カラダの困りごとを本音トーク!「言い出せない」を越える、これからの職場づくり
2026.04.04
働く女性の心と体には、実は「言い出しづらい」課題がたくさん潜んでいます。そんなリアルな実態について、企業の垣根を越えて語り合うトークイベント『カラダの困りごとを本音トーク!女性の健康ちょっと言い出せない話題だけど本音で話してみよう!』を開催。そこで語られたのは、単なる「個人の悩み」に留まらない、現代の組織が向き合うべき深いテーマでした。
・国分北海道株式会社 執行役員 経営統括部長 兼 人事総務部長 萩庭 寿人
・国分北海道株式会社 人事総務部 人事総務課 主任補 大久保 亜梨朱
・日本たばこ産業株式会社 北海道支社 総合営業第三チーム 部長 島田 典俊
・株式会社あいプラン フューネラル部 人財開発課 人財開発係 永井 楓
・(聞き手)HTBアナウンサー森さやか

月経、PMS…「女性同士でも分からない」個人差の壁
森:厚生労働省のデータによると、女性の健康課題は就職して社会に出る20代から30代に集中しています。月経にまつわる不調や、ストレスによる過食などの摂食障害、ホルモンの影響など多岐にわたりますが、皆様はどのような印象をお持ちですか?
萩庭:ある程度は知っているつもりでしたが、身体的な面だけでなく、メンタルへの影響もあることには驚きました。
島田:月経や子宮の課題など、女性ならではの悩みが非常に多いと感じる一方で、一つ一つの症状については、正直なところよくわからないというのが本音です。
大久保:PMS(月経前症候群)やホルモンバランスの影響は個人差が大きく、実は女性同士でも理解し合うことが難しいんです。ホルモンと一言で片付けられると「それだけなのかしら」と不安やモヤモヤを感じることもあります。
女性にはこんなにも特有の健康課題がある中で「男性は、いいな」と少し思ってしまいました。
永井:本当に個人差が大きいですよね。私の場合は腹痛や頭痛、気持ちの波といった症状ですが、中には「めまいで起き上がれない」「ひどい吐き気がある」という方もいます。同じ女性でもすべてを理解してあげられない部分があるので、男性であればなおさら難しいと思います。
森:しかも、ホルモンの不調は「今月は少し楽だけど、先月は辛かった」というように、月によっても変動しますよね。職場でどのようにフォローし合うかが難しいところです。
上司の葛藤と「言葉選び」の難しさ
萩庭:私は先日フェムケアのワークショップに参加し、そこで初めて女性の健康課題について学びました。男性として、部下にどこまで聞いてあげた方がいいのかは悩ましい課題です。
島田:我々も、どうやって状態を確認すればいいか言葉を選びますし、悩みます。上司としてどこまで話を振り、引き出せばいいのか、それとも待っていた方が女性は言いやすいのか、本当に難しいです。
永井:実は以前、職場の上司から「今月調子どう?」と聞かれたことがあるのですが、その「今月」という言い回しが少し“気持ち悪いな”と思ってしまったことがあります。ニュアンスや言い方の難しさは確実にありますね。
島田:センシティブな内容だからこそ、日常からどのような関係性を持てているかが肝になりますね。なるべく話してもらえるような雰囲気づくりや、「あなたのことを大切に思っているよ」と感じてもらえる接し方を心がけています。
個人差も大きい身体の不調。女性同士ですら難しいのですから、男性の上司からすれば「正直よくわからない」というのが本音でしょう。良かれと思った声かけのニュアンスすら難しいのが、この問題のデリケートなところです。
不妊治療は「女性だけの問題」ではない
森:妊娠や出産、不妊治療といったライフイベントについてはいかがでしょうか?特に不妊治療は決められた日時に通院する必要があり、パートナーの男性にとっても仕事との両立が課題になります。
大久保:私はまだ直面していませんが、将来自分がその立場になったとき、男性の上司や同僚に相談するのはなかなか難しいだろうなと想像します。
永井:私も今年28歳で、周囲に結婚や出産をする友人が増える世代です。中には陰で不妊治療をしている人もいるでしょうし、同性であっても職場のどこまで伝えていいのか、どこまで理解やサポートが得られるのか分からず難しいですね。
萩庭:あまりフォーカスされませんが、男性の不妊治療も大きな課題です。実は、女性よりも男性の方がこうした問題を非常に相談しづらい状況があると感じています。
