次の誰かのために・・・
絵本コンシェルジュの佐賀のり子さん(学校法人北邦学園の理事長)とお話しした江別蔦屋書店でのトークイベントにはたくさんの方にご来場いただきました。10月に発売した”おっぱい2つとってみた がんと生きる、働く、伝える”についてお話ししました。企画運営してくださった、江別蔦屋書店のみなさまにまず御礼いたします。
私自身は3年前に乳がんに罹患をしました。その前20年ほど前から若年性乳がんの患者さんの取材をきっかけにずっとピンクリボン運動をしておりまして早期発見を訴えていた私も乳がんになってしまうんだということで、なった瞬間は非常に驚きました。しかも両側乳がんという非常に珍しいものだったということもあるのでかなり立ち直るのに時間がかかりました。
でもこれまでであった患者さんだったり 出会ってきた患者さんを見ていて、私がここで隠れてしまったら皆さんを隠してしまうことになってしまうんじゃないかと思いました。そこで、自らをスマートフォンで自分自身を被写体にすることでドキュメンタリー番組を制作、8か月後に放送させていただきました。
佐賀「どうしてそこまでされたのですか?」
阿久津「あまりり患してからのドキュメンタリーや参考になるものがなかったんです。いろんな方から質問をお受けすることが多かったこともきっかけです。やっぱり医療情報って玉石混交なんですよ。なので正しい情報を正しい場所に置いておかなきゃいけないなということを非常に放送局員としても感じていました。WebメディアのSODANEの立ち上げがちょうどその私のり患と重なったこともありまして、ドキュメンタリーを作っただけで終わりにできなくなりました。SODANEの方で生活だったりあとは知識だったり、専門家の方々のインタビューだったりというのを積み重ねながら3年。それをまとめたものが今回本になった『おっぱい2つとってみた がんと生きる、働く、伝える』という本になります。amzn.to/3rbvkyS」
佐賀「乳がんが今9人に1人ということをお聞きしたんですけれども私最初、阿久津さんの番組を拝見しまして知った時は11人に1人だったんですよね。それが
もうさらにこんな風に増えたっていうのが驚きだったんですけれども。」https://www.hod.htb.co.jp/pg_nf/pg_id_nf006
阿久津「やはり増える傾向にはあるのかなというふうに思っています。日本で非常に検診率が低いんです。欧米は7割8割の方が検診にいっているんですけれども日本ってまだ4割ほどで5割が目標なんですけども、それに遠く届かない。実は北海道って下から数えた方が早くって30%台ぐらいの自治体が非常に多い。検診率が8割の国で8人に1人、7人に1人が乳がんということは、日本でも7人に1人、8人に1人という数字になるのはもう時間の問題なのではないかなと私は思っています。正しい検診を受けて、見つけるべき方を早く見つけ、死亡率を下げていく取り組みな局面なのです。」
乳がんの罹患率(2019)
阿久津『私46歳で乳がんになりまして最初のヤマ、一番高いところなんです。』
佐賀『急激に上がってますね』
阿久津『そしてもう一つの上がるところが65歳から74歳のとこで上がっていくんですが、前はM字型になっていて一度50代で下がってたんですけど今もうだんだんこれがなだらかになってきているという。他のがんに比べるとやはり若く罹患する可能性が高いということで、今、日本の検診では40歳以上 2年に1回の
マンモグラフィーということなんですけれどもそれ以下の方も当然いらっしゃるということを考えるとご自身のお胸にと関心を持っていただくということが非常に大事かなというふうに思います。』
佐賀「北海道がすごく検診率が低いとおっしゃってましたけどそれはどういった理由でなんでしょうか」
阿久津「そうですね、札幌などだとクリニックの数も病院の数もあるんですよね。ですので比較的検診の機会があったりすると思うんですけれども、江別の方でも病院はいくつかありますけれども、マンモグラフィー車が年に何回か来てその日じゃないと受けられないという自治体がやっぱり北海道ものすごく多いんです。」
