札幌の劇団「弦巻楽団」の演技講座「舞台に立つ」の稽古場に潜入!仕事や学業と両立してこれまで200人以上が参加、裏方作業も学べるその内容とは…?

札幌市の劇団「弦巻(つるまき)楽団」が、市民を対象に行っている演技講座「舞台に立つ」が10年目を迎えたということで、稽古場に潜入して参加者の方や演技コーチの井上嵩之さん、劇団代表で演出家・劇作家の弦巻啓太さんにお話を伺いました!

参加者の年代が非常に幅広く、本年度は、なんと最年少が高校生~上は50代までいらっしゃるとのこと。

弦巻楽団演技講座「舞台に立つ」とは

演技講座の1年間の集大成として劇場公演を行うプロジェクト。普段の仕事や学校、家庭と両立した創作を目指す。集団創作を大切にし、異なる背景をもつ参加者で話し合いながら名作戯曲に挑戦。

衣装や小道具、舞台美術、広報などのスタッフワークも自分達で取り組むため、公演制作そのものを学ぶことができる場としても評価されていて、これまでの参加者数は200名以上。

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年齢・職業・演劇経験の垣根を超えて作品創作に取り組み、本格的な演劇体験ができることに定評のある弦巻楽団演技講座。2022年度3学期の発表公演は、シェイクスピアの傑作喜劇『ヴェニスの商人』を上演するとのこと!

『ヴェニスの商人』とは

イタリアの都市・ヴェニスに住むバサーニオは、富豪の娘・ポーシャに求婚するための資金が欲しく、商人であるアントーニオに相談する。全財産を商船に乗せていたアントーニオは、やむを得ず、ユダヤ人の金貸し・シャイロックから借りることにする。日頃から差別的な扱いを受けていたシャイロックは、ここぞとばかりに「無利子で貸す代わりに、期限までに返済できない場合はアントーニオの体の肉1ポンドを差し出せ」と条件を出し、アントーニオはこれに応じる。

期限までに返せると確信していたアントーニオだったが、ある日、彼の商船が全て難破してしまったとの噂を聞く。いきり立ったシャイロックは、いよいよ彼の肉を求めて裁判を起こし——。

「世の人々はいつも虚飾に欺かれる。」

勧善懲悪の傑作喜劇として語られることの多い本作を、脚色をせずに再解釈。現代の日本に住むわたしたちに、シャイロックの叫びはどう映るのか。


このプロジェクトでは、いわゆるプロの小劇場演劇とは異なり、普段は学生や仕事をしている人々が、本業と両立させながら演劇に取り組み、シェイクスピアの作品を上演しているのです。

とっつきにくいイメージもあるかもしれない演劇が、なんだか少し身近に感じませんか・・?この「演技講座」は、いま記事を呼んでいるあなたにも、門戸が開かれているんです!そんな講座に参加している参加者の声を、前編としてお届けします。


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(左:来馬修平さん(24) 右:伊藤優希さん(25))

― お2人とも、お仕事や学業をしながら参加されているんですか?

伊藤 私は4月からまた仕事先が変わるんですが、フルタイムで働いています。

来馬 僕はいま社会人2年目で来年、3年目です。

― 演劇との両立はどうやってますか。

伊藤 学業やプライベートが大変だったりとか、そういった時はお休みをしています。今は時間の余裕があるなとか、気持ちに余裕あるなって時は参加してという形で両立しています。

来馬 自分も似てます。演技講座が資格試験と重なったときは、参加しない期間もありました。時間に少し余裕ができ、昨年からまた通い始めた感じです。僕の場合は、高校から演劇をしているので、ある程度学校と演劇を両立させるサイクルが自分の中で確立しているので、昔と変わっていないかもしれないです。

― このプロジェクトの印象は?

伊藤 演技講座に参加してからたくさんの知り合いができました。私は出身が市外で、札幌には昔の友達が全然いないので、すごい楽しいです。高校の部活だと同じ年代の人たちとしか演劇を作りませんが、講座には私よりも何個も歳下の子がいたりとか、何十個も上の人がいたりとかして、そういった方々とお話できるのがとにかく楽しいですね。

ー 会社とか職場以外で、なかなか年の離れ方と仲良く喋る機会ってないですよね。

伊藤 ないですね、気を遣わずに話せます。もちろん、年上の方には敬意を払うんですけど、職場とは違う感じで気楽に話せます。

― 最年少と最高齢の方は今回何歳?

伊藤 最年少が高校2年生で、一番上の方が50代です。

来馬 自分が最初に参加した時は、19歳でした。

― ずっと一緒にプロジェクトをやっている人からしたら、高校生だった子が「こんなに大きくなって!」みたいなのもあるわけですね。(中学3年生で初参加して、その後弦巻楽団の劇団員となった方もいるとか!)集団創作という形で、小道具や衣装などのスタッフワーク、チケットをどう売るかなど、チームを分けてみんなで取り組んでいると聞きました。大変な部分ややりがいは?

伊藤 私は、高校の部活の時も役者ばかりで、あまり裏方をやってこなかったんですが、小道具を集めたり、道具を作ったりするのって、こんなに面白いんだって思いました。

逆に一時期は、裏方専門でやってみたいなと思うほどでした。役者以外を経験することで、この道具って実はこんなに大変だったんだとか、服集めるのってこんなに大変だったんだって苦労も知れるので、以前より丁寧に扱うようになりましたね。

― お2人は、この今回の『ヴェニスの商人』、どういう思いで取り組まれてましたか?

