札幌市手稲区に北海道立子ども総合医療・療育センター(愛称:コドモックル)があります。
コドモックルは道内で唯一、小児への高度医療を専門に提供する病院です。
2007年に開設し、保健・医療・福祉が連携して、出生前から医療や療育面で子どもたちの成長や発達を支援しています。医療部門にはNICU(新生児集中治療室)なども含め105床、療育部門には生活支援やリハビリなどのための110床があり、病気や障害と向き合う子どもたちを支えています。
長期の入院、眠れない母親
病気やケガによる突然の入院。子どもはもちろん、付き添う親にもストレスが重くのしかかります。心配と不安、慣れない場所での制限された生活…。
「入院中の子どもの家族の生活に関する実態調査」(聖路加国際大学小林教授、NPO法人キープ・ママ・スマイリング)によると、付き添いをするのは9割以上が母親で、付き添い中の体調不良として「食事バランスの乱れ」は8割以上、「睡眠不足」は9割以上が良好ではないと回答したという結果が明らかになりました。
通院・入院中の子どもを持つ親への支援も求められています。
ドナルド・マクドナルド・ハウス・さっぽろ
コドモックルには全道各地から病に悩む多くの子どもたちやその家族が治療を求めて訪れますが、遠方の場合、交通費や滞在費の負担も大きくなります。
そんな家族の支えにと運営されているのが、コドモックルに隣接する民間宿泊施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス・さっぽろ」です。
15年前に開設され、子どもに付き添う親や家族が1日1人1,000円で宿泊することができます。全10室あり、今年は11月までにおよそ400家族が利用しています。
「心の負担も和らいだ…」
ドナルド・マクドナルド・ハウス・さっぽろを利用したある母親は、スタッフの優しい気遣いに助けられたと、わが子の通院生活をふり返ります。
生まれてまもなく子どもに病気が発覚。治療のため入院を経て、退院後も雪が積もった冬道を3時間かけて運転し通院することに。2週間ごとの受診が2か月…3か月と続くにつれ体力的にも辛かった時、この施設ではあたたかいお弁当を用意してもらえたり、コーヒーを飲みながら子どもの病気についての不安な気持ちを聞いてもらったことも。金銭的な負担はもちろん、心の負担も和らいだと言います。
施設の運営はボランティアスタッフが担い、さっぽろのハウスに登録している165人のスタッフが24時間体制で親たちを支えています。
ドナルド・マクドナルド・ハウスは全国に12カ所あり、運営は公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパンや各ハウスへの寄付と募金で成り立っています。
入院中の子ども達に、楽しいひと時を
そんなドナルド・マクドナルド・ハウス さっぽろのチャリティーイベントが、コドモックル隣接の手稲養護学校体育館で行われました。
入院中の子ども達に絵本の読み聞かせを楽しんでもらえたらと、onちゃんと私たちHTBアナウンサーが訪問しました。
入院中の未就学児から高校生までおよそ50人が参加。体育館には元気な声が響いていました。車いすの子も、ストレッチャーで病棟から移動してきてくれた子もいます。
私たち「onちゃんおはなし隊」は絵本やオリジナルの紙芝居をもって各施設におはなしを届ける活動をしています。
今回は言葉だけでも描写のイメージが広がるような作品を選び、声の振動や音の響きでもおはなしを体で感じて楽しんでもらえるように心がけました。
読み聞かせをはじめると、ざわざわしていた館内がシーンとなり、みんなが集中しておはなしに耳を傾けてくれました。オリジナルの紙芝居は、BGMに合わせて体をゆらして楽しんでくれていました。最後に、一人ひとりonちゃんにハイタッチをして触れ合ってもらいました。「onちゃんフワフワだ~」とみんながニコッとする瞬間がたまらなく愛おしかったです。入院中の子ども達に一足早いクリスマスプレゼントになったでしょうか。
病気の子どもを支える家族へのサポートが社会課題
子どもの入院や通院のため、付き添う親の7割が退職、休職、時短勤務など就労状況の変更を余儀なくされていて、子どもの入院が家族に与える影響の大きさも指摘されています。
子どもの療養に対する職場の理解や、制度の整備、活用のしやすさも課題です。
社会全体で何ができるか、一緒に考えていく必要があると改めて感じました。