※江別市:レディース健診制度があって、札幌の対がん協会に向かってバスで送迎して受診するというシステム。事前に送迎予約が必須。
阿久津「結局毎日行けるチャンスがあればいけるのかもしれないんですけれどもやはり皆さん家事で忙しい、お仕事って忙しいってなると限定された日付にきちんと自分のご都合を合わせていくっていうのってものすごく大変なんじゃないですか。」
佐賀「なんか用事ある時に限って子供熱出したりするんです。本当にそうなんです。」
阿久津「非常に進んでいる自治体は出向くんです。集まっているところに向かってマンモグラフィー車が出向くことで検診率を上げている自治体もあるんですよね。」
佐賀「格差みたいなものがまだある程度あるんですね。」
いまだ、検診ではなく自分で見つける人が多い、という現実。
阿久津「乳がんと診断される方のうち、検診で見つかるよりもやはり検診率が低いこともあってご自身で見つける方の方が多い実情があります。検診で自覚なしだと小さく見つかっている方がすごい多いんですよね。一方で自己発見した方って2cm以上で見つかってる方が多いという結果に。2cm以上ってステージ2と少しちょっとランクが上がってしまうので、その後の治療も多くなる。正直なところ、ご自身で見つけるのってそんなに小さくは見つけられないんですよ。やっぱりどう考えても。なのでやはり健診に行っていただいてより小さく見つけていただくということが大事なのかなっていう気がします。」
佐賀「触って自分で確かめる以外に腫瘍ができてしまっていても体調とかにはそんなに変化がないからわからないということでしょうか。」
阿久津「私自身がそうですけど全く具合が悪くなくて、健康そのものでご飯食べれてまして。むしろ乳がんですって診断された次の日ぐらいからご飯が食べれなくなったのでどちらかというと多分自覚症状がほとんどない方の方が多いんじゃないのかなーっていう気がします。だからなかなか気づけないっていうことがあるんですね。自分でチェックするっていうのもすごく大切です。」
乳がんの高リスク
阿久津「私もそうですが出産経験がなかったり、あとは閉経後の肥満だったり、これも私もそうなんですけど乳腺疾患に。私も27歳ぐらいのところから乳腺症と言われていて病院に通っていたんです。私も祖母も母も乳がんなんですけれども、そういった家族にあるという方はやはり高リスクなので自分自身でなるかもしれないと備えた方がいい。でもずっと思い続けるとどんどんやっぱり辛くなってくるのであまりやらない方がいいのかもしれませんけれども、2人に1人ががんになる時代、かつ9人に1人がっていうことになるといつ自分がなってもいいようにっていう風に思って、知識とやはりリスクが高いかもしれないよねって思って暮らすっていうことも大事なのかなと思います。」
中間期乳がんだった
佐賀「阿久津さんはずっとこの取材、乳がんに関する取材を続けていてそしてかなり知識もお持ちの方だったと思うんですけども、それでもやはりかなりショックが受けられたと思うんですが先ほどもちょっとおっしゃっていらっしゃいましたけれどもその時やはりどんな風に感じられたんでしょうか。』
阿久津「健康診断でわかったんですけども、来ちゃったということが一番大きくて 会社の健康診断に行った時に病院の先生にこれ検診行った?って聞かれて2年前にマンモグラフィも受けてますと『そうか』って言われて。去年はでも2年に一回だから、受けていない、『そうだよね』と言われる・・・本当はもっと早く見つけたかったっていうところも先生の中にはあったのかもしれないんですけれども。
今回はもうお願いだから早く病院に行って確定を受けてほしいと左はほぼほぼ間違いないとその場で言われました。ただ右はどっちだかわからないから、『きちんと診察に行って教えてもらってくださいね』って言われたので1週間後に別のクリニックの予約を取りました。細胞診ってちょっと針をさして見つけるんですけども、細胞診は針が細いので麻酔はいらず、体の負担は少ないものの、これだとちょっと確定が若干難しいものがある。もう一つが針生検と言って局所麻酔をしながらちょっと取って組織を取って本当にがんかどうかを判断するっていうものがあります。私、左は組織診ですぐわかったんですけど右は細胞診しかしなかったら判断がつかないって言われて、もう1回検査しなおしたりしていまして、そういったことでがんと診断された後も、間違いなく、がんで、、となるまでは時間がかかっちゃう可能性があることもちょっと覚えておいていただけるといいのかなと思います。」