伊藤 私は、自分の場面にしか集中できないというところが課題だったんですが、今回は、周りと一緒に作ろうという意識が芽生えて、自分のセリフをいっている間とかも、周りの人を巻き込んで場面を作っていくということを目標にして頑張っています。

来馬 『ヴェニスの商人』が、シェイクスピアの作品の中でも、人と人との繋がりが多い作品だなと思っていまして。この作品を通じて、友達役だったり恋人役だったりっていう人たちとコミュニケーション深めて、より役としてのリアルな演技を追求したいと思っています。

― 今回の演技コーチの井上嵩之さんの印象は?

来馬 僕は上演を拝見したり、同じ座組で一緒に演技をしたことがあるんですが、ユーモアがあるなかで、しっかりとした役を作って、作品の一部になっているところが本当にすごいなと思います。そういうところも含めて、とても勉強になっています。

伊藤 私は実は、今回初めてお会いしました。先日、井上さんから舞台上での歩き方について学んだんですが、驚きが本当に多くて。体の仕組みを知ることは演劇する上で大事だなと思いました。全く関係ないことに見えても、繋がっていることが他にもあるのかもしれないなと気づくことができました。

― 2人はお仕事や学業とも両立をする中で、大変なこともあったとかと思いますが、どう乗り越えましたか?

伊藤 前は週の半分くらい夜に稽古が入っている時もありまして、やっぱり仕事しながらだとしんどかったんですけど、毎回の稽古が濃密な内容なので、休んだら自分も大変なことになるし、せっかく受講料を払っているので、「1回でも多く行く方が得じゃん!」と自分を奮い立たせて頑張っていました。

来馬 僕は大学の時は恵庭から通っていました。22時終わりの時は急いで帰って、家につくのはなんとか日が変わる前みたいな感じの環境で。今思ったらよくやったなって思っています。僕が参加した当初は、札幌でバリバリ演劇やってる人たちの中で馴染めるか、かなり緊張しました。ただ、ここにいる人たちとの会話や稽古だったり、一緒の時間を共有して作品を作ることを通じて、緊張も自分のなかで乗り越えることができました。

― 最後に、2人のこの作品への思い。どういう風に見てもらいたいかを教えて下さい。

伊藤 今回のこの劇は、差別が結構出てくるんです。なので、最初読んだ時は意識的に、「(役として)あ、差別しなきゃ」と思っていたんですが、この話に出てくる人たちは、きっと差別しようと思ってしてないなと最近思い至りまして。その考え方が当たり前だから、そうしてるというか・・・
そこの差別していない意識で差別している感覚を、自分の中にどう取り入れるかというところは、今後の目標として取り組みたいところです。

来馬 『ヴェニスの商人』という作品は、僕はわかりやすいストーリーだと思っています。アントーニオとシャイロックの証文が果たしてどうなるのか。クライマックスの裁判のシーンは見どころです。誰かの陰謀によってどんどん人が死んでいくみたいなお話じゃないので、ストーリーとしては分かりやすい。普段は演劇を見ない僕の友達も、演劇に対して興味を深めるきっかけになったらいいなと思って取り組んでいます。


演劇と仕事・学業を両立して取り組んでいるお2人。非常に表情もいきいきとしていて、この演技講座に楽しんで取り組んでいることが伝わってきました。札幌にもこんな世界があるということを楽しそうに話してくれる様子が印象的でした。

後編では、演技コーチの井上嵩之さん、そしてこの演技講座を主催している劇団代表で演出家・劇作家の弦巻啓太さんのお話をお届けします!なぜこの演技講座に取り組み始めたのか、その思いに迫ります・・!後編もお楽しみに!

 

『ヴェニスの商人』

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公演概要

年齢・職業・演技経験の垣根を超えた、20名超の札幌市⺠によるシェイクスピアの傑作喜劇!現代の日本に住むわたしたちに、シャイロックの叫びはどう映るのか。

札幌を拠点に日本全国で上質な演劇作品を創造する一般社団法人劇団弦巻楽団は、主催事業・演技講座の成果発表公演「舞台に立つ」として、シェイクスピアの不朽の名作『ヴェニスの商人』を上演します。出演は、高校生から50代、演技初心者からベテラン俳優まで、さまざまな背景を持った演技講座受講生。 弦巻楽団演技講座は、いまだ続くコロナ禍において、普段の生活の一部に表現活動を取り入れることの価値を大切にしながら活動してまいりました。2022年4月から毎週稽古場に通い続けた講座生による、1年間の集大成です。

脚本 ウィリアム・シェイクスピア

翻訳 松岡和子

演出・指導 弦巻啓太

演技コーチ 井上嵩之(→GyozaNoKai→)

出演:

阿部藍子、岡崎友美(浦とうふ店)、伊藤優希、斉藤法華、髙野茜、高橋咲希、高橋友紀子、種村剛、長澤小春、中島彩友、 宮下諒平(北海学園大学演劇研究会)、水戸部佳奈(劇団ひまわり)、宮脇桜桃、吉井裕香、来馬修平

秋山航也、田村嘉規(演劇公社ライトマン)、温水元(満天飯店)

阿部邦彦、佐久間泉真、相馬日奈(以上、弦巻楽団)

日時:

2023年3月25日〜26日

25日(土)14:00/18:00

26日(日)13:00/17:00

※各開演時間。開場は開演の30分前。

会場:

扇谷記念スタジオ・シアターZOO

住所:札幌市中央区南11条西1丁目3-17 ファミール中島公園B1F

料金:

前売・予約ともに

一般 2,000円

高校生以下 1,000円

チケット購入・問合せなどの詳細はコチラ!

https://note.com/tsurumakigakudan/n/na3fff2aad586

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この記事を書いたのは

HTBスタッフS

HTBスタッフです。2019年1月に長年住んだ大阪から札幌へと移住してきました。
学生時代は演劇に熱中。今はサウナにも熱中。

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