​​15周年を祝った『Branch』完遂!ーーLAMP IN TERRENが魅せたドラマティックなストーリー

 LAMP IN TERRENは11月13日(土)、15th Anniversary ONE-MAN LIVE『Branch』の東京公演を日本青年館で開催した。地元長崎でも既に開催した、結成15周年を記念したライヴ。彼らはワンマンとしては初のホール公演に挑み、美しくも多幸感に溢れたストーリーを描いた。

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 まず会場で目を引いたのは、ステージの中心に向かって階段上に組まれた白いセット。どのようにメンバーのパフォーマンスを引き出すのか……BGMとして流れるボレロの調べと共に期待感が膨む中で、客席は突然暗転。文字通り上空からも拍手が鳴り響く中、メンバーが登場した。ゆったりとステージ中央に歩みを進める松本大(Vo,Gt,&Pf.)。無音となった空間に最新楽曲“ニューワールド・ガイダンス”のイントロが鳴り響き、遂にライヴがスタートした。

 不穏なコード感の中、スタンドマイクに囁くように歌を紡ぐ松本。<迷ったここが新世界>という歌詞が放たれると、ステージ上に「この世の微かな光」という意を携えたバンドロゴのネオンが点灯し 、本当の意味で始まりを告げる。ラストにはストロボに照らされる中で絶大な熱量を叩きつけ、1曲目にして会場はピークタイムを迎えた。先制攻撃でホールという空間を自らの色で飲み込むと、松本は「どうぞよろしく」とオーディエンスへ堂々と開幕宣言を届けた。

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 15周年記念ライヴということもあり、初期から最新楽曲までがタッグを組んで展開された本ライヴ。まず触れたいことは、彼らがホールという空間を乗りこなす素養を悠々と備えていたことだ。「空に落ちる」世界観を浮遊感のある空間系のウワモノと創りあげた“Enchanté”、ロックバラードとして非の打ちどころのないドラマを生み出した“緑閃光”ーー挙げればキリはないが、一介の邦楽ロックとは明らかに異質のタムワークや、深い位置に陣取るスネアが光る川口大喜(Dr.)のリズムを中心に、ホールという広い空間を意のままに包み込んでいく。

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 また、いわゆるロックバンド然とした楽曲の威力が明らかに増していたことにも触れたい。今となっては欠かせない、鍵盤の旋律が楽曲に加わるきっかけとなった“innocence”は特に圧巻だった。歪んだサウンドを携え、ボトムの位置でドライヴ感を司どる中原健仁(Ba.)の安定感は、急遽トラブルでベースを持ち替えた影響は微塵も感じさせず、バンドのダイナミズムをより強固に。リアレンジが加わったブレイクから辿り着いたラスサビの威力は、以前とは比べ物にならないほどの破壊力を放っていた。

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 そして“Water Lily”、“花と詩人、“心身二元論”と連なったラヴソングのセクションも彼らのバンドとしての幅を示した。特に、今年リリースした“心身二元論”は彼らの間違いなく新境地。R&Bの潮流に乗ったアーバンなアレンジとドランクビートの中で、各パートが即興的に音を重ねているかのように見える自由なパフォーマンスは、彼らの音楽的な歩みが挑戦と共に成り立って来たことを語っていた。

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 しかし、この日間違いなく白眉だったのは“BABY STEP”からラストの”EYE”に至る流れだっただろう。孤独というものと向き合い続け、ある答えに辿り着くバンドのストーリーを完全に描き切ったからだ。

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 “BABY STEP”はまるでこの日のために生まれたのではないかと思う程のスケールを、ストリングスを纏ったイントロから見せつける。そこから飛び込んだのは“風と船”。ここからは、まるで松本が孤独と向き合って来た時間をプロローグ的に見せていくようにストーリーが展開していく。セットの上でただ独り、時には仰向けになり、時には足を遊ばせながら、演劇の世界にいるかのように松本は歌と共に楽曲の中を泳いだ。大屋真太郎(Gt.)の美しくも寂しさを増長するギターソロがさらにその世界を浮き彫りにしながら、場面は“月のこどもたち”が描く月夜へ。目に見えない場所へ手を伸ばしながら祈りを捧げるような歌を残すと、“Fragile”と“New Clothes”で場面は大きく展開する。このパートが描くのは「気付き」だ。どちらもオーディエンスに語りかけるのは、過去でも未来でもなく「現在」という刹那に自分がどのように存在しているか、自己という存在は他者なしには存在し得ないということだ。

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 叫ぶように孤独からの一歩を踏み出した彼らのストーリーは、エンディングへ向かってさらに加速。“涙星群の夜”と“地球儀”は極上の多幸空間を生み出し、松本から「最高!」という言葉も飛び出した。そして、貴方の選択が創り上げてきた世界はいつだって正しいと語る“multiverse”を噛みしめ、物語は遂にエンドロールへ。

