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暑すぎる夏に異常な雪の降り方…最近の異常気象について札幌市環境局のお二人に聞く!
2024.03.19
昨年、2023年の夏、 北海道 札幌市では記録的な暑さが続きました。
近年の夏の暑さは昨年だけではなく、 この数年、明らかに暑い夏が続いていると感じる方も多いのではないでしょうか。
夏の平均気温が歴代1位となった北海道、 8月23日に過去最高となる36.3°Cを記録した札幌市。
これまで必要ないと言われてきたエアコンを導入した家庭も多く、 公立小中学校でもエアコン設置の検討も始まっています。
冬は冬で雪が全然降らない・・と思いきや急にやってくるドカ雪。 それに続いて急に気温が上がり、 溶けた雪によってボコボコ道路になるなど…極端な天気が続く近年です。
このような気候の変化はどういったことが原因で、私たちにとってどのような影響が生まれてくるのか。
Sodane編集部では、札幌市役所にこのような環境の変化に対して取り組みを行う仕事につく方々がいると聞き、お話を伺ってきました。
お会いしたのは札幌市環境局環境都市推進部の富士本さんと阿部さん。
左:富士本さん 右:阿部さん
ーやっぱりこの夏の暑さは異常だったんでしょうか。
富士本さん:異常でしたね。本当に耐えきれないほどの暑さでしたよね。でも実は札幌市の年平均気温はこの100年間右肩上がりで、1900年から見て約3℃上がりました。このままいくと21世紀の間に約4.9℃上昇すると札幌管区気象台が予測を出しています。
日本の気候変動2020(文部科学省・気象庁)に基づく地域の観測・予想情報リーフレット:https://www.data.jma.go.jp/sapporo/bosai/publication/kiko/ kikohendo2020/leaflet/14_ishikari.pdf
ーこの100年で5℃近く…夏が40℃近くになっちゃうってことですよね…!?まさに地球温暖化…
富士本さん:そうなんです。こういったデータは各国の研究者が政府の資格で参加し、気候変動のリスクや影響、対策について議論するための公式の場「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」で発表されているもので、1990年からまとめられている報告書に記載されています。この報告書でも言及されているんですが、主に「温室効果ガス」が原因ということが言われています。
ー温室効果ガスと言えば、二酸化炭素でしょうか。
富士本さん:実は二酸化炭素だけではなくメタンなども含まれるのですが、人間の活動による影響で増加しているのが二酸化炭素と言われています。当初は二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスが「気候変化を生じさせる"恐れがある"」と報告書にまとめられていたのですが、最新の報告書では「人間活動による影響で地球温暖化が起きていることに"疑う余地がない"。」と、強い言葉で警鐘が鳴らされるようになりました。
ーそうなると、私たちの活動が温暖化につながっているっていうことですよね…。どうしたらこの流れを止められるのでしょうか。
阿部さん:これを受けて、札幌市では「札幌市気候変動対策行動計画」を取りまとめて、この中に札幌市の現状と、今取るべきアクションをまとめました。
札幌市気候変動対策行動計画:https://www.city.sapporo.jp/kankyo/ondanka/kikouhendou_plan2020/index.html
札幌市環境局 環境都市推進部 環境政策課推進係長 富士本さん
富士本さん:もともと国として気候変動に取り組もう、という動きがあったのですが札幌市では「札幌市ゼロカーボンシティ宣言」を行い、脱炭素に向けた取り組みを推進してきました。また、次世代を担う若者たちの団体から「この異常気象に対してなにかアクションを」という署名をいただいたこともあり「気候非常事態宣言」も発出して、札幌市としてより一層の危機感を持った取り組みを進めています。
富士本さん:また、札幌市では市民に向けた脱炭素行動に関する情報発信を行っています。これは、2050年までに札幌市内から排出される温室効果ガスを実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現に向けたものです。
ーそれって、どれくらいがんばらなければいけないんでしょう…
阿部さん:そうですよね、2050年。25年以上未来のことだとなかなか現実味を持てないので、まずは2030年に向けた中間目標を立てています。
富士本さん:「温室効果ガスを2016年に比べて55%、2013年に比べて59%を削減」というものです。
ーあの、一旦すみません…!まず、そもそもその"削減する量"ってどうやって量ってるんですか…?
阿部さん:おっしゃるとおり、この数字って実態をつかみづらいですよね。実はこの数値は「推計」なんです。何かというと、温室効果ガスの排出量は各種統計の年報値やヒアリングデータ等から算出しているんです。ただ、私たち一人一人の行動の変化の積み重ねが、確かにこういったデータに反映されてきます。
ー体系だった調査が行われていたんですね。ではちょっと話を戻して、2013年に比べて59%を削減、これって難しい数字なんですか?
阿部さん:これは国の目標である「2013年に比べて46%を削減」よりも高い目標です。実を言いますと、このままでは、目標達成に届かない見込みです。
ー具体的に私たちは何をしたらよいのでしょうか?
