【国際女性デー特別企画】 「ダイバーシティって誰のため!?」本音で語ってみた 電通北海道ゼンカツ×HTB 座談会を振り返る

同じ北海道のマスコミ業界でDEIを推進するメンバー同士、これまで交流を重ねてきた株式会社電通北海道の全員活躍推進プロジェクト(以下、ゼンカツ)のメンバー寺岡真由美さん田中直也さん

HTB創世ミモザマルシェを昨年立ち上げた阿久津友紀と森さやかの4人で開催したクロストーク座談会。「3月8日の国際女性デー」に、改めて尋ねてみたいDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)のこと

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【北海道を黄色く染めたい!国際女性デー】

はなさく生命presents HTB創世ミモザマルシェ

3月7日(金)~9日(日)今年も開催

公式ウェブサイト:https://www.htb.co.jp/ichimoni/marche/mimosa/

寺岡:HTBで昨年から実施されてる「HTB創世ミモザマルシェ」がありますよね?
今年はどんなことをやるのですか?

森:3月7日(金)・8日(土)・9日(日)の3日間、HTB本社1階のonちゃんテラスで「はなさく生命presents HTB創世ミモザマルシェ」を開催します。ミモザの黄色にちなんだ素敵なものを集めたマルシェやマルシェや北海道で活躍されてる方々とのトークセッションなど、コンテンツの数も去年よりさらにパワーアップしています!

寺岡:私たちも昨年見に行って、とても刺激を受けました。ミモザマルシェは、どういった経緯で始まったのでしょうか?

森:ちょうど7年前に、東京で国際女性デーのイベントを見たことがきっかけです。女性アーティストのライブや、女性起業家の方を集めたトークショーなどがあり、とても感銘をうけました。

「HTBでも国際女性デーに何か発信するイベントができたらいいな」と今から6年前に最初の企画書を書きました。すぐには実現できませんでしたが、情報番組内のコーナー企画で生理や更年期など女性特有の健康課題を取り上げるなど、少しずつ実現への道を模索してきました。

HTBでピンクリボンのことを長年伝えてこられた阿久津さんに相談すると「是非やろうよ!」と言ってくれて、阿久津さんが人脈を駆使して形にしてくれて去年ようやく実現しました!

阿久津:ほぼ自分たちだけで運営してる、”スーパー手弁当”ですが(笑)トークセッションも敢えてステージを作らずに、聴いてるみなさんと”同じ目線”でやるっていうのを決めてます!マルシェに立ち寄った人が途中でトークに割り込んできてくれてもいいし、ラジオみたいな感じでずーっとトークが流れてる方が多くの方を巻き込めるんじゃないかと思って。

森:トークセッションはアーカイブも残すので、後日関心をもってくれた方にも見て頂けます。

阿久津:都道府県別ジェンダーギャップ指数で、北海道は全国で47位と最下位。これをなんとかしなければと思っていて。でも「女性活躍」とか「ダイバーシティ」って言うととっつきにくいと思われがちなので、エンタメ性があって、ファミリーも参加できて、笑顔になれるようなイベントにすれば広がりが生まれると思っています。

onちゃんと同じ、ミモザの黄色テーマに「幸せの黄色い○○」として、北海道の素敵な人やモノ・コトを情報発信します。

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電通北海道の新たな取り組み「気づこう、変えよう、全員で。DHJ国際女性デーWEEK」

森:電通北海道も国際女性デーの取り組みを予定されてるんですよね?

寺岡:社内での啓発イベントとして「気づこう、変えよう、全員で。DHJ国際女性デーWEEK」と題して3日間で3つのイベントを開催します。

1つは「ココカラージャーニー」という電通グループが作ったカード型DEIワークショップ(監修:特定非営利活動法人ミラツク)の実施。

2つ目は、「管理職さんいらっしゃい!」という社内テレビ番組で、女性管理職3名をゲストに迎えたトークセッション

3つ目は”全社員で「女性リーダー」を考える会”と題したトークイベントを行います。

そのほか、ジェンダー課題の気づきや解決のアイデアを付箋で貼る「アクションパネル」を社内の複数個所に設置して、国際女性デー気運を高めたいと思っています。

森:1日ではなく、3日間行って「国際女性デーWEEK」としているのがとても良いですね。取り組むきっかけはあったのですか?

