酒の影響か 別れ話の腹いせに…元交際相手の家から金を盗みテレビを壊した男 「自分をおさえられなくて…」

8月、札幌地裁。

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8階の法廷は夏休みということもあり、傍聴席には多くの学生さんの姿が。傍聴した内容をレポートにまとめるのだろうか。

この日の裁判はある男が起こした「窃盗・器物損壊事件」…証拠調べ、被告人質問などが行われ、この日のうちに判決まで進む予定だ。

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※法廷内の画像はイメージです

男は保釈されているため、弁護人とともに普通に法廷に現れた。黒のスーツに白いワイシャツ。髪の毛は短くも長くもなく、前髪はおろしている。白いマスクをつけ、目線は被告人席のほうをうつろにみつめている。

男の起訴内容は以下の通り

・元交際相手の家にあった21万5000円を盗む

・元交際相手の家にあったテレビを壊す(オリオン製15型 2万円相当)

淡々と進む裁判

裁判官が法廷に入り、裁判が始まった。検察官は起訴内容について淡々と述べていく。そして弁護側は傍聴席にいたある女性を証人として立たせた。被告人の元妻で、今回被告人の保釈のために骨を折ってくれたらしい。

弁護 もともと結婚していて、離婚し、今またお子さんとともに同居しているということですか?

証人 はい

弁護 彼を保釈させようとしたのはなぜですか?

証人 子どももいますし今後このようなことを起こさないためにも、精進してほしいから

弁護 彼はまだ仕事がみつかっていませんか?

証人 はい

弁護 じゃああなたのお金で家庭では暮らしていることになりますが、彼の生活の様子は落ち着いている?

証人 はい朝起きて夜寝て出かけることなく家にいます

弁護 彼が子どもに当たることは?

証人 ないです

検察 なぜ犯行に及んだのか理由は聞きましたか?

証人 くわしくは聞いていないです

検察 なぜですか?

証人 くわしく聞こうとしかなかったこともありますし…聞いていません。

検察 これから監督していく身として聞く必要がったのではないですか?

証人 落ち着いてからだと思いました。

裁判官 今後も被告人と一緒に暮らしますか?

証人 わかりません。仕事がみつかったら別の場所に住むかもしれないですし

淡々と進む被告人質問

被告人質問で被告人は小さな声で、非常に落ち着いたトーンで淡々と質問に答えていく。マスクがあるからか、表情は全く読めない。

………

弁護 被害者は一緒に暮らしていた女性ですね?

被告 はい

弁護 交際はどれくらいの期間ですか

被告 1年くらいです

弁護 同居は?

被告 8カ月くらいです

弁護 同居しているときにお金は渡していた?

被告 はい

弁護 どれくらいですか?

被告 月5万円くらいです。

弁護 彼女がお金をためていたことは知っていた?

被告 はい

犯行日にあった言い争い 酒を飲んでいた男は衝動的に

続いて被告人質問は男が犯行に及んだ状況について質問が及んでいく

弁護 あなたが浮気を疑ったということですね?

被告 はい

弁護 でも、あなたが怒られたということですね。「出ていけ」と

被告 はい

弁護 出ていくときに犯行に及んだ?

被告 はい 納得いかない気持ちでイライラして…

弁護 「ためていた金も持って行ってやれ」となったわけですね

被告 はい

弁護 そのお金はあなた自身が自分のお子さんとの交流費に使ったわけですね?

被告 はい

弁護 どうにかしようとは思わなかった?

被告 その時点では、その時は全部が被害者の金だと思いませんでした

弁護 今後衝動的な怒り、お酒、同じことを繰り返さないためにどうしますか?

被告 お酒を飲まない、控えること…お酒がなければ(犯行は)やっていなかった

弁護人に代わり、検察官や裁判官が質問するが、そこでも男は「衝動的になってしまった」と繰り返す。お酒が衝動のスイッチとなっていたと話していた。男はテレビ以外にも被害者の女性宅の部屋をぐちゃぐちゃに散らかして去っていったという。裁判での非常に落ちついたトーンからは想像しにくい。

………

被告人質問は予定よりも早く終わり、いったん休廷し、15分後に判決が言い渡されることになった。保釈されている被告人は弁護士や元妻とともに法廷を出ていった。

執行猶予つきの有罪判決

15分後、検察官、被告人と弁護人が法廷に戻り、最後に裁判官が入廷し、公判は再開された。

被告を懲役1年に処する。3年、刑の執行を猶予する」

判決は懲役1年(執行猶予3年)。

裁判官は起訴内容にある被告人が起こした犯行をすべて事実と認め、被害は多額で被害者の生活状況からも非常に罪は重いとしながらも、全額弁償していることと、衝動的な犯行だとして執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。

判決言い渡しの際、被告人は身動きせず、無言のまま、じっと裁判官をみつめていた。

………

そして、裁判は終了。被告人は元妻とともに、エレベーターに乗り込み、札幌地裁を後にした。

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この記事を書いたのは

HTB Court Watcher

元HTB報道部・社会班キャップ
SODANE編集部に在籍しながら、たまに趣味の裁判傍聴のため
札幌地裁・高裁に出没。傍聴する裁判は刑事・民事問わず。

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