先日、札幌の中島公園にある国指定重要文化財の豊平館で開かれたライブ。
満員御礼となったイベントでは、公演後にも来場客が留まり、感想を述べ合うなど、文化芸術を楽しむ札幌市民の姿が多くみられました。
札幌から発信する「一期一会のライブ」とは!?
私も所属する4人組ユニット「ともす」。物語の世界を「朗読」「音楽」「美術」によって表現するライブユニットです。
ツイン朗読で、声の響きや言葉の魅力を伝え、多彩な楽器で奏でる音楽が、聴く人の感情をゆさぶります。
プロジェクター投影で視覚を楽しませるのは、その場で描き作り上げられていく映像作品です。
物語の世界に合わせて、絵を描いたり、カラフルな液体で表現されるリキッドアートや、ビーズや紙など様々なアイテムを駆使して作り出す美術は、稽古で何度繰り返しても全く同じものにはなりません。
その日、その場所で、お客さまと一緒に、ひとつの空間を味わう。
まさに「一期一会」のライブです。
演劇でもない、コンサートでもない、身近な場所で五感を使って楽しんでもらえる文化芸術を目指しています。
虚と実が交わるような物語『緑のオウム』
札幌在住の作家・高楼方子さんの『街角には物語が‥…』(偕成社)は、まるで海外の作品のような、不思議でどこか異国の香りのする短編連作集です。
児童文学とされていますが、実は大人の方にお勧めの一冊です。
どことなく漂う物悲しさや寂しさ。不思議の奥に潜む不気味さ。懐かしく優しい温もり…。様々なカケラが散りばめられている8つの物語の中から、今回は『緑のオウム』をお届けしました。
日常のふとした瞬間の「匂い」によって呼び起こされる記憶や想い。
そこから広がる想像は、夢と現実の境目が溶け合う時間なのかもしれません。
主人公メイヴィスが夢見たものとは?そして今を生きることはどんな意味があるのか?
そんな深読みもしたくなる、夏の夜におすすめの作品です。
北海道を代表する作家・高楼方子作品の魅力
児童文学作家として多くの作品を世に送り続けている高楼方子さんの作品は、少しの毒と皮肉、不思議なこと、こわいこと、嬉しいことが隠れているものが多く、子どもが読むと「ちょっと不思議なファンタジー」なのに、大人が読むと「自分の体験や経験と重なって、ファンタジーの世界の中のリアルさに気づき、背筋がヒュッとする」ような作品もあります。
ライブでは、文字ではなく声を通して聴いて感じて頂くため、その文章の響きの魅力も楽しんでいただけたのではないでしょうか?
著者本人のゲスト出演で、特別な一夜に
ライブでは、スペシャルゲストとして著者の高楼方子さんご本人も登壇。
代表作絵本『まあちゃんのながいかみ』(福音館書店)の読み聞かせを披露して下さいました。
高楼さんの声は少女のような大変可愛らしい声で、まさに「まあちゃん」が絵本から飛び出してお話しているかのようで感動しました。
高楼方子(たかどのほうこ)さんは函館出身・札幌在住の絵本・児童文学作家です。
1966年に『へんてこもりにいこうよ』『いたずらおばあさん』の二作で「路傍の石少年文学賞」を受賞、『わたしたちの帽子』で「赤い鳥文学賞・小学館児童出版文化賞」、『わたし、パリにいったの』で「野間児童文芸賞」など多数賞を受賞しています。
絵本では、表紙や挿絵を自身で手がけたものもあり、その世界観に多くのファンが魅了されています。
ライブ後にはサインを求めるお客様で長蛇の列ができました。
北海道で活躍する作家さんに直接会って言葉を交わすと、物語がどんな空気で創作されているのかを感じとることができたり、より文学が身近で親しみを持てるものになります。
「ラストに度肝を抜かれた!」嬉しい声も
ライブに参加下さった方からは
「はじめはこの物語を読んだ時に、これをどうやってライブパフォーマンスでやるの!?と思っていましたが、白馬が駆けるシーンや心情をリキッド(液体)アートで表現していて、物語にどんどん没頭しました!」
「この物語を朗読で聴かせるなんて!とても難しいことを、素敵な構成と音楽と美術で見事に世界観を表していて感動しました!」
そんな嬉しい言葉を、たくさん頂きました。ご来場下さった皆様、ありがとうございました。
ライブユニット「ともす」は異色の4人組
「見た人の心に、暖かな灯がともりますように」
そんな想いをこめてユニット名を「ともす」と名付けました。
森さやかと兎ゆうによるツイン朗読と、福井岳郎の南米民族楽器で奏でる音楽、橘春香のプロジェクターに投影する美術で、物語の世界を多角的に表現する4人組ユニットです。
美術 橘春香(絵本・児童文学作家)
絵本に『こどももちゃん』『じっとみるの』など、児童書に『銀杏堂』『銀杏堂スフィンクスのつめ』などがあります。イラストレーターとして広告・装幀など幅広く活動しています。作家という枠を飛び越えて、札幌から全国へ発信する注目のクリエイターです
音楽 福井岳郎(南米民族楽器演奏家・作曲家)
南米諸国で民族楽器演奏を学び、帰国後、フォルクローレ・グループ「ティンクナ」のリーダーとして全国で演奏活動。劇団千年王国「狼王ロボ」の作曲演奏など数々の舞台音楽も手がけています。
最近は、身近なものを笛にする「面白楽器」が好評。
時に柔らかく、また情熱的な音色で、物語の世界観を伝えます。
朗読 兎ゆう(朗読家)
第5回JILA朗読コンクール文芸部門第1位、詩部門第2位受賞。道内外のイベントに多数出演。国際芸術連盟朗読家会員。
安定した語りと表現力で物語の世界観を伝えています。
朗読 森さやか(アナウンサー)
絵本セラピストとしても活動し、絵本文学や言葉の魅力を地域に伝えています。ドキュメンタリー番組のナレーションなども数多く担当しています。
地域コミュニティの活性化や北海道の文化芸術のチカラを広めたいと活動しています。
文化芸術には心を豊かにしたり、誰かの気持ちに寄り添えたり、そんな力があると信じています。4人組ユニット「ともす」は、北海道の皆さんに、文化芸術を身近に感じて親しんでもらえるように、素敵な作品や物語をライブでお届けしています。
次回作もどうぞお楽しみに。