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 ここで松本が口を開く。オーディエンスに感謝を伝えた後、彼はこのように話した。「自分の人生に意味があるなんて、誰にも決められない。俺がやってきた15年、意味があったかなんて俺の中でしか決められない……だから、自信を持って、死に物狂いで、歌ってるんだと思う。ーー届いてますか」そう話すと、会場からは大きな拍手が。そして、彼は言葉を続ける。「いつも、今が一番生きてる。生きているってことを表現するのは、凄く難しい。でも……俺が選んだ今日、俺が此処にいる証」ーーこう話して辿り着いた大団円は“EYE”。孤独の旅を続ける中で掴んだ<ただ目の前の全てと/手を繋いで ずっと汚し合おう/全てぎゅっと抱き締めるよ>というラインは、彼らが生きていくための宣誓であり、間違いなく目の前に広がるオーディエンスへ向けた愛情の花束だった。

 アンコールはまるで物語のエピローグのようにホッとするような時間に。ラストには、12月8日に配信も決まったEP『A Dream Of Dreams』から、オーガニックな柔らかさを持つ新曲“カームダウン”を届け、暖かな雰囲気でライヴは終了した。
 15周年という歩みを彼らの楽曲に流れ続けていた孤独との旅路と共に描きながらも、最後にはホール全体に多幸空間を生み出したLAMP IN TERREN。12月28日に開催される、川口の脱退前最後となるワンマンライヴ『A Dream Of Dreams』まで彼らを見逃さないで欲しい。間違いなく、彼らのストーリーに新たなページが刻まれる日となるはずだから。
(テキスト:黒澤圭介)(撮影:浜野カズシ)

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セットリスト

1. ニューワールド・ガイダンス

2. Enchanté

3. ランデヴー

4. innocence

5. heartbeat

6. 緑閃光

7. Water Lily

8. 心身二元論

9. 花と詩人

10. BABY STEP

11. 風と船

12. 月のこどもたち

13. Fragile

14. New Clothes

15. 涙星群の夜

16. 地球儀

17. multiverse

18. EYE

EN1. メイ

EN2. カームダウン

リリース情報

タイトル:「A Dream Of Dreams」
配信日:2021年12月8日(水)0:00~
収録曲:
M1 カームダウン ※11月22日(月)21:00全国ラジオ局にて一斉解禁
M2 心身二元論
M3 ニューワールド・ガイダンス

公演概要

LAMP IN TERREN One-Man Live 2021
「A Dream Of Dreams」

12月28日(火) 東京LIQUIDROOM ebisu
OPEN:18:00 / START:19:00
※開催時間は全て予定。新型コロナウイルス感染拡大状況によって変更となる可能性があります。

【TICKET:前売¥4,500(税込/別途要1ドリンク代) / 当日券未定

◆オフィシャル先行予約
https://eplus.jp/lit211228/
11月17日(水)23:59まで

ARTIST INFO

2006年、長崎県で結成。
ラテン語の「terra(星、大地)」を捩った造語であるこのバンド名には、「この世の微かな光」という意味が込められている。
2013年12月、オーディションプロジェクトMASH A&Rの「MASH FIGHT Vol.2」とRO69が主催するコンテスト「RO69JACK」で共にグランプリを獲得。
2015年1月A-Sketchよりメジャーデビュー。
2018年1月より、毎月26日に渋谷Star loungeにて200名限定の定期公演ワンマンライブ『SEARCH』をスタート。LAMP IN TERRENの"実験室"と位置づけられた定期公演では毎月メンバーのチャレンジが繰り広げている。
最新作はコロナ禍において制作された2020年10月リリースのアルバム「FRAGILE」。それを提げて2020年秋には全国20公演のワンマンツアーを感染予防対策を行なった上で回るなど、時世に合わせて積極的に音楽活動を行なっている。
松本の描く人の内面を綴った歌詞と圧倒的な歌声、そしてその声を4人で鳴らす。LAMP IN TERRENは聴く者の日常に彩りを与え、その背中を押す音楽を奏でる集団です。
最新曲は9月1日にデジタルリリースとなった「ニューワールドガイダンス」

OFFICIAL HP:http://www.lampinterren.com/
Twitter:@lampinterren
Instagram:@lampinterren
OFFICIAL LINE:https://line.me/R/ti/p/%40lampinterren
Facebook:https://www.facebook.com/LampInTerren

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この記事を書いたのは

黒澤圭介

音専誌『MUSICA』/MASH A&Rなどを経て、現在は札幌在住。某メディアに所属しつつ、ライターも気ままに継続中。
音楽・映画(特にSF)・小説・珈琲・特定のラジオを好みます。
情報発信はこちらより。

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