マンモグラフィでは見つかりづらい、『高濃度乳房』は5割いる。
阿久津「40歳以上がマンモグラフィー2年に1回ということなんですけれども、マンモグラフィの画像で真っ白く映ってしまう”高濃度乳房”の方にとってはマンモグラフィーだけではやはり見つかりづらいということがあります。ご自身の胸がどうなのかということもわかっていただきたいなと思います。また、高濃度乳房というだけで病気だと勘違いする方もいらっしゃるんです。でもそれは違うので、そういったことではなくて自分のお胸はたまたま高濃度乳房なので見つけづらいかもしれないからエコー検査も足してくださいというふうに・・・ちょっと追加で支払いすることになっちゃうかもしれませんけどもそういった風にご自身のリスクがどれぐらいあるのかっていうのを知っておいていただくということも大事かなというふうに思います。」
佐賀「その高濃度乳房っていうのはどういうことからわかるんですか?」
阿久津「もう多分マンモグラフィを撮ってみないとわからないと思います。撮った画像で診断のときに聞いてみてもいいと思います。
実は日本人だと5割ぐらいが今で最新のデータで高濃度乳房ではないかという結果でした。ですので見つかりづらい方も当然いらっしゃるのかなと。
アメリカなどは高濃度乳房ですっていうことをお伝えする州が半分ぐらいあるんです、だから、エコー検査を出しますねという風に。早く見つかるということを促すというようなことが今も世界の方では進んできているということです。」
佐賀「自分のことを知っておくの大事ですね。」
2021年11月の国立がん研究センターのデータでは、ステージ1(2センチ以下でリンパ節転移がない方)5年生存率は100%。これは去年までの同じデータだと90%台だったが今回2021年11月のところで100%に。
阿久津「それだけ医療が進んだり、早期発見されることがあって治療法が確立されてきたということもあって非常にやはり治療成果が上がっている方が多いのかなというふうに思います。ここから遡ること5年っていう風に考えていただくことになるので、今、10年生存率の方も98.3ですけども治療成績が進めばこれも多分上がっていくことになって10年も100%の時代が来るんじゃないかと期待が持てると思います。」
乳がんはひとつじゃない
どんどんタイプが分かれてきて、人によっての治療方法が違うのも覚えておきたい。例えば乳がんと診断された後も、術前に抗がん剤をする方、術前に分子標的薬というものをされる方術後にされる方、様々。その方に応じて乳房を残すのか全摘をするのか、再建を一緒にするのか、あとは放射線治療をするのかしないのかというのも分かれている。
阿久津「やっぱり皆さんおっしゃるのが乳がんってひとつじゃなかったんですねってことで。」
佐賀「それ、私は本読んで初めて知りました。」
阿久津「一つではなくてですね、本当に人によって全く治療方法が違うということも乳がんの特徴でもあるということ。ご自身のがんのタイプがどうなのかによって違うので患者さん同士もなかなか比べられないのです。」
阿久津「その方によって全く治療の速度も違うし薬の量も違うし、選び方も違うっていうことがあるので、そういったことで人と比べないっていうことも、非常に大事なのかなというふうに思います。」
佐賀「本当にこんなに種類があること全く私も知らなくて、乳がんというひとくくりにしてしまうのですが、その中でいろんなタイプの・・・なんて言えばいいんでしょうか。いろんなタイプの病なんていうのかな」
