侵攻から半年【ウクライナ避難民】から考える「難民とニッポン」 | 北海道ニュース24weekendHTB 北海道テレビ放送報道部が送る生配信
2022.09.05
HTB報道部が毎週金曜日にYouTubeで生配信している報道番組「北海道ニュース24weekend」。
9月2日の配信のテーマは「ニッポンの難民問題」。ロシアによる侵攻で、ウクライナを逃れ北海道へと避難してきた男性を取材した報道部・井元小雪ディレクターとフリージャーナリストの構二葵さんを迎え、依田英将キャスターと共に普段は「他人事」になりがちな難民についてイチから考えていきました
ウクライナ避難民を取材した井元小雪ディレクター、HTB「イチオシ‼」依田英将キャスターと「難民問題」を考える。
「2度の戦禍」に巻き込まれ…戦争に翻弄され続けた日本人
ことし3月、ウクライナから旭川市へと避難してきた降籏英捷(ふりはた・ひでかつ)さん78歳。
長野県出身で戦前、家族とともに樺太(現在のサハリン)へと渡った。そのまま終戦を樺太で迎え、事情があり日本に帰国できないまま、50年近くウクライナで暮らしていた。そんな彼は再び、戦争に翻弄されることに。ことし2月、ロシアがウクライナへの侵攻を始める。娘とともにウクライナを脱出した降旗さんが選んだのは「日本への避難」だった。実は、兄と妹がすでに旭川に永住帰国をしていたため70年以上の時を経て故郷・日本へと戻ることを決意した。
井元ディレクターは降旗さんの避難生活や支援の取材を通して自治体による対応の違い、さらにウクライナ侵攻以前の内政不安や紛争などで日本へ避難してきた人たちとの待遇格差なども浮かび上がってきたと話す。
知っていました?「難民」と「避難民」の違い
降旗さんのように今回のロシアによる侵攻で日本へ逃れてきた人たちは「避難民」と呼ばれ、いわゆる「難民」とは立場が異なる。
そもそも難民には国際的な条約などに明記された定義がある。それが「人種、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会集団に属するという理由で、自国にいると迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々」というものだ。
しかし、避難民には明確な定義はなく、その時々で対応が異なる。例えば、ウクライナからの避難民には政府専用機を含め、日本への退避に際して航空機が手配されたほか、身元保証人がなくともビザが発給された。一方で、例えば2021年のタリバンによる制圧によりアフガニスタンを逃れてきた人たちに対してはビザの発給に身元保証人を求めるなど対応が割れているのが現状だ。
②ウクライナからの「避難民」といわゆる「難民」ではそもそも定義が異なる。
ウクライナ避難民は、就労も可能な1年間の特定活動ビザに切り替えることができる。
井元ディレクターの取材によると「本国情勢が改善されない限りは更新を受け付ける」ということだが、そのほかの詳細な支援などについて出入国在留管理庁にカメラの前でのインタビュー取材を申し込んだところ「ネガティブな内容にとらえられかねない」との理由で断られたという。
これについて構さんは、「入管側の考える正当な言い分をきちんと答えればいいと思うが、それができないのは自分たちの政策について自分自身がネガティブに捉え批判されると考えているからではないかと感じざるを得ない」と述べた。
フリージャーナリスト構二葵さん。早稲田大学大学院でジャーナリズムを研究する傍ら、難民への面会を重ねるなどの取材を続ける。
驚くほど低い日本の難民認定率
条約で定義が規定されているからと言って、日本が難民を積極的に受け入れているかというと決してそうではない。
英国やカナダが6割以上、米国やドイツも3割前後を認定しているのに対し日本の認定率はわずか0.7%。諸外国と比べ異常ともいえるこの低さの背景について構さんは、難民条約に規定された「迫害のおそれがある」という部分の解釈の違いにあると指摘する。構さんの取材によると諸外国と異なり日本はこの「おそれ」の部分を非常に狭く厳格に解釈していて、本当に迫害されているのかどうかの証拠を求めるという。
ただ、難民申請者からは「証拠なんか持ってこられるわけがなく、絶対に認められない」と嘆く声もあがっていて実態にそぐわないのが現状だと強調した。
日本の難民認定率は諸外国と比べ圧倒的に低い。
過酷な仮放免生活の実態
難民申請者も含め在留許可がない人は入管の施設に収容されるが、人道上の配慮から施設の外に出て暮らすことができる制度がある。それを仮放免といい健康上の理由で治療が必要な場合や、係争中ですぐに送還の見込みが立たない場合などに認められる。ただ、外には出られるものの在留資格は与えられていないので働くことはできない。さらに、健康保険にも入れないため医療費の負担が多く病気の治療を我慢している人もいる。そして事前申請なしに居住地がある都道府県の外には出られないなどといった多くの制限がある。
「仮放免」制度の下では様々な制限が課される。
こうした条件のもとでの暮らしについて構さんは「例えば移動の申請なども必ず通るわけではなく、仮放免の子どもが部活の試合で県外に行くなど当たり前のことができない現状がある」と解説する。ほかにも、収容所生活について「地獄」と語るイラン人仮放免者や、うつ病と診断されたスリランカ人仮放免者など、取材を通して見えた過酷な実態を紹介した。
仮放免生活を送るイラン人・バビーさんへの取材」(構さんのYouTubeより)
仮放免生活を送るスリランカ人・ジャヤンタさんへの取材」(構さんのYouTubeより)
まず「知る」ことから…私たちにできることは
難民認定率の低さなどもあり、私たちの普段の生活のなかで「難民」を意識することはほとんどない。だが、構さんはまず「知る」というところから始めてほしいと語る。この配信で初めて難民や仮放免の問題を知った人も多いだろうとしたうえで、こうしたニュースを知ったらぜひ周囲の人にシェアをしてほしいと呼びかけた。さらに、入管の面会ボランティアの人たちなども各地域にいることから、そうした団体を通して収容者の話を聞きに行くことで、彼らも「忘れられていない」という安心感を得られると強調。日本ではなかなか馴染みの薄い難民の問題だが、一歩一歩アクションを起こしてほしいと訴えかけた。
2022年9月2日配信の「北海道ニュース24weekend」