4Kカメラは重くて狭くてつらいよ・・・「たづ鳴きの里」番組裏話その①

普段は空き地状態だった遊水地に国の特別天然記念物タンチョウを呼び寄せようとした世界でも例のない取り組みを扱ったHTBのドキュメンタリー「たづ鳴きの里」。5年にわたる長期取材の結果、番組では100年以上ぶりに空知でタンチョウのヒナが生まれるまでの撮影をすることができた。その舞台裏を取材ディレクターが語った。


長沼でのタンチョウの撮影は2016年から始まりました。野生の生物を相手にするため、普段以上に注意を払いながらの撮影となりました。
特に換羽期でタンチョウが飛べない時期や、巣を作り抱卵が始まった時期の撮影は、タンチョウの専門家から厳しく撮影指導が入り、専門家の同行や「車の中からスタッフが出ないこと」、また撮影はOKでも放送時期をずらすなど、いろいろと条件がつけられました。
写真①は、その時の様子です。現場のすぐ近くで大きめのワゴン車の後部座席にカメラを設置します。そこからそろりそろりと堤防沿いを車で近づきます。そしてタンチョウを確認できたら遠く離れた場所に車を止め、そこから望遠で狙いますが、4Kカメラはでかくて重いし、車の中は狭くて、カメラを自由自在に扱うことができません。左右に振ることもできず、タンチョウが移動すると、すぐに画面のフレームからはみ出してしまうので、またエンジンをかけてそろりそろりと移動する、という繰り返しでした。

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写真①

ドローン撮影は更に慎重に行いました。タンチョウがいる時のドローン撮影は、専門家が同行しているときのみ行い、私たち取材クルーだけでタンチョウや巣の様子を撮影することは控えました。写真②はドローン撮影の時の様子。「調査中」と貼った車にタンチョウの専門家が乗っていて、助手席にはドローンの映像が見えるモニターを積んでいます。ドローンの操縦者は車の外(タンチョウのいる側と反対側)に座って、研究者の指示のもとで、近づいたり遠のいたりしながら撮影を行いました。専門家はタンチョウの動きで警戒しているかどうか判断できるため、私たちも逆に安心して距離を確保しながら撮影することができました。

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写真②

その他、農家の加藤さんの水田に定点カメラを設置して稲の生育を1月半にわたり撮影し続けたり(写真③)、水中カメラで水の中の生き物たちを追ったりして、長沼の豊かな自然や美しい田園風景を映像に収めることができました。27日の放送ではそうした映像をふんだんに紹介しています。

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写真③

是非お楽しみに!(ディレクター沼田博光)

「たづ鳴きの里~タンチョウを呼ぶ農民たちの1500日~」

6月27日(土)午後1時30分~(北海道ローカル)

<ナレーター> 森さやか 藤村忠寿 嬉野雅道
<番組サイト>https://www.htb.co.jp/hn/

*たづ(鶴)はタンチョウのこと 万葉集で数多く詠まれている
例)若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴(たづ)鳴き渡る

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この記事を書いたのは

沼田博光

HTB 報道部デスク
環境問題や野生生物、アイヌ民族の先住権問題などをテーマにしたドキュメンタリーをてがけています。

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