寺岡:木村平社長が旗振り役となってリードしてくれていることが大きいです。森さんが司会を務めたジェンダーコレクティブ北海道主催のシンポジウムなど、DEIがテーマの講演に社長自身が登壇したことも意識が高まったのだと思います。「3」という数字(3日間で3つのイベント)も社長のアイデアです。

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【DEIなんのため!? 自分が苦しかった経験が動機に】気づきから得た「課題感」突き動かされる「使命感」

DEIの課題に様々な取り組みをしている電通北海道のゼンカツとHTB。なぜ、どのような思いでこの活動に積極的に取り組むのか、その想いを語ってみた。

阿久津:私は6年前に乳がんに罹患したことがきっかけです。20年前くらいから乳がん治療の取材をしてきたんですが、いざ自分がなると「働くってこんなに大変なんだ」と思いました。

これは病気の人だけじゃなくて、出産や育児、介護を担ってる方だって状況は似ていて、解決方法も似ていることもある。だったら女性活躍とかDEIの文脈まで広げた方がみんなにわかってもらいやすいな」と思いました。自分だけを優遇してほしいわけじゃなくて、みんなのためになるんだと。命の限界を一度感じると、何かを残さなきゃと思うんですよね。

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森:私も「次の世代のために何かを」という想いが阿久津さんと同じです。ただ私の場合も、もとからダイバーシティや女性活躍に高い意識があったわけではありません。近年女性の割合も増えていますが、放送界も女性が少ないと指摘される業界の一つです。中でもアナウンサー職は「アナウンサー30歳定年説」という言葉もあったように結婚し30歳前後に辞める人が多かった時代でした。仕事の責任が大きくなる中で私もその年齢に近づき、結婚・出産をしたら「辞めなきゃいけないんだろうか」と思い悩みました。

実際にそのライフイベントを迎えた時に、当時の番組スタッフや総務部の女性に「続けられる方法を探そう」と声をかけてもらえたことが働き続ける選択をした大きなきっかけとなりました。当時0歳児を抱えながら働く女性は私の周囲に誰もおらず手探りでしたが、番組MCの合間に搾乳する時間を捻出してもらうなど、現場のスタッフの細やかな気配りに助けられて今があります。

その経験から思うのは、大事なのは「制度」ではなく「人」なのだと思います。誰かの悩みや困りごとに「気づくことができる」「想像してあげられる」そんな風土を次の世代にもつなげていきたいと思いました。

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田中:私は4年前に人事の部署に異動になって、会社からDEIをやってほしいと言われたのがきっかけでした。私は男性ですしマジョリティー側の人間だとは思いますが、でも私にも小さな苦しさが色々とありました。DEI推進に取り組む中で「女性」の課題を解決することが、同じような苦しさを持ってる「男性」の苦しさも和らぐようなことになればいいなと思うようになりました

自分が苦しかった経験でいうと、例えば飲み会で先輩方に「おもしろい」と言ってもらえるようなことが言えなかったり、できなかったり。そういうのは得意な人がやればいいと思う一方、男性である自分でもそう思う場面があるのであれば、女性にも苦しんでいる人がいるかもしれないと思うようになりました。

「男性だから責任ある仕事を担うべき」とか「男性だから我慢しなさい」など、そういった男性の苦しみもあると思います。

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寺岡:私は3歳の頃に遡りますが、自分にあてがわれた「女性」という性に気に食わなさを感じていて「私はピンクより青、スカートよりズボンが好き」なのに女の子だからという理由で与えられることに不満で「ジェンダーロール(性的役割)への違和感」を幼少期から感じていました。とは言いつつ学生時代は制服のスカートも意外と悪くないと思いながら過ごしてたんですが、会社に入って人生2度目の衝撃がありました。

当社の飲み会での男性たちのノリに全くついていけない。他にも、業界の野球大会やサッカー大会があるのですが、選手として出るのはみな男性、みたいなこととか。「男性が上がれる舞台に女性は上がれない場面がある」だから評価されるチャンスも少ない。結果、偉い人も男性ばかりだし、男女に明確な「差」があるじゃないかと思いました。構造的に「生きづらい」と。だから、その「差」に気づいた私がそれを埋めたいと思いました。

DEI推進の意欲の源は「自分のため」だとも思います。昔の自分に対して「未来はちょっとマシだからね」って言ってあげられるためにやってる、みたいなところがあります。

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【それぞれのDEIの取り組み】電通北海道「てやんDEI!」、HTB「onちゃんカフェ」など 繋がる・言葉にする・可視化する

田中:月に1日、平日にみんなで休みを取る制度「インプットホリデー」を導入しています。長時間労働が前提となっていると、子育て・介護中の人などが働きやすいとは言えないのでそれを是正するための施策です。株式会社電通が先に始めた取り組みではあるんですが、当社は社外にリリースも出して取引先の方にも発信をしています。

