「当然とるものだと思っていた」男性育休のリアル 朝日新聞北海道の“男性育休ファーストペンギン“佐々木さんが語る

2026年3月8日の国際女性デー「ミモザの日」に合わせて行われた『HTB創世ミモザマルシェ』。トークイベントでは、男性育休をテーマにトークセッションを開催。

育休を取ろうと思ったきっかけや、職場の反応、育休を経て変わった価値観とは!?

朝日新聞北海道報道センター佐々木洋輔さん(45)

山形県出身。2004年に朝日新聞に入社後、徳島、奈良を経て、東京本社ではデジタル編集部で、主に朝日新聞デジタルの出稿や編成の仕事を担当。

2021年に北海道に赴任。記者を3年経験後、昨年の4月からデスク業務を担当。

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「育休取得」をどう決めた?

佐々木さんは、朝日新聞北海道で、初めて育休を取得された男性、いわゆる“ファーストペンギン”です。「育休をとろう」と思った経緯を伺いました。

「昨年の4月から6月までの2ヶ月間、休暇をとりました。「育休」については、もう自然の流れで「当然とるもの」と思っていました。本社の同期や仲間の男性も育休取得者が多くいましたし、復帰した仲間からは「取ってよかったよ」という話を聞いていたので、育休に対していいイメージしかもっていなかったんです。」

と話す佐々木さん。

妻の妊娠が分かった時点で、会社にすぐに伝えました。

朝日新聞社には『意思確認シート』で育休を取得したいかどうかなど希望を記して提出する申請制度が設けられています。

どのぐらいの期間で、いつからいつまで取得しようか。会社と相談しながら、2か月の休暇取得を決めました。

「私の場合は、会社との相談の中で、育休制度を利用したというよりは「子の誕生休暇」(2週間)「子のつきそい休暇」(2歳まで)など有休を組み合わせて2か月の休暇としました。育児休業制度を利用すると、社会保険の手続きを解除したり、また戻る時に復活させたり、色々と手続きが必要になります。休暇の種類によって社会保険や、積み立てなどを変えずに取得できるパッケージを、給与がどのくらいになるかも含めて会社から提示してもらえたことが、スムーズな取得に繋がったと思います。」

男性育休について、当事者からの声でよく聞かれるのが、収入の部分の不安や「会社に戻ってきた時にスムーズに戻れるか」「お休みしてる間に皆に迷惑をかけてしまう」という心理的な不安です。 

佐々木さんは、妊娠が分かった時点で早めに会社と相談しながら準備を進められたことと、職場の仲間や上司が、育休取得を当然のことだと背中を押し「今しかできないことをやった方がいい」と応援してくれた環境があったことで、不安を持たずに休暇を取得できたのだと言います。

朝日新聞社の子の誕生に関わる休暇制度

●子の誕生休暇

対象:新たに子どもを迎える従業員 ※配偶者が働いていなくても取得可。(出産する女性従業員は産休期間中のため、対象外)

期間:子の出生予定日または出生後8週間以内に4週間まで(公休含む)。分割して計2回取得可。

ベビーケア休暇

出産予定日2カ月前から出産日4カ月後までの間に計7日間取得可能。(分割取得、半日単位の取得も可)

「お金では買えない、今しかない時間」育休中の気づき

2か月の休暇は佐々木さんにとって貴重な時間になったと言います。

「会社入って20年以上、こんなに長く家にいることはなかったなと思いましたし、やっぱり子育てするのはとっても大変だなという驚きがありました。一方で、子どもは自分を笑顔にさせてくれる存在だということと、育児に正面から向き合う時間は「お金では買えない、今しかない」そんな経験をできる時間だなと思いました。」

実際に育休を取得したことで、子育てや家事への向き合い方も変わっていったのだそうです。

「アンテナが変わったな、と思った」復帰後の仕事

育休を経て、6月から復帰した佐々木さん。ここまで怒涛の半年だったと振り返ります。

「お風呂を洗ったり、朝のルーティーンは家事・育児を1~2時間行ってから出勤しています。デスク業務も抱えながらではありますが、自宅と職場が近いので、時間をみつけて60~90分程度、一度自宅に帰って、子供をお風呂に入れるなど妻のサポートをしてまた出社するといった、フレキシブルな働き方をしています。上司も「時間の使い方は自分で決めていいよ」と家庭と仕事の両立を応援してくれています。」

自宅と職場が近いからこそ家事参画もしやすい、という話を聞いて、これは“北海道のメリット”かもしれないと感じました。

関東など通勤時間が長くなる場所では難しいですが、通勤時間が比較的短い環境である北海道では、男性も家事育児に参画しやすい環境とも言えるのかもしれません。自宅と職場を行き来しながら育児中どうしてもサポートが必要な場面があった時に対応できる、そんな環境や働き方が実現できれば、家事育児を女性だけのものにしない未来になるのではないでしょうか。

日々の関心事も大きく変わり、これまであまり関心がなかった「生活」や「教育」などの分野への関心が高まったと佐々木さんは言います。新聞記事や雑誌のママ友の連載記事などを妻と一緒に読むようになったそうです。そして、仕事への向き合い方にも大きな変化がありました。

「"アンテナがとても変わったな"っていう風に思いました。自分の中で情報に対する接し方が豊かになったなと思いますし、育休を経て、今まで見えなかったことが見えるようになった!というのは、とても良かったと思います。デスク業務をする中で、部下の女性記者から発達障害の子どもをテーマした連載企画が持ち上がった時にも、子育てという視点から一緒に考え、伴走することができました。」