島田:本当にそう思います。男性は本音を開示することにハードルを感じる人が多く、恐らく奥さんにすら言いにくい部分があるのではないでしょうか。
森:生理休暇を導入している企業もありますが、利用者は少ないと聞きます。「生理」という名前が言いづらさを生むため、例えば「健康休暇」といった名前にすれば、男性も不妊治療などで利用しやすくなるかもしれませんね。
実は男性も…心理的安全性と理解の浸透
森:どのテーマにおいても「心理的安全性」が重要ですね。お互いにどのような伝え方をすればよいでしょうか。
永井:私は健康診断の婦人科検査で引っかかった際、「検査で引っかかったので、この日お休みをいただいてもいいですか?」とストレートに伝えました。上司も「女性の病気について聞いていいのかな」と構えるのではなく、「自分の体に必要だから仕事は気にせず行ってきて」と言ってくれました。変に気を遣われるより、シンプルに「体のこと」「健康のこと」として扱ってもらえると、その後の続報も話しやすいと感じました。
萩庭:それは勉強になりますね。「女性だから」と構えるのではなく、「健康」を軸に話を進める目線は、普段の会話でも大切かもしれません。
大久保:私は永井さんのオープンな姿勢がすごいなと思います。婦人科の受診はデリケートな事情も多いので、受診することを言えても「どこまで事情を話すか」はかなりハードルが高いです。ただ、上司の立場で考えれば、体調や理由を把握しておかなければならないのも理解できるので、葛藤があります。
島田:立場上、メンバーの健康管理や安全配慮の責任がありますが、どこまで詳しく聞くべきかは非常に難しく、悩むところです。
森:「この人には言えるけれど、この人には言えない」というように相手による部分も大きいですね。もし直属の上司に言えなくても、組織内に相談できる人がいるかどうかが大切になってきますね。
「個人の気遣い」から「組織のシステム」への転換
島田:健康課題に起因する企業の労働力損失は年間3.4兆円に上るというデータがあります。また、男性の健康課題による損失も年間1兆2000億円に繋がり、男性自身が不調を打ち明けられないという調査結果もあります。
森:「男性は外で稼ぐ」「弱みを見せるな、泣き言を言うな」といったこれまでの性別役割分担のアンコンシャスバイアスもあると思います。男性にとっても職場で体調不良を言いづらいという悩みがあるのですね。
大久保:これまで男性の健康課題について直接聞く機会がなかったので「男性はいいな」と思っていましたが、実際は男性も色々と我慢し、女性以上に言いにくい部分があるのだと気づきました。そこには男女の差はあまりないのですね。
永井:「更年期」と聞くと女性のイメージが強かったですが、男性の課題についても知っておきたいと思いました。
萩庭:お互いに勉強し、知ることが解決への第一歩に近づくのだと思います。
森:男性の個室トイレにもエチケットボックスを置き、尿取りパッドを捨てられるようにするといった意見が言える場が増え、みんなで考えられるようになるといいですね。
島田:先ほどの経済損失のデータ(年間3.4兆円)を見ても、対策を打てばこの損失を防げるわけです。経済的な面からも、女性の健康課題は個人のコミュニケーションに頼るだけでなく、組織や企業として対策を打っていくべき経営課題だと思います。
トークセッションを終えて、思うコト
今回は、上司が部下にどのように声をかけるべきか悩むというリアルな葛藤を伺うことができました。ただしこれらを「上司のコミュニケーション能力」だけに依存するのは限界があります。
お互いの課題をタブー視せず、知識を持って寄り添い合える環境を作ること。そして、自社の中だけでは近すぎて恥ずかしくて言えないことも、このような企業間連携のプロジェクトを通じて学び合う機会を持つことが重要です。
「同じ女性だからわかってくれるだろう」「男性にはわからないだろう」という性別に基づいた前提を一旦捨て、「目の前のその人がどのような状態にあるか」を個別に知ろうとする姿勢が、相互理解の第一歩だと考えさせられました。
「カラダの本音」を語り合うことは、単なるガス抜きではなく、持続可能で強い組織を作るための、最も優しく、最も確実な投資なのだと思います。
YouTube「【SODANE】HTB創世ミモザマルシェ」ライブ配信アーカイブ:
