札幌のビジネス街で「貸」茶室が人気になっているワケ

①札幌のビジネス街にある貸茶室.JPG

表千家、裏千家など各流派の茶道教室の会場として、札幌の中心部、テレビ塔近くのビルにある「貸茶室」が人気を集めている。この茶室は2025年春に北海道のビジネス街で初めてできた民間の貸茶室で、札幌という土地柄も関係して茶室が賑わうに至った経緯を茶室が入るビルのオーナー松﨑孝弘さんに伺った。

②茶室のオーナー松崎さんも習っている.JPG

他の受講生とともに茶道教室で学ぶオーナーの松﨑さん

 「もともと貸茶室ではなくダンス用の部屋だった」と松﨑さんは言う。「新型コロナウイルス感染症の流行で、利用していたダンス教室の生徒が減って貸ダンス室の利用者がいなくなった。ダンス用にお金をかけて立派な床に仕上げており、これを解体してしまうのはもったいないとのことで知人の経営者らに相談したところ「茶室」はどうかとの話を受け、茶室に改装することに決めた。」

③天井に付く金物、向きや形状など流派で違う.JPG

釜蛭釘(かまひるくぎ)と呼ばれる釣釜をかけるために天井に取りつける釘。流派で取り付け位置や向きなど様々な違いがある。

 茶道は、表千家、裏千家、武者小路千家の「三千家」をはじめ数多くの流派があり、流派によって作法が違うことは広く知られているが、茶室についてもその造作は流派で細かく違いがある。松﨑さんが直面したのはこの「造作」の違いをどうするかだった。使われる金具、畳の一つとっても、こまかな形状、材質、向き、配置に違いがある。どの流派にも合わせるのは難しいため、「汎用性のある茶室」にすべく表千家札幌支部などに相談して茶室を仕上げたという。また茶室だけではなく、様々なシチュエーションに対応するための道具も専門家に聞きながら手作りしている。

④腰掛点前棚など自作で用意.JPG

腰掛点前棚など自作したものも

 ところで、茶室を完成させたが、なぜ盛況となっているか。その点については「札幌の中心部という場所が影響している」と松﨑さん。札幌の中心部には、全国展開する支社・支店が集まり、多くの方が転勤してきて働いている。そこに働いている人たちの中には、各地で挨拶、打ち合わせなどの席で「茶道の知識があったら良かった」、「作法を知らず恥をかいた」、「先輩社員の茶道の所作が新たなビジネスにつながった場面に居合わした」という声が多くあった。隠れた茶道の需要を偶然発掘し、ビジネス街に茶室が誕生したことで偶然にも需要と供給がぴったり重なった。

⑤会社帰りに茶道を習う.JPG

仕事帰りに習う受講者。和室は笑顔もあふれ、穏やかな雰囲気

「せっかく札幌に転勤して来たのだから、何か一つ北海道で得てみよう」という気軽さで学ぶ若い会社員も多い。この茶室で行われる教室では、分からないところ、見えないところがあれば、立ち歩いて、手元をのぞき込むことも許される自由さがあり、むしろその「熱心に学ぶ姿勢」が受講者に次々と伝播して、とても熱量の高い茶道教室になっている。そして印象的なのは、堅苦しさは無く、皆笑顔であることだ。そんな穏やかな雰囲気も手伝って受講する人が増えているという。

⑥お茶の点て方に初挑戦する方.jpg

 貸茶室「淸松庵」は、京間サイズの畳で炭点前にも使用可能。約22坪の広さがあり、茶会等にも利用されている。立礼で利用することもあるそうだ。札幌在住の社会人はもちろん、札幌市内中心部で働くことになった転勤者も一度「ビジネス街の貸茶室」で習ってみてはどうだろうか。

【淸松庵】(せいしょうあん)

場所:札幌市中央区南1西1-2 松﨑ビル(地下鉄大通駅37番出口より徒歩1分)

問合せ:011-242-1516(平日9:3016:30

 

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この記事を書いたのは

SODANE編集部

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