護師でした。小児がんなどの子どもさんのかつらが大手のものだと高額。安くならないだろうかと言われていました。いずれは独立したいと考えていたので、当時の上司と起業。故郷の新潟に戻って医療用のかつらの会社を立ち上げました。

その後、県内のがんセンターなどでウイッグの相談会をやっていたのですが、そのときに乳腺外科の師長さんから人工乳房は作れないのか、と言われたのです。車を買えるくらいの値段になってしまうので、みなさん苦労している、と。』

乳房を切除したあと、身体の左右のバランスが悪くなるとよく言われます。

小林さん『左右のバランスが崩れて、自転車も難しい、フラダンスも踊れない、など直に声を伺いました。』

そこで、かつらのベースに使うシリコンの知識などをもとに何かできるのではと思案。フルオーダーの値段が高いのであれば、標準規格のものを作って、ある程度値段を下げられればと考えたそうです。

接着剤をつけて装着するものが主流でしたが、いわゆる”ヌーブラ”のように接着剤なしだといいという声から開発を進めたそうです。装着タイプの人工乳房として、20141月から販売を開始。当初は、普段使いを想定して、きれいなシルエットが出るようにと、複数のシリコンを配合して固めのもので作りました。しかし、いざ、販売してみると温泉で使いたいという声が多く、半数以上が温泉で使いたいというニーズだったことに驚いたそうです。

小林さん『つけたときにハリがでるようにしたのでお風呂に入るとのではイメージが違う。温泉用に使ったときにきれいに見える開発をしなくてはいけないと、一から開発をしなおしました。なおかつ、触ったときに固いと違和感があるのでやわらかくなるようにシリコンの配合比を変えました。』

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(セミオーダー例 レリエンスメディケア提供)

試行錯誤の上、今の『下垂になりやすいようなカタチ』になったそうですが、もうちょっとサイズ小さいものはないのか、逆に横幅がほしいという声も寄せられているので追加していきたいと話しています。

また、温泉で入る時ははずれてしまいやすいので、購入した方にはシリコンを液状にしたものを付属。ふちまわりだけ液体をぬって、5分くらい乾かしてからつけるとちょうどよい塩梅でお風呂に入れるそうです。

レリエンスメディカルの人工乳房は既製品で165千~187千円(税込)、色付けができる、セミオーダーは297千円から33万円(税込)です。(831日までは249700円から279400円)

もっと人工乳房という選択肢を知ってほしい

小林勝広さん『治療が終わって、社会復帰される。以前と同じように職場復帰される方もいる。以前のような生活を送るうえでの選択肢としてサポートができればと思うのです。インプラントなどでの乳房再建もあるけれど、この人工乳房のように貼り付けるものもあれば安心できるという人もいらっしゃるのではないでしょうか。』

やはり、乳房再建することに悩み、躊躇される方もいると思います。

『乳がんと診断されてから、あれもこれも決めなくてはいけない。再建をゆっくり考えて、その間だけでも補える商品でもある』と小林さんは話します。

「再建ではないが、再現はできる。」

注文の7~8割がこの着色するセミオーダー品だといいます。温泉なども人の目を気遣わず、これまで通り、気兼ねなく入れるように、日常を少しでも前向きなものにしたい。

その手助けになることが小林さんの願いです。

※がん患者さん向けのアピアランスケアに関しては自治体によって補助する動きが高まっています。お住まいの自治体に一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。

レリエンスメディケア

https://medibreast.com/

問い合わせ)025-278-9123

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この記事を書いたのは

阿久津友紀

乳がん患者さんが治療中に被災したら? 『防災の心がまえ』をもとに『女性の病と防災』を考える おっぱい2つとってみた作者とHTB森アナウンサーが本音トーク 
https://youtu.be/AO8Xzebt0Ys

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「LINE特集 「失われる自分らしさ」。乳がんになった私たちの3年間。例え、心が折れそうでも…」
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ピンクリボントーク 患者と家族と社会 ~生きてくのに必要なコト~
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第4弾の”がん患者さんとココロ” 北海道の斗南病院の精神科長で登録精神腫瘍医の上村先生に伺いました。アーカイブは
https://youtu.be/D-j4RrGSgkw

これまでの動画は・・・
【乳がん】おっぱい2つとってみた

HTBノンフィクション おっぱい2つとってみた
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https://sciencefestival.jp/event/breast-cancer/

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