HTB開局55周年映画「奇跡の子」監督のこぼれ話【幕間のつぶやき④】『配給』ってなんですか?

HTB北海道テレビ放送開局55周年記念として制作された、映画『奇跡の子 夢野に舞う』。

この映画の監督である沼田博光が制作にあたっての裏話【幕間のつぶやき】をSodaneで綴ります。

今回はテレビ局員として初めて取り組んだ映画の「配給」についてのお話。

「配給」は未知の世界                           

1月5日から帯広に来ています。

十勝毎日新聞さんの取材を受けたり、ローカルFMに出演させていただき映画「奇跡の子 夢野に舞う」のPRをさせていただいたりしていますが、大きな目的のひとつがこのSSD。

7センチ足らずの記録メディアに映画本編のデータが入っています。

これを1月19日から上映予定のシネマ太陽帯広さんに直接届け、ダビングしてもらいます。

ダビングが終わったら回収するか、そのまま次の映画館に郵送してもらいます。

予告編や本編データを管理し、上映予定の映画館に納品するのも配給の大事な役割です。

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SSD

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シネマ太陽帯広前にて

ところでテレビ番組は放送日時や分数が決まってから制作が始まります。

放送日が決まっていないのに番組を作り始めることはありません。

一方、映画は作品作りが先行します。

完成しても黙っていれば誰にもその存在は知られず、上映されることもありません。「奇跡の子」は7年かけて撮影し、半年以上を製作に費やしてやっと出来上がりましたがホッとしたのも束の間、すぐに映画館で上映してもらうための「配給」業務が待っていました。

映画作りのノウハウも知らずに製作を始めましたが、次の「配給」はもっと未知の世界でした。

「製作」「映画館」「配給」の三位一体

製作会社(今回はHTB)は作品を完成させると映画館への交渉を始めます。

製作側と映画館の間を取り持つのが配給会社で、作品を仕入れて映画館に宣伝や営業を行う卸売りのような役割です。この3者が一体となって、映画はようやく観客に届きます。

製作会社はまず作品をセールスしてくれる配給会社を探しますが、観客の入りが見込めそうな作品でなければ、配給会社も引き受けてくれません。

実は配給会社を訪ねて初めて耳にしましたが、動物を扱う作品は配給が難しい場合があるのだとか。

「えっ?南極物語はヒットしましたよね?ハチ公物語だってハリウッドでリメイクされてますよね?」

「犬や猫はまだ良いのですが、鳥はねぇ・・・」

「主役は人です。鳥が主役ではないのですが…」

作品を見ていただく前から渋い対応が続きます。どうやら私たちの知らない映画業界のセオリーがあるようでした。

「製作」&「配給」も

最終的に東映エージエンシーの方々に「配給協力」の形で参加していただくことになり、配給は製作会社のHTBが担うことになりました。

まずは劇場に電話をして、映画を上映してほしいとお願いするところからスタートです。

「はい?HTB?どこですかそれは?なぜテレビ局が映画を?」

というリアクションもいただきながら映画の内容を説明するのですが、即OKなんてことはまずありません。この時、内定をいただいていたのは札幌のシアターキノ1館のみ(sodane前号)。映画は完成したものの配給や映画館が決まらずそのままお蔵入りになる作品もよくあるよ、なんて穏やかでないことを口にする人も。

「これはまずい!開局55周年記念映画がお蔵入りとなれば社内を歩けなくなる…」

東映エージエンシーの方々には「配給協力」以上の協力をいただき、様々なアドバイスや、かっこいいデザインのポスターやチラシも作ってもらいました。

ところが製作にほとんどの予算をつぎ込んできた私たちに、ポスターやチラシを十分に印刷する余力がありません。

誰にも知られず幕を閉じるのか…そんな考えが頭をかすめる私たちに救いの手が!

事前の試写会で作品を観ていただいた協賛社さんが、「これは多くの人に観てもらいましょう」とそれぞれPRに動いてくれました。

皆さんに支えられて

江別市の草野作工はチラシ1万枚、ポスター30枚を刷って、江別市と長沼町の中学校や大学に配布してくれました。

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江別第一中学校の校長先生と教頭先生

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酪農学園大学

北海道銀行は123店舗で待合ロビーにあるモニターに何と映画の予告を上映してくれています。

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提供:北海道銀行

日本航空は北海道内と東北を結ぶ路線を運航する北海道エアシステムの1,2月号の機内誌に映画を紹介する記事を載せてくれました。

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北海道エアシステムの機内誌

前売券を大量に購入してくれている協賛社さんもいます。ほんとうに多くの皆さんに協力いただいて、少しずつ映画の認知度が上がってきました。

お陰様で5日現在、道内9の映画館が上映を決めてくれています。道外では2月23日から東京・丸の内TOEIで上映されますが、そのほかの地域はこれから交渉を始めます。

本州ではなかなかハードルが高いですが、長沼町の農家の皆さんによる素晴らしい挑戦の物語を丁寧に丁寧に伝えていこうと思っています。

「私たちの町でも上映してほしい!」というリクエストがありましたら、交渉がぐんと進めやすくなりますのでぜひお寄せください。お待ちしております!

(監督の裏話はまだまだつづく…はず!)

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奇跡の子 夢野に舞う

公式ウェブサイト:https://www.htb.co.jp/kisekinoko

2024年1月20日(土)から札幌・シアターキノほか道内の映画館で上映 
*一部、シネマ太陽帯広/函館、T・ジョイ稚内で1月19日(金)に先行公開

2月23日(金・祝)から 東京・丸の内TOEIで上映

農家は鳥に手を焼いている。撒いた種はほじくるし、芽が出ればバリカンで刈ったように食べつくす。張ったばかりのビニールハウスにはフンをかけていく。

そんな農民たちが地元に鳥を呼ぶと言い出した。それも絶滅危惧種のタンチョウだ。

北海道の東部にごくわずかしか生息していない希少種が大都市・札幌の近郊にある農村に来るはずもない。

それでも14人の農民が集まり、タンチョウの棲み家づくりが始まった。

治水対策で人工的に作られた遊水地の中に、タンチョウが生息できる「湿地」が回復してくると、やってくるのは予期せぬ訪問者ばかり。大量の渡り鳥に獰猛な外来種、カメラを抱えた人間たち…。

次々と巻き起こるトラブル。果たしてタンチョウはやってくるのか。

ーースタッフーー

ナレーション 上白石萌音

監督:沼田博光 

統括プロデューサー:坂本英樹 

プロデューサー:四宮康雅 堀江克則 

撮影:小山康範 石田優行 

編集:上田佑樹 

音楽:中村幸代

音楽制作:中脇雅裕

宣伝プロデューサー:泉谷 裕 

製作・配給:北海道テレビ放送 

宣伝・配給協力:東映エージエンシー 

カラー / 5.1ch / 16:9 /1時間37分

令和5年度 文部科学省選定「少年向き」「青年向き」「成人向き」

環境省「推薦」

文化庁文化芸術振興費補助金 (映画創造活動支援事業) 

札幌市映像制作補助金 

 

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この記事を書いたのは

沼田博光

HTB 報道部デスク
環境問題や野生生物、アイヌ民族の先住権問題などをテーマにしたドキュメンタリーをてがけています。

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