千歳の路線バスが24時間のストライキ その背景には一体何が?従業員らの低賃金そして安全への疑惑

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千歳相互観光バス  江崎毅さん

「私たちが1年間交渉してきた結果がこのようになってしまって、本当に残念に思います。本当に申し訳ございません」

4月24日、待遇改善を要求する会社側との団体交渉が決裂。 

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生活にかかせない路線バスが「異例」の24時間ストライキを決行。市民の足を直撃しました。

「きのうストライキの決まったバス会社のバス停です。全線終日運休と書かれた貼り紙が貼られています」

「来て初めて知ったからびっくりした免許は返納した、きょうはタクシーで行く」

「病院とか買い物が陸の孤島になってしまう」


千歳市内で4つの路線を運行する「千歳相互観光バス」。朝6時台の始発から103便が運休し、2000人以上に影響が出ました。

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労働組合が指摘する数々の問題。このバス会社でいったい何があったのでしょうか?

「おはようございます」

千歳相互観光バス 江崎毅さん、56歳。この道25年のベテラン運転手です。早い時だと午前4時には家を出て、歩いて会社に向かいます。

「できることはなにかなと毎日思いながら通勤しています」

会社に着くとバスの点検をしてから千歳市内の路線を走ります。1日で100キロ以上も運転する江崎さんですが、実はもう1つ別の顔が。

江崎さんは千歳相互観光バスの労働組合のトップを務めています。4月24日この組合が千歳市内の4つの路線を運休するストライキに踏みきりました。

会社側との団体交渉で最大の焦点となったのは低賃金を改善するための賃上げ要求。会社側に一律5000円のベースアップと20万円の賞与を求めました。

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勤続25年の江崎さん、毎月の手取りは18万円を切ります。賞与は3年間で18万円、物価高に対する一時金などの手当てもありませんでした。追い打ちをかけるように会社側は退職金の減額を提示してきています。

「若い人たちは25年後の私をみて、この会社はダメなんだなと思って転職していった」


 
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労働や雇用の問題に詳しい専門家は…

「昭和40年代に輸送人員がピークを迎えて、その後は自家用車の普及に伴って乗合バスの利用が減っていった」

また、賃金上昇のグラフで比較すると全産業では年齢に従って賃金の上昇が見られますが、バス運転手の賃金は、年齢を重ねても伸びないことが分かります。

 
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2人の子どもを育ててきた江崎さん。給料が安いことで家族に迷惑をかけたことも多くあったと言います。

「本当は大学に行きたかったと子どもに言われた/私立だったら700万~800万とかかる、そんな余裕はなかった」
それでも「バスの運転手」という自分が好きな仕事を続けてこられたのは共働きの奥さんの献身的な支えがあったからです。

どんなに朝早い日でも25年間欠かさずお弁当を用意してくれています。

「一番本当に迷惑かけてると思ってます、それでも文句を言わないでやってくれてるんで、ありがたいと思っています」

千歳相互観光バスは1月から乗務員不足を理由におよそ30本もの減便を突如発表。1時間に2本だったバスが1本に減り、帰宅時間帯には多くの人がバスを待つことに。

減便することは従業員にも組合にも事前に知らされておらず、江崎さんですら、新聞の記事を見て知ったといいます。
会社側の従業員への不誠実な対応は労務管理でも。現在、労使紛争中のため去年3月に残業時間を制限する三六協定が失効しているにも関わらず、組合員は今も毎月10時間ほどの残業を続けています。

「組合側は残業させなくても仕事は回るのではないかと言っている/冬だとバスが遅延した場合には残業代を出すことすらしない」

千歳相互観光バスの労働組合の戦いを後押ししている札幌地域労組からも会社側の安全管理についての指摘が。

「組合が調査をすると検査をした事実がないのに紙だけ検査をしたということにしている」

組合側は 3か月ごとの法定点検で不正があったのではないかという疑惑があると指摘しています。

北海道運輸局は4月にバス会社への立ち入り監査を行いましたが、会社側はこの監査で不正は確認されなかったと主張しています。

組合側は先月、バス事業を監督する運輸局に不正整備の疑惑があるとして再監査を要請しました。これは異例の事です。

札幌地域労組 鈴木一さん

「知床遊覧船の去年の事故がありますが、いい加減な検査をして元をたどれば国交省の行政になるからそれと同じだと私は思う」

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今回の一連のストライキ 他のバス会社はどうみているのでしょうか?

時計台バス 南部常務

「会社にも影響があるし地域の皆さんの足に相当影響はあるかなと思うバスを一度動かせば45人の命を預かってますから、運転手の力量をしっかり把握しておくということがイチバン大切なことです」

そして10年以上大きな事故がないという時計台バスでは法定点検以外にも安全運行のために点検を行っているといいます。

「バスを一度動かせば45人の命を預かってますから、運転手の力量をしっかり把握しておくということが一番大切なことです」

二度目の団体交渉が行われました。交渉が決裂すれば組合側は48時間のストライキも予定されていました。

団交の結果。会社側は組合側の賃上げの要求を受け入れました江崎さんらにとって大きな前進でした、一方、安全管理の不正に関する指摘は認めず、交渉は一部妥結という形になりました。

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「安全をおろそかにする、ないがしろにするような人にはバス会社を経営する資格はない」

「私たちはお客様の安全を守るために今後も闘っていきたいと思っている/安全対策が1番、やっぱりそこはもう本当に譲れない部分なんです」

組合側は今後の団体交渉で「社長の解任」を求めていて、交渉が決裂すれば無期限のストライキも辞さないとしています。

今回の一連の問題についてどう考えているのかというHTBの質問に千歳相互観光バスの沼田聖社長はインタビューには答えず 次ぎのように回答しました

「賃金に関してやれることはやった。安全管理に関しては運輸局の監査次第で対応していきたい」

賃上げと安全運行を会社に要求するストライキから浮き彫りになった千歳相互観光バスが抱える問題。犠牲になったのは 普段の足として欠かせないバスの利用者である市民です…

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この記事を書いたのは

HTB北海道ニュース

北海道の「いま」をお伝えします。
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