阿久津「そうですね、色んなタイプに合わせた治療法があるということですかね。これにさらに掛け算としてあの腫瘍の大きさが小さいままだったのか、大きくなってきたのか、あとはリンパ節とかに転移をしているのか、その他の臓器に転移をしているのかによっても全く治療の選択方法が違います。5つに分けましたけどここから先にまだどんどんどんどん細かく分かれていくっていう形なんですよ。なんか選択肢がすごくありすぎて大変そうっていうのも考えだけど、これは多分
ご自身の命に関わることなので多分知っておいた方がいいし知らないとジャッジもチョイスもできないと思います。今の乳がんに限らないと思いますし、他のがん種も含めて本当に知識がないと命を守れない。」
阿久津「本の中にも書いたんですけど、実は父が18歳の時にスキルス性胃がんで亡くなっておりまして、その時は告知をしていないんですね。父は胃潰瘍だと思って亡くなっているんです。胃潰瘍なのに手術もしないで、抗がん剤治療もそうとは言わず、点滴だけされて、髪の毛が抜けていく。なんでこれ以上何もしないんだっていうことを最後までずっとやっぱり言っていて・・・。それは私が18の頃なので30年以上前の話ですけれどもその時ってやはりまだがんであることをご本人に伝えないっていう時代でしたね」
佐賀「昔はしませんでしたよね」
阿久津「その後、16年後に母が乳がんになった時にはもう伝える時代にどんどん変わってきていて、今度その後、15年後に私がなった時には自分で治療を先生と相談をして選ぶ時代になってきているということで・・・」
佐賀「本当にここでもやっぱり情報とかね、大切だなっていうのを感じますね。どうやって選ぶかっていうとやっぱり勉強して情報を得て選ぶしかないですよね。」
阿久津「本当にあの患者さんってやらなきゃいけないことが多いなって思っていて。私自身が本当に乳がんになった瞬間に自分はすごく知識があったはずなんです
けども、途方に暮れて迷っちゃうわけですよ。涙も流しますし、あとはそれこそ、告知された日から夫と夜中に目が合う時には二人とも眠れなくってバタバタしててでふっと見ると目が合うんです。この人も眠れてなかった。さらに2人ともでGoogle先生でスマホのサーチを始めてしまうっていう悪循環になってました。
それほど家族をやっぱり悩ませるなと思いますし、もう私本当にやらかしでしかないんですけども、母は自分が乳がんだったってこともあるのでもしかすると自分が母が私が乳がんになったせいであなたも乳がんになったんじゃないかと自分を責めるんじゃないかと勝手に思い込みまして、母には言えないなと思って手術が終わってから2ヶ月後にようやく言えたっていう。手術の前には言えなかったんですね。
そのカメラも・・・隠しカメラも、隠しましてですね、さすがに母に言わなきゃいけないなと思って2回ぐらい実家に通ったわけです。でも言えなかった。その度にカメラを撤収して帰るという。」
佐賀「私はさっきの9人に1人という人数を聞いた時にちょっと違和感を感じたんですよね。そんなにたくさんいるのに私の周りにそういうお話そんなに聞いたことないっていうふうに思ったんですよ。きっと黙ってらっしゃるんだなと。言わない、言えないでいらっしゃる方たくさんいらっしゃるんだなってことすごく思ったんですよね。」
阿久津「本当にそうだなというふうに思います。今ではやはりTwitterとかがあるので、匿名で繋がりやすい環境になってつながられるようにはなってきたもののそういった方々のストーリーを見ているとやはり会社に言っていない方たくさんいらっしゃいますし、家族にも言えていないというと余計に心配かけちゃうからということもあったり。あとは言われのない差別を受ける可能性があるからやはり言えないとか。辞めなければいけない空気を出されてしまって、辞めなければいけなくなってしまうというような声もやはり聞きますのでやはりまだそう簡単には言えないという方が多いんじゃないのかな。
令和になりましたからそういう世の中は終わりにしたいなという思いがあります。」
がんとともに、、、。
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番組制作、今後のイベント、SODANEなどで活用させていただきます。
がんとともに生きる方、ご家族を持つ方、そうでなくても、もちろん、どんなことでも、構いません。
決して1人ではありません。