寺岡:DEI推進に取り組む北海道で日々奮闘する人を紹介するWEB連載企画「てやんDEI!」も取り組みのひとつです。「DEIって何すればいいの?」いう声が共通してあるので、各社の取り組みを紹介して真似し合えばいいと思ったのと、それらを点ではなく線にして、北海道全体のうねりを可視化したかった。また個人的には、各社のDEI中心人物たちと繋がって思いや悩みの共有ができると仲間がいるんだと勇気をもらいたかった、とい思いもあります。いかんせんDEI推進は孤軍奮闘になりがちですので。

森:HTBのダイバーシティ推進の歩みは、2015年に当時社長から年頭に「女性が生き生きと働ける会社にしよう」という発信があったことから促進されました。その翌年にダイバーシティ推進部が新設され、会社の中でどんな困りごとがあるか各部ヒアリングから始め、制度の細かい見直しなども、少しずつ進めてきました。

次第に、個社だけでは中々変化しにくい課題も、他社と繋がることで自社の変化に繋げられるのではと思い、社外の勉強会などに参加するようになりました。そこで仲間と出会い、他社の取り組みに刺激をもらっては、持ち帰った知見を自社にも取り入れられないかと考え模索しています。

田中:我々とも異業種交流会で出会いましたね。以前、こういう社内スペースを利用した「onちゃんカフェ」のような社内交流施策もされてると伺いましたね。

森:「ふだん他部署の人となかなか会わないよね」という声が社内から多く聞かれたので、無料のお菓子やお茶を用意し、フリースペースを活用した他部署間のコミュニケーション促進を図る社内イベント「onちゃんカフェ」を開催したり、コロナ禍など対面のコミュニケーションが難しい時には、オンラインビアガーデンなども実施しました。

田中:会社に話しやすい人、相談しやすい人を一人でも多く作るというのは心理的安全性という意味でも大事ですよね。

寺岡: 我々ゼンカツの取り組みでも社内レクリエーション施策として「お昼のレディオ」という番組があります。いろんな人のいろんな面を見つけて、いろんな働き方があるじゃない、みたいなのをお互いわかりあう企画です。

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【DEIを浸透させるために、何をしたらいい?】DEI推進の悩みから、次のアクションへ!!

阿久津:みんな「DEI疲れ」しちゃってるところはありますよね。誰かを傷つけてしまうと思うと言いたいことが言えない、みたいなのもあるのかもしれない。私はこの「DEI疲れ」をどうするかが次のステップだと思っています。

また、DEIの講演会とかやると、出て来る女性がみんな「キラキラしすぎ問題」はあるんじゃないかと。「自分はああはなれない」と思う人が出てきて、女性の中にも分断が起こっちゃうんじゃないかと思う。キャリアプランももっと多様でいいですよね。既存の出世ルートをたどらないと管理職になれない、とかではなく、ライフイベントがあったとしても多方面に道があって色々なルートで管理職になれればいい

森:分断というと、同じ「女性」の中でも、お子さんがいる人、いない人、お子さんがいる人の中でも、近くにサポートしてくれる家族や友人がどれだけいるかで状況が違いますよね。分断を生まないために、どう公平感を保つのかも悩みですね。

田中:当社も男性育休取得率が数字上300%とかになるんですが、配偶者の状況や協力に依存してしまっているなとよく思います。一企業だけでなく社会全体で向き合うべき問題だなと。

寺岡:当社の男性育休座談会をやった時に出たアイデアですが、インプットホリデーの長期バージョンをやって、たとえば1年とか、みんなで順番に休みを取っていこうよということにすれば、「申し訳ない」とか「ズルい」とかじゃなく、今は私の順番、次はこの人の番、と思えるので、心持ちも仕組みも変わるのではないかという話が上がりました。

阿久津:それいいですね。出産だろうが病気だろうが、誰がいつ休んでもお互い様の精神でローテーションしていければいいですよね。それができるだけの人材をどれだけ抱えていられるかという企業側の問題も簡単じゃないですけどね。

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田中:ダイバーシティはコストが増えるんじゃないかって話もよくあるんですが、長期的な会社の利益を考えるのであれば、会社と社員が良好な関係を作るということは、結局は会社のためになるはず。「あなたの権利を奪って私にください」という関係ではなくて、みんなで同じゴールを見て、一緒にここに行きたいから、お互いにどう分担し合うのか、どう休暇を取り合うのかを試行錯誤してみることじゃないのかなって。

寺岡:企業である限り、お金を生み出すのが使命なので「ビジネスに繋がるダイバーシティを」と言われたりするけれど、短期的な売上とかで測るやつだっけ、みたいな悩みはどうしてもあって。私も本業は制作部門なので、もっと目の前のお金になることやれみたいな圧も感じます。でも逆に言うと、この活動がお金になるのであれば万々歳だなと思うので、HTBさんと何か一緒にやりませんかっていう話を最後にしたいなと思いますがいかがでしょう?

