40分間に同じ法廷で4回の判決公判! いたずら電話で警察を振り回した男、鍵穴に接着剤、天ぷら調理中にネコが…多種多様な事件

3月31日、年度末。

この日、札幌地裁で開かれる裁判はいつもより少なかった。異動シーズンで引継ぎなどもあるため、裁判所も人繰りは大変なようだ。そんな状況下で開かれる裁判は…

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9:50~10:00  器物損壊事件 判決

10:00~10:10 偽計業務妨害事件 判決

10:10~10:20 覚せい剤取締法違反事件 判決

10:20~10:30 重過失失火事件 判決

わずか40分の間に4つの判決公判。もちろん、判決公判は簡潔で、よほど大きな事件以外すぐ終わるのが常だが、それにしてもよくも詰め込んだものだ。スケジューリングした裁判官も大変だったと思われる。

4つの裁判とも同じ裁判官、同じ検察官が担当。法廷で弁護士と被告人だけが入れ替わり立ち替わりで代わっていった。

器物損壊事件 人の玄関ドアの鍵穴を何度も壊す男…裁判官「落ち着いて生活してほしい」

白髪のオールバック。上下とも紺色の作業着を身に付け、拘束された状態で法廷に入ってきた男。問われている罪は次の通り。3度にわたる執拗な器物損壊だ。

①今年1月某日、札幌市豊平区のマンションの玄関ドアのカギ穴にペンチを突っ込んでシリンダーを破壊。

②別の日、同じ玄関ドアのカギ穴にペンチで壊し、ねじをつっこんでシリンダーを破壊。

③別の日、同じ玄関ドアのカギ穴にティッシュペーパーを突っ込み、さらにつまようじと接着剤を流し込みシリンダーを破壊。

1回ごとに被害額は1万3200円。3回の犯行であわせて3万9600円の被害。

判決は懲役1年4か月。実刑となった。

男は同じような事件をこれまでも複数回繰り返していて、今回の事件も前回の刑期が終了してすぐの犯行だった。

裁判官は「今後は人に頼ったりクリニックに通ったりして落ち着いた生活をしてほしい」

男を諭した。

偽計業務妨害事件 警察官を振り回すいたずら電話男 以前は「パルコに爆弾」事件も

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続いての事件は「偽計業務妨害」。ウソをつくなどして、人の業務を著しく妨害した罪ということ。その男が業務を妨害したのは「警察」だった。

男はベロア調の質感のセーターにブルージーンズ。身長も高くすらっとしていて、髪は白髪まじりで、頭頂部はだいぶうすくなっていた。

今年2月、札幌駅前通り歩行空間「チ・カ・ホ」の公衆電話から110番通報し「これから刃物で人を刺しに行きます」と警察に伝えた。その後、札幌中央警察署の警察官はおよそ1時間もの間、警戒にあたらねばならなくなり、通常の業務が妨害されたという。出動した警察官は47人。

男はこれまでにも「威力業務妨害」や「偽計業務妨害」で逮捕・起訴されている。常習犯だ。その中には「パルコに爆弾を仕掛けた」というウソの電話をかけたケースもある。

裁判官は「累犯の事件を多数行い、前回の刑期終了後わずか5日で犯行及ぶなど厳しい非難は免れない」として懲役2年6か月の実刑判決を言い渡した。

覚せい剤取締法違反など 前回大麻取締法違反での執行猶予中に犯行

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続いて法廷に現れたのは若い男。黒髪マッシュヘアにグレーのスエットと黒いジャージのパンツ。首には文字のタトゥーが入っていた。傍聴席からはよく読めなかったが、英文ではなくフランス語のような文面のように見えた。

男は2023年に大麻取締法違反と窃盗の罪で起訴され、執行猶予付きの有罪判決を受けていたが、今回の犯行はその執行猶予中に起こしていた。

裁判官が主文を読み上げ「懲役1年6か月」と判決を下すと、「うん」というようにうなづいた被告。

裁判官は「自分を見つめなおし、二度とこういうことをしないようにしてください。自分の夢をもってしっかり頑張ってください」と男に語りかけた。

重過失失火…天ぷらの調理中にネコに気を取られ火災を引き起こす

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最後の裁判は唯一の保釈された被告人に対する裁判。私たち傍聴人と同じドアから法廷に入ってきた。高齢の女性で白髪交じりの髪を後ろで一つにまとめている。

被告人が問われているのは「重過失失火」…火災が予見できるのにも関わらず注意を怠り、火災を引き起こしてしまった罪だ。2022年、被告人は天ぷらを調理中、ネコに気を取られた被告人は15分もの間、火をつけたまま鍋を放置してしまった。この火災によって、消火しようと家に入っていった男性が死亡するという悲劇も引き起こしていた。

判決は禁錮1年。執行猶予3年。亡くなった方の遺族の処罰感情は強いものの、被告が反省・謝罪していて、監督する家族らがいることからこのような量刑になったと裁判官は話していた。

…………

年度末の裁判所は、このほか数件の民事事件と簡易裁判所が取り扱う事件1件のみだった。

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この記事を書いたのは

HTB Court Watcher

元HTB報道部・社会班キャップ
SODANE編集部に在籍しながら、たまに趣味の裁判傍聴のため
札幌地裁・高裁に出没。傍聴する裁判は刑事・民事問わず。