シマエナガに会いたい!① 札幌で見るにはどうしたら… さっぽろ単身日記
2023.03.18
#北海道
初めて北海道に来て北海道に来たことを実感する瞬間の一つに、北海道にしかいない野生動物との出会いがある。
私も北海道に赴任して初めてエゾリス、エゾシカ、キタキツネの順に遭遇し、いずれも感動してしまった。
最初にエゾリスを見たのは北海道神宮。一瞬、ネコかウサギが横切ったのかと思った。立派な尻尾のせいか、意外と大きいというのが第一印象だった。
エゾシカは新千歳空港から支笏湖に向かう道路の道ばたにいた。わざわざ運転していたレンタカーを停めてスマホのカメラで何枚も撮った。
キタキツネとは知事公館で出くわした。こちらを警戒しながら歩き回る姿をスマホ片手に追いかけた。
ただ、北海道生活も2年ともなると、エゾリスやエゾシカ、キタキツネを見かけても、「ああ、いたね」という感じ。先日も支笏湖近くの路上で車の窓から身を乗り出している人がいて、「ああ、エゾシカね」と、つい心の中で道民マウントを取ってしまった。
そんな、にわか道民でも簡単に出会えない野生動物がいる。
シマフクロウとシマエナガだ。
道東に、運が良ければシマフクロウに出会えるという有名な温泉旅館がある。
ロビーに大きなガラス窓があり、近くの木の枝に魚を狙うシマフクロウがとまることがあるという。もしシマフクロウが現れたら館内放送してくれるというサービス付きだ。
北海道に赴任した年の秋、釧路に住む友人と2人でその宿に泊まった。
道内にわずか165羽しかいないと言われる幻の鳥に会えるかも知れない。そんな興奮でよく眠れず、夜中に何度も起きてガラス窓の前でしばらく待った。だが、このときは一度も現れてくれなかった。
そしてシマエナガである。
正直、北海道に来て初めて知った名前だった。
ここ1、2年で急速に人気が出た感じがする。
その可愛さは罪である。
10年ほど前、兵庫県の自宅で1羽の白文鳥を飼っていた。
名前は、ぴよちゃん。
ぴよちゃんは私の手のひらに乗るのが大好きだった。
小さな体を包み込むようにして軽く握ると、指と指の間からくちばしを使ってちょこんと顔を出す。
真っ白な羽毛にもっこりとしたピンクのくちばし、そしてつぶらな瞳。
思い出すだけで涙が出てしまう。
シマエナガの写真を見るたびに、なぜかぴよちゃんの記憶がよみがえってくる。
会いたい…
どこで会えるのだろうか。
「シマエナガ 札幌」で検索すると、円山公園、西岡公園、野幌森林公園、旭山記念公園の名前が出てきた。
なかでも旭山記念公園は「今週のシマエナガ」として毎週園内の観察情報を公開している。
おっ、結構出没しているではないか。
しかも、この冬の時期も定期的に「野鳥観察会」を開催している。
これだ。
強度近視の私は、あの小さなシマエナガを自力で探すなんてことは不可能だと分かっていた。誰かに見つけてもらい、あそこにいると教えてもらってようやく気付く。それしかない。野鳥観察会はまさにうってつけだ。
シマエナガがあのモフモフのカワイイ姿になるのは冬の間だけである。
「雪の妖精」とも言われる所以である。
気付いたらもう2月。時間がない。
急いで電話で申し込んだ。
2月の日曜日。
集合時間は午前8時。
地下鉄とバスを乗り継いで、旭山記念公園の駐車場に着いた。
明け方からしんしんと雪が降り続いている。
こんな雪の日も予定通りやるのだろうか。
不安を感じながら、林の中で踏み固められた細い雪の道を歩くと集合場所の「森の家」があった。
建物の中に入り、受付係の人に参加料の100円を手渡す。
「良かったらどうぞ」
差し出された双眼鏡を受け取った。
薪ストーブの周りにはすでに20人ほどが集まっていた。
大きな望遠レンズを備えたカメラをぶらさげている人、三脚にカメラを取り付けている人もいる。
さあ、シマエナガよ。いつでも出てこい。
そんな熱気が伝わってくる。
私も、さすがにスマホでは無理だろうと、この日のために奮発して小型のビデオカメラを買った。
シマエナガはとにかく小さくちょこまか動き回りそうなので、シャッターを切るのは素人では無理。でも動画だったら回しているうちに映り込んでくれるんじゃないか。
そんな思惑からだったが、シマエナガへの投資にしてはちょっと高かったかも。
ガイドをしてくれるのは、旭山記念公園のMさん。
前回の観察会ではシマエナガの姿が確認できたという。
ますます期待が高まる。
いよいよ、ぴよちゃんに会える。
気温はマイナス4度。
首から双眼鏡をぶら下げ、新品のビデオカメラを握りしめて林の中へと進んだ。
(続く)