阿部さん:札幌市としては5つの柱を設定しています。一つ目が【省エネ】。徹底した省エネルギー対策です。二つ目が【再エネ】。再生可能エネルギーの導入拡大です。三つ目が【移動】。私たちがどこかへ行く、荷物を運ぶといった移動の際の脱炭素化を進めます。四つ目が【資源】。3R(リユース・リデュース・リサイクル)の推進や、森林が持つ二酸化炭素の吸収機能の維持促進と森林資源の持続的な利用を図るものです。そして五つ目が【行動】。ライフスタイルの変革や技術革新によって二酸化炭素排出につながるエネルギー使用を抑えていこうというものです。
・【省エネ】徹底した省エネルギー対策
・【再エネ】再生可能エネルギーの導入拡大
・【移動】移動の脱炭素化
・【資源】資源循環・吸収源対策
・【行動】ライフスタイルの変革・技術革新
富士本さん:この柱で言うと省エネ、再エネ、行動に該当するかと思うのですが、中でも北海道の家庭で二酸化炭素の排出につながっている最も大きなものが「暖房」なんです。
阿部さん:暖房・給湯などの機器については、二酸化炭素排出量の少ない電気やガスなどを使用することができればインパクトは大きいです。また、住宅の断熱を高めるということも有効で、新築住宅建設や、リフォームの際に断熱基準に準拠したものに補助金がでる仕組みもあるので、ウェブサイトを確認してみてください。
札幌版次世代住宅補助制度:https://www.city.sapporo.jp/toshi/jutaku/10shien/zisedai/zisedaihojo.html
ー補助金もあるんですね!でも暖房の買い替えや、ましてや家のことになると…なかなかちょっと身近ではない話…
阿部さん:ですよね…。そういった機会はそうそうあるものではないですが、その機会を迎えた時に"脱炭素につながる"ということが購入するものの決め手になるような意識をもっていただけると嬉しいです。そのために、ぜひ日々の暮らしの中で身近なことから"脱炭素"を意識していただきたいです。たとえば暖房でいうと設定温度を少し下げてみる。他にも日常の中で、街に出るのに自動車ではなく地下鉄を使う…といったことでも札幌市民の皆さんが少しずつ行動を変化させると、たとえば札幌市民約200万人のみなさんとなると大きな変化につながります。
富士本さん:「こうしなければいけない」ということではなく、何か行動をする時、すなわち「選び方」「使い方」を考えるときに、「こっちの方が安いかな」「こっちの方が身体にいいかな」といったことを考えるのと同じように"できれば脱炭素につながる"ということもポイントに考えてみていただけたらと思います。
ーなるほど!「できれば脱炭素につながる」という選択ができるその時に備えていけたらいいですね!
阿部さん:そうなんです!札幌市としても、先ほどの柱で言う【行動】の"ライフスタイルの変化"を促すため「市民への広い周知、広報」活動として、脱炭素アクションに対する理解の促進を目標に、いろんなことに取り組みました。具体的にはパネル・ポスターや5種の動画を制作したほか、省エネ住宅やリサイクルなどの話題を取り上げた脱炭素トークコラムをウェブ上に掲載し、SNSを活用した情報拡散も図ってみています。
札幌市民ストーリーズ:https://sapporo-shouene.jp/datsutanso/
富士本さん:こちらのコラムも読みごたえがあるのでぜひ、ご覧ください!先ほどご紹介した「札幌市気候変動対策行動計画」の5つの柱に関連した各分野の専門家・エキスパートに登場していただきまして、具体的な事例などを交えたコラムになってます。新築・リフォームを含めた省エネ住宅や、再エネ電力を活用したものづくり、ハイブリッド車・EVを含めたエコドライブ術、リサイクルの現場の話、日常的な脱炭素ライフスタイルの実践例などがアップされてきますのでお楽しみに。
阿部さん:環境省から、北海道の地球温暖化対策施策に関して幅広く活動中で、勉強会などでも登壇されている青地絢美さん(環境省北海道地方環境事務所 環境対策課課長補佐)による「脱炭素の基礎知識」も掲載しているのですが、これが結構わかりやすいので、個人的にはおススメなんです!「脱炭素はダイエットや筋トレ、ポイ活のようにコツコツ地道に行うことが大事」っていう部分、私たちがお伝えしたいことだなーと。
札幌市環境局 環境都市推進部 環境政策課推進係 阿部さん
富士本さん:ポスターや動画では「ありがとう‼️ それ、脱炭素です。」をキャッチフレーズに、多くの市民が「"普段何気なく行っていることが実は脱炭素につながる"行動なんですよ」とお伝えして、自分がすでに脱炭素ライフスタイルを実践していることを知ってもらうことでアクションに対する心理的ハードルが下がれば、と思っています!
阿部さん:こちらが実際のポスターなんですが、マイボトル、置き配、マイバッグ、古着の再利用も含めたリサイクルなんかも脱炭素につながる行動なんです。
富士本さん:それぞれの行動は本当に何気ないことなんですが、例えば、置き配では再配達の際に発生する配送トラックの移動分のエネルギーが減少できますし、マイボトルの利用は、ペットボトルの製造、発送、廃棄、再利用に至るそれぞれの行程でのエネルギー削減につながります。
阿部さん:生活の中の思いがけないことでも、その先で、実は大きな脱炭素につながっている行動がたくさんあります。そういったことが実は脱炭素に貢献している、感謝される行動なんだ!と広く発信しています。
富士本さん:こちらの動画でも、そんなことをより多くの人に気づいてもらえたら嬉しいです。
ー本当、私たちの身近な行動の積み重ねがカーボンニュートラルにつながっていくんですね。これから毎日の生活で何かを選ぶとき、その選択の考え方に"脱炭素"っていう要素も頭に入れておこうと思います!
阿部さん:ぜひぜひ!
富士本さん:「使い方」、「選び方」の中に脱炭素、ぜひお願いします!
阿部さん:今回お話したことがよくまとまっているガイドブックもありますので、ぜひこちらも合わせてご覧になってみてください。
さっぽろ気候変動対策ガイドブック:https://www.city.sapporo.jp/kankyo/ondanka/guidebook/index.html