がんと共に生きる、笑顔でつなぐ未来 ― 北海道教育大学の学生たちと考える「知る」ことの大切さ コラム:両側乳がんになりました
2026.07.30
函館で行われた『がんを知る教室』。
多くの方に「YouTubeで見ました」「放送を見ました」と声をかけていただき、ありがたいなと思った函館での貴重な時間。地域づくりを学ぶ北海道教育大学の川瀬真心(かわせ・まこ)さんと、土山結桜(つちやま・ゆら)さんをお迎えして、どうすれば『がん啓発』できるのか、を考えました。患者の揺れ動く心、家族の葛藤、そして支える側の在り方。これらを皆さんと共に考え、未来へ繋ぐ一助になれば。

がんを取り巻く「今」を知る:クイズで学ぶ細胞の真実
いつも講演ではクイズを出します。人間の細胞の数と、毎日生まれるがん細胞の数は? 私たちの体はおよそ37兆個の細胞でできています。細胞がコピー(分裂)を繰り返す際、どうしてもミスが起きてしまいます。驚くべきことに、健康な人の体でも、毎日1,000個以上のがん細胞が生まれているという話をします。
乳がんが1cmの大きさになるまでには、実は10年〜20年という長い年月がかかります。しかし、そこから2cmになるまでのスピードは劇的に上がり、わずか1〜2年ほどといわれています。
「2年に1回の検診」が「早期発見・早期治療」につながるといえます。
なぜ北海道・函館の受診率は低いのか?:学生たちの鋭い分析
データを見ると、北海道の検診受診率は全国平均を下回り、特に函館市はさらに低い傾向にあります。なぜ「自分事」として捉えられないのか、学生の二人が鋭い分析を提示してくれました。
川瀬さんは、函館の地域特性に着目しました。 「函館は全国平均に比べて個人事業主の割合が高いというデータがあります。組織に守られた会社員とは違い、検診が個人の判断に委ねられていることが一因ではないでしょうか。予防医療への意識が地域にまだ根付いていない側面も感じます。」
一方、土山さんは若い世代のリアルな心理を代弁してくれました。 「20代や働き始めたばかりの世代は、『自分はまだ大丈夫』と思いがちです。何より、検査で何をされるのか分からない、触られるのが怖いといった『検査そのものへの恐怖』が、足を遠のかせている本音だと思います」
北海道ならではの事情もあります。巡回バス検診は便利ですが、その日の日程を逃すと、次のチャンスが1年後になってしまう。こうした「機会の制約」も、受診率を押し下げる大きな壁になっているのです。
私自身、46歳で両側の乳がんと診断されました。私自身は最近、国会などでも議論に上がった「高濃度乳房(デンスブレスト)」です。これは病気ではなく、アジア人女性の約7割に該当する「体質」のこと。
このタイプはマンモグラフィで見ると真っ白に写ります。ところが、がんも白く写るため、「雪山の中で白いウサギを探す」ように、がんが隠れてしまうリスクがあるのです。私の画像も真っ白で、わかりません。しかし、エコー(超音波)検査をしたところ、はっきりと「黒い影」が見つかりました。しかもしこりをつくるだけではなく、横に広がったり、散らばっていたり、、、乳がんのタイプも形もひとつではありません。
マンモグラフィだけで「異常なし」と安心せず、自分の乳房がどのタイプかを知り、必要に応じてエコー検査を組み合わせる。自分の体の特性を正しく把握することが、命を守る第一歩になります。来年度から知らせることが求められるようになります。
大切な人への伝え方、支え方:家族と仕事のリアル
がんと診断された時、最も悩むのは「誰に、どう伝えるか」です。
私が夫にLINEで「ガンの疑い」と伝えた時、返ってきたのは短くも力強い言葉でした。 「治療すればいいじゃん。大丈夫だよ、選んでこーねー(自分が選んだ道ではないのだから、気にするな)」 この一言に、どれほど救われたか分かりません。
会社への報告は、管理職としての立場もあり2ヶ月ほど悩みましたが、伝えてみると「君はどうしたいのか」と意思を尊重してくれました。手術を経て職場に戻った日、スタジオでカメラマンやスタッフたちが「おかえり」と大きく手を振って迎えてくれた光景は、一生の宝物です。
また、84歳の母への報告も忘れられません。ドキュメンタリー撮影中、意を決して伝えると、母は「なんでもっと早く言わないのよ」
母自身もサバイバーであり、娘を支えたい強い思いがあったのです。隠し事をせず、すべてを共有できたことで、その後の治療生活の心の荷物は格段に軽くなりました。(人によるとは思いますが)
こどもの視点・サバイバーの視点:土山結桜さんの場合
土山さんの視点の裏には、乳がんサバイバーであるお母様を支えてきた経験がありました。
「母が発症したのは私が4歳の時でした。当時は何が起きているか分からず、大学生になって今回、こういった話をすることになり、改めて母に話を聞き、初めて当時の母の葛藤を知りました」と語る土山さん。実はお母様は当時、親戚や自分の兄弟にすら打ち明けず、一人で孤独に病を抱え込んでいたそうです。
土山さんは振り返ります。「母が頻繁に病院へ行く姿を見て、子供ながらに不安でした。マンモグラフィが嫌だ、病院に行きたくないとこぼす母を見るのも辛かった。でも、今回改めて話して、ようやく『一人じゃないよ』と伝え合えた気がします。」
最新のエビデンスでは、子供に対して病気を隠さない方が良いという結果が出ています。隠し事から生まれる不安よりも、正しく伝え、共に歩む姿勢こそが、家族の絆を深めてくれるのではないでしょうか。
私たちが次にできること:これからの検診とコミュニケーション
お二人からの提言は受診しやすい環境づくりは・・・
- SNSを活用し、視覚的に情報を届ける。
- 5分くらいでささっと完了する予約システムの導入など、手間を減らす。
- 「検査の不安」を払拭する、温かみのある受診環境の整備と何が起こるのか、何をするのかを伝えること。
どれも素敵な意見です。
今の治療は「入院」は短く「通院」が長くなる傾向にあります。保険を見直す際は「通院補償」の有無を必ず確認してほしいです。
また、不安な時はネットの不確かな情報に惑わされず、国立がん研究センターの「がん情報サービス」や地域の「がん相談支援センター」を頼っていただきたいと思うのです。

一人じゃない、光の見える方向へ
がんになったことは悔しいし、無駄に傷ついたこともあります。でも、その経験を無駄にはしたくない。今は「人生、結構楽しかったな」と思えるように、一日一日を大切に過ごしています。
土山さんは「若い自分にとっても他人事ではないと気づいた。一人じゃないというメッセージを広めたい」と力強く語ってくれました。
ひとは一人ではありません。頼れる仲間がどこかにいて、進歩し続ける医療があります。
自分の選んだ道を、光の見える方向へ一歩ずつ。その歩みが、必ず次の明日に繋がっていくと信じています。


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