議員は新しい「職業の選択肢」北海道の女性議員が語るリアル 地方女子


北海道の女性のお仕事:地方議員という生き方

 3月8日の国際女性デーにあわせて北海道で活動する女性議員たちの「リアル」に迫るトークセッションが開催されました。登壇したのは、江別市議会議員2期目の猪股美香さんと、札幌市議会議員1期目の篠原すみれさん。司会は「Qの会北海道」会長の林美枝子教授が務め、現役大学生の山内雪白咲さん(北海学園大)と森崎秀一さん(北海商科大)が、若者の視点から鋭く、かつ素直な疑問をぶつけました。

議員を志した「それぞれの原点」

林: お二人は議員になる前、別のお仕事を持っていましたよね。なぜ議員という道を選び直したのでしょうか。

猪股: 私は福島県出身で、前職は広告会社の営業でした。社会人になった時、「女性は営業事務。外に出すのは相手に失礼だ」と言われたのが私のスタートです。その後、2011年の東日本大震災で被災し、お腹にいた長男を産むために北海道へ移住しました。母子避難生活の中で「女性であるがゆえの苦労」を痛感し、子育て支援や女性の環境整備をやりたいという思いで2期目を迎えています。

篠原: 私は行政書士として仕事を始めました。行政書士には「国民と行政の架け橋」という言葉がありますが、政治家という立場からもその架け橋になりたいと思ったのがきっかけです。また、自分自身の経験から「選択的夫婦別姓」を実現させたいという強い思いもあり、1期目として活動しています。今は従業員の力を借りながら、事務所経営と議員の仕事を両立しています。

「副業」は議員の活動にどう生きるのか

篠原: 行政書士として許認可の申請業務をメインにしていますが、これは「なぜこの書類が必要なのか」という法的根拠を考える仕事です。申請する市民側の気持ちと、受理する自治体側の狙いの両方を意識することは、議員活動にも生きていると感じます。

猪股: 私は議員になってから札幌のベンチャー企業で財務・労務の仕事も始めました。「女性は数字に弱い」という偏見があるかもしれませんが、実務で数字を扱っているおかげで、議会での決算審査などでも明るく指摘ができると自負しています。

大学生からの素朴な疑問:予算、そして「女性であること」

森崎: 予算の内訳などは、どこで勉強されたのですか?

猪股: 1期目の時は本当に何もわからず、職員の説明を必死に書き留めては調べ、先輩に教わる毎日でした。ある日突然、書類の中から「人件費が高いぞ」と課題が見えてくる瞬間がある。これは経験の積み重ねですね。

篠原: 私も今、頑張っている最中です。行政は複式簿記ではなく単式簿記だったりとルールも違います。政令市の札幌は桁も大きいですが、言い訳はできないので学びながら取り組んでいます。

山内: 企業の中では女性だからと苦労された話もありましたが、議員になってからはいかがですか?

猪股: 江別市議会は女性議員の比率が道内一高く、先輩方が発言権を切り開いてくれていました。委員長などのポストに女性がいるのも当たり前で、女性だからと不利に感じることはありません。

篠原: 私は行政書士として独立してからのほうが、女性としての壁を感じました。長男の産後1ヶ月から「男に負けない」と夜の会合にも出ましたが、周囲から「赤子がいるのに大丈夫か」と。男性なら「子供が生まれて可愛いだろう」で済む話なのに。今の議会では一定数の女性がいますが、夜の会合文化などには今も思うところがあります。

メンタル維持と「議員のやりがい」

山内: 批判も多い職業だと思いますが、メンタルはどう保っていますか?

猪股: 「自分の機嫌を取る」のが上手だと言われます。毎日寝る前にYouTubeを見て15分運動するんです。「今日頑張った自分は偉い!」と汗をかいて1日を終えると、嫌なこともリセットできます。

篠原: 私はもともと承認欲求が強く、嫌われたくないタイプ。でも今は「嫌われてもいい、わかってくれる人にわかってもらえれば」と意識しています。家に帰れば、家族は絶対に見捨てない存在。そこでバランスを取っています。

森崎: やりがいを感じるのはどんな時ですか?

猪股: 市民の皆さんの思いが形になった時です。以前、病気で骨髄移植を受けて免疫を失った中学生のお母さんから「再接種の費用助成がない」と相談を受けました。議会に請願という形で訴える方法を提案し、議員の賛同を得て提出しました。身近な議員を「ツール」として使ってほしいですね。

篠原: 小さなことでも、役所の方に伝えて改善された時は嬉しいです。結論が出にくい仕事だからこそ、どうすれば理想に近づけるかというプロセスを考えること自体に面白みを感じています。

家族の反応と「未来へのメッセージ」

森崎: 立候補する際、家族の反対はありましたか?

篠原: 夫に伝えたら「ああそうなんだ」という感じで、全く反対されませんでした。夫は家事全般をこなしてくれて、私が洗濯機の回し方すらわからなくなるほどサポートしてくれています。特殊なケースかもしれませんが、恵まれています。

猪股: 私は配偶者に反対されました。最終的には土下座をして「迷惑はかけないからやりたいようにやらせてくれ」と説得しました。人それぞれ、ドラマがありますね。

学生の2人は もし母が議員になると言ったら、忙しさや世間のイメージから反対するかもしれない、と話しましたが、お二人の中に入るなら大丈夫、という発言も飛び出しました。友達が議員に、という場合は積極的に応援したい、という気持ちになったとのこと。

猪股: 選挙は「仲間づくり」です。そして若い皆さんの声こそ、これからの政治に必要です。なぜなら、私たちが今決めていることは、皆さんの未来の生活そのものだからです。

篠原: 「専業主婦」も「議員」も、どちらも素晴らしい人生の選択肢です。大事なのは、選べること。人生の中で選択肢を一つでも増やせる社会にしていきたいと思っています。


編集後記: 「政治家は特別な人」という壁を壊してくれたお二人の言葉。土下座で道を切り拓いた猪股さんと、家族に支えられ信念を貫く篠原さん。市民に寄り添う姿勢は共通していました。投票して終わりではなく、議員と共により良い街を作る。そんな「手の届く民主主義」の形が見えたトークセッションでした。

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この記事を書いたのは

SODANE編集部

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