と語る佐々木さん。

育休を経て新しい価値観をみにつけることは「新たな企画や商品」を生み出すことに繋がっていきます。女性だけでなく、男性にもこうした経験を得られると、女性と男性が共有できるものが更に増え、ビジネスチャンスを増やせることも期待できます。

柔軟な働き方を可能にする「仕事と育児の両立支援制度」

朝日新聞社の制度について聞くと「仕事と育児の両立支援制度」が非常に細やかなことに驚きます。

「時間外や休日深夜労働への配慮」や「始業時間の繰上げ・繰下げ」「短時間勤務制度」などを、子が中学卒業まで申請が認められます。

短時間勤務制度は7パターンから選べる内容になっており、様々な環境や条件を持つ人に対応できるよう非常に柔軟な制度が設けられていました。
女性と限られていないので、男性社員も家庭の環境や、妻の仕事、子の進学や成長に合わせて利用できる、幅の広い支援がまた素晴らしいと感じます。

育児の勤務配慮 

●育児時間:子が2歳になるまで勤務の前後に1日1時間(2回に分割も可)取得可能

●定時間勤務:子が小学校就学前まで時間外を伴わず勤務可能

●時間外・休日・深夜労働:子が中学校卒業まで配慮の申請が可能

●始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ:子が中学校卒業まで、2時間の範囲内で変更の申出が可能

両立支援制度

●短時間勤務制度:子が中学校卒業まで、7パターンから選べる

●在宅勤務制度:最大3時間まで業務を中断できる

●一定期間転勤を免除する制度:子が小学校就学前まで。

●特別休暇:子ども付き添い(年5日)・ならし保育(有給5日)(無給1カ月※取得要件あり)・家族看護(年1日)など

男性も育休や両立支援制度を活用できる職場環境に支えられて、佐々木さんは今、家庭と仕事の両立を実現できていると言います。

「男性育休が社会的にも推奨されて、社内でも理解や認知度が広がっていくことは、良いことだと思います。10 年前に弊社がここまで男性に対してあのオープンだったか?というとそうではなかった。この10年かけて、少しずつ少しずつ「これが当たり前」のように認知されてきたと思っています。」

「今後は、父親が抱える育児の悩みなどの情報発信もしてみたい」

朝日新聞北海道で初めて男性で育休を取得した佐々木さんは、自分が取ったことによって、この後、男性育休を取得したい仲間がいたら、是非応援したいと思うようになりました。

今後は、男性や父親が抱える“モヤモヤ”をエッセイのような連載にもしてみたいと考えます。

男性同士は、なかなか育児の悩みを共有するような機会がない。そうした発信は、新しい取り組みになりそうだと話してくれました。

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国際女性デー:男性育休について想うコト

「世の中が悪くなる時はあっという間ですが、良くなる方向に行く時は結構長いスパンで考えないといけないだろうなと思っていて、男性の育休や家事参画、それによって女性の活躍の幅が広がり、男性も女性も自分らしい生き方を選択できるようになるためには、諦めずに地道にこういった国際女性デーでの発信などを続けて、広げていくことが大事なんじゃないかなと思います。」

佐々木さんは、自身の育休の経験から得たことや考えをこのように語ってくれました。

子育ては女性だけのものではない。

そんな「あたり前」が広がっていくといいなと思います。

女性は、結婚・出産などライフイベントに大きく左右され、働き方にも不安を感じる人や場面が少なくありません。それは“個人の弱さ”ではなく、社会全体の仕組みによって生じる問題や悩みであることも。

歴史の中で積み重ねられてきた価値観や慣習によって、無意識につくられた社会構造やシステムを見直してみる。そのことの重要性を、男性育休について佐々木さんとのトークセッションで改めて考えさせられました。

トークセッションの様子は、こちらでご覧いただけます。

YouTube「男性育休のリアル 朝日新聞社の場合 【SODANE】HTB創世ミモザマルシェ」ライブ配信アーカイブ:https://www.youtube.com/live/fOLlONG9LYI?si=v_paI6IOToh4_z5z


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この記事を書いたのは

森さやか(HTBアナウンサー)

夕方の情報番組「イチオシ‼」MCを担当するなど20年出演。
ラーメンの食べ歩き歴25年。2児の母。
絵本セラピスト、防災士、ワークライフバランスコンサルタント、笑顔のコーチング指導員としても活動中。

コミュニケーション・話し方/接遇マナー/アンコンシャス・バイアス/ハラスメント研修など、講演活動も多数行う。
ジェンダー平等の課題解決を目指す「ジェンダーコレクティブ北海道」にも参画。

地域課題の取材を通して、子育てや介護、病気などの事情を抱えていても、自分らしく生きられる社会を目指し、北海道の地域や企業の事例・取り組みを紹介している。

<これまでに制作したドキュメンタリー番組>
■平成28年日本民間放送連盟賞 特別表彰部門「青少年向け番組」優秀賞を受賞
「おはよう。いただきます。さようなら。~弁華別小学校最後の一年~」
https://www.htb.co.jp/hn/log/2016/04021053/

■北海道映像コンテスト2019 番組部門(放送)で優秀賞
「ごはんだよ。~にじ色こども食堂~」
https://www.htb.co.jp/hn/log/2018/05051000/