札幌で満席状態が続くドキュメンタリー映画「奇跡の子」に専門家「野生生物との共生の一歩を踏み出したことは大きい」2月3日には釧路でもトークイベント実施へ
2024.01.31
HTB北海道テレビ放送開局55周年記念として製作された、映画『奇跡の子 夢野に舞う』。
1月30日現在、北海道内9か所の映画館で上映が続いていて、特に札幌では連日、満員状態が続いている。
普段ドキュメンタリー映画はあまり目にしないという客も訪れているこの作品。
専門家は、主人公となっている農家の活動について「世界でもあまり例を見ない、非常に大きな一歩」だと指摘している。
スタッフも「まさか」の事態
少し余裕を持たせ、上映1時間以上前に劇場に姿を見せたスタッフは耳を疑った。
「もう満席です」
「え?どういうことですか?特に行列ができているわけでもないのに…」
「いや、事前に配っている整理券ですでに満席になりました」
札幌シアターキノで上映されているHTB(北海道テレビ放送)初製作のドキュメンタリー映画「奇跡の子 夢野に舞う」。
ドキュメンタリー映画という点や鳥や動物を扱った点など、映画の集客としては「厳しい」と言われ、公開当初は2つある劇場のうちの小さいほうから始まったものの、満席の日が相次いだことから、大きい劇場のほうに移された初日だった。
満席となってから劇場を訪れた人々に沼田博光監督が入口前でお詫びを続ける。
満席となることは嬉しいが、その反面、せっかく来たのに入れない客がいる。中には遠くからわざわざ足を運んできた人やこの日のために家族の予定を変更してまで見に来てくれた人もいた。
「満席になってほしいと思っているけど、いざ実現しても素直に喜べないよね…」と監督はつぶやいた。
プロデューサーの私はHTBの公式SNSを管轄する編成部に連絡をし、緊急的に「すでに満席」であることをSNSで発信してもらうよう依頼。このあとの訪問客が徒労に終わらないよう対応したものの、やはり何人もの観客が入り口前の「本日は満席です」という知らせと沼田監督のお詫びを受けながら、家路につくことになった。
上映前 整理券を持つ観客の列
この日、満席が早まったのは上映後のゲストトークがあったことも要因だった。
ゲストは釧路の獣医師・齊藤慶輔氏。猛禽類医学研究の第一人者で野生生物の治療においても世界から注目される存在。
齊藤慶輔氏
絶滅危惧種のタンチョウが自然分散する可能性の「一滴」
沼田監督はその齊藤氏と取材を通して20年来の付き合い。過去には猛禽類の鉛中毒や鳥インフルエンザの問題でドキュメンタリー番組も制作している。齊藤氏はこの日、上映後のゲストトークのために釧路から札幌に駆けつけた。
映画を見た齊藤氏は長沼町の農家の活動についてこう語る。
「市井の人たちが野生生物と一緒に暮らしたいと考え、行動を起こしたのは日本全国でも世界でもあまり例を見ない。しかも農家の方々。共生することで農業を営む自分たちの首を絞めることになるかもしれない。それが、豊かな自然環境とともに生きることが自分たちの豊かな生活につながると考え、実際に自ら動いた。そのことが大きな一歩」
「道東のタンチョウが増えてきて自然に分散されていくという可能性はあった。タンチョウが住みやすい自然環境があって、そこに住み着いていくという自然分散ができれば、そこからさらに波紋が広がっていくようになる可能性はある。長沼町の農家がその波紋を生み出す一滴を垂らした。非常に大きい一滴だと言える」
沼田監督が続ける。
「千歳川周辺では6つの遊水地が出来ている。その遊水地の利用は町によってさまざまだ。長沼町以外の地域でも同じような声が上がっていけば、その1滴から波紋は広がっていくのではないか。そうすれば、千歳川一帯でタンチョウが見られるような光景が現れるかもしれない」
映画の上映後、沼田監督と齊藤氏は拍手に包まれながらスクリーン前に登壇。今回の映画の意義などを話した。
上映後の舞台トークイベント
齊藤氏「動物ファーストでも人間ファーストでもいけない。良い折り合いをつけて彼らとの共生を目指す。共生というのはキーワードですよね。ともに健全な形で生きる」
そして、この2人のトークが釧路市でも行われることが決定した。
(文:「奇跡の子 夢野に舞う」統括プロデューサー 坂本 英樹)
奇跡の子 夢野に舞う
公式ウェブサイト:https://www.htb.co.jp/kisekinoko
【現在上映中】
札幌 シアターキノ
イオンシネマ旭川駅前
イオンシネマ釧路
イオンシネマ江別
シネマ太陽函館
シネマ太陽帯広
ディノスシネマズ苫小牧
ディノスシネマズ室蘭
T・ジョイ稚内
◆2月23日(金・祝)~
東京・丸の内TOEIで上映
ースタッフーー
ナレーション:上白石萌音
監督:沼田博光
統括プロデューサー:坂本英樹
プロデューサー:四宮康雅 堀江克則
撮影:小山康範 石田優行
編集:上田佑樹
音楽:中村幸代
音楽制作:中脇雅裕
宣伝プロデューサー:泉谷 裕
製作・配給:北海道テレビ放送
宣伝・配給協力:東映エージエンシー
カラー / 5.1ch / 16:9 /1時間37分
令和5年度 文部科学省選定「少年向き」「青年向き」「成人向き」
環境省「推薦」
文化庁文化芸術振興費補助金 (映画創造活動支援事業)
札幌市映像制作補助金
沼田監督のこぼれ話【幕間のつぶやき】シリーズの過去記事をご覧いただけます!
https://sodane.hokkaido.jp/author/000493.html