森:我々も民放テレビ局ですからね。先ほど田中さんから「同じゴールを見る」という話がありましたけれども、企業のトップの方が今どんなゴールを見ているのかというのをぜひ聞いてみたいです。色々な企業の取り組みを発信していくようなことができればいいですよね。他企業の皆さんと連携できるような次の取り組みに繋がるかもしれませんね。

阿久津:ハッピーなことやりたいですよね。それで北海道のジェンダーギャップ47位が1つでも上がることを目指して!

田中:やりましょう!

森:来年の国際女性デーにまた1年の振り返りをするのも楽しみですね。

座談会を終えて~思うコト

DEIに取り組むそれぞれの想いや悩みも共有できた今回の座談会。

スピード感をもって推進したいのに、なかなか叶わない。そんな、もどかしさもにじみ出ていたように思います。
DEI推進の悩みの一つとして、その方法や効果が「見えにくい」ということがあげられます。「DEIが経営を上向きする実感がない」という声も、よく聞ききます。

多様性・公平性・包括性。これらを目指す私たちのゴールはどういうものなのか?

一言では言い表せないものだからこそ、デザインの力もかりてビジュアルで訴えることも必要だと思っています。そして、やはり言語化すること。思っているだけでは変わらなくて、思っていることを言葉や文字や映像にして可視化することが必要だと思います。

それはきっと、マスコミ業界である私たちの得意分野のはずで‥じゃあ、私たちができることって何なのか?真摯に考えてみたいと思っています。

人は誰もが、マジョリティの部分とマイノリティの部分、両方持ち合わせています。

誰もがもつマイノリティな自身の経験から、みんなが「当事者として」このDEIが実現するゴールの目線合わせができたらいいなと思います。

人を変えるのはやっぱり「人」だと思うから。この活動に取り組む一人ひとりの想いが、私たちの社会の「進化」に繋がる一手と信じています。

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【国際女性デー特別企画】 北海道電通ゼンカツ×HTB座談会は北海道キカクラブでも連動掲載中

北海道キカクラブ:https://note.com/kikakulove/n/nd05fd9842718

【座談会の模様はこちらから】

HTB公式Sodaneチャンネル:https://youtu.be/fBH_LkoMZ3s?si=7Gs5nbTufTuCAybY

《プロフィール》

■寺岡 真由美さん
(株)電通北海道 エクスペリエンスデザイン局クリエイティブイノベーション部。クリエイティブプランナー・コピーライターとしての業務のほか、北海道キカクラブ編集部、全員活躍推進プロジェクトメンバーとしても活動。

■田中 直也さん
(株)電通北海道 経営管理局総務人事部。採用や人材育成、社内環境改善の業務に従事。全員活躍推進プロジェクトメンバー、キャリアコンサルタントとしても活動。

■阿久津 友紀さん
北海道テレビ放送(株) 東京支社編成業務部長。乳がん啓発活動や、セルフドキュメンタリー『おっぱい2つとってみた~46歳両側乳がん』(2020年)で民放連賞・ギャラクシー賞などを受賞。書籍『おっぱい2つとってみた がんと生きる、働く、伝える』も出版(2022年)。

■森 さやか
北海道テレビ放送(株) アナウンス部 副部長 兼 ワークライフバランス・ダイバーシティ推進部。

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この記事を書いたのは

森さやか(HTBアナウンサー)

夕方の情報番組「イチオシ‼」MCを担当するなど20年出演。
ラーメンの食べ歩き歴25年。2児の母。
絵本セラピスト、防災士、ワークライフバランスコンサルタント、笑顔のコーチング指導員としても活動中。

コミュニケーション・話し方/接遇マナー/アンコンシャス・バイアス/ハラスメント研修など、講演活動も多数行う。
ジェンダー平等の課題解決を目指す「ジェンダーコレクティブ北海道」にも参画。

地域課題の取材を通して、子育てや介護、病気などの事情を抱えていても、自分らしく生きられる社会を目指し、北海道の地域や企業の事例・取り組みを紹介している。

<これまでに制作したドキュメンタリー番組>
■平成28年日本民間放送連盟賞 特別表彰部門「青少年向け番組」優秀賞を受賞
「おはよう。いただきます。さようなら。~弁華別小学校最後の一年~」
https://www.htb.co.jp/hn/log/2016/04021053/

■北海道映像コンテスト2019 番組部門(放送)で優秀賞
「ごはんだよ。~にじ色こども食堂~」
https://www.htb.co.jp/hn/log/2018/05051000/