「この生き物は一体なに⁉・・・「たづ鳴きの里」番組裏話その②
2020.06.26
#HTBノンフィクション普段は空き地状態だった遊水地に国の特別天然記念物タンチョウを呼び寄せようとした世界でも例のない取り組みを扱ったHTBのドキュメンタリー「たづ鳴きの里」。
その舞台裏を取材ディレクターが語る第2弾。今回は歴史的発見!?なエピソードです。
長沼町に5年通い、舞鶴遊水地の変化を撮影し続けました。遊水地は何も使われていない空き地のような状態から徐々に豊かな湿地へ変わり、様々な動物や昆虫が見られるようになりました。特に驚いたのは、知床などでみられる大型猛禽類で絶滅危惧種のオオワシやオジロワシが雄々しい姿を見せ、湿地の減少と共に数を減らしているチュウヒなども訪れるようになったことです。
今回の番組では、生き生きとした動物たちの姿とユニークな生態を存分に紹介するのですが、水の中を撮影したり、数万羽の渡り鳥にカメラを向けていると、頭を悩ます生き物に出くわすこともありました。
これ何だかわかりますか?
1センチくらいの2枚貝のようなものが、ちょこまか泳いでいます。「なんで貝が泳いでいるんだろう?」と不思議に思ったものですから図鑑やネットで調べてみると、どうやら「カイエビ」というエビの仲間らしい。
報道機関なのでウラをしっかり取らなければならないのですが、道内の水族館や水産試験場、関係機関に問い合わせてみても「カイエビ?わからない」という返事ばかり。そこで富山県の科学博物館が詳しいという情報を得て、電話で問い合わせてみると・・・
「え?カイエビが北海道で⁉」と驚いた様子。
「北海道で生息しているという報告はありませんよ」と言うではありませんか。それでは、長沼のカイエビは世紀の大発見か!!と色めきだったのですが、詳しく聞くと、「カイエビは甲殻類に属するが甲殻類学会では北海道での生息は報告されていない。『生息していない』ということではなくて、『生息を調べた研究者がいない』ということだそうで、おそらくあちこちにいるのでしょうとのこと。美唄の宮島沼周辺の水田にもいたという報告もありまして、少し肩を落としていると、今度は富山の担当の方の熱量がアップしてきまして、「すぐにサンプルを入れる容器を送ります。解剖用とDNA解析用に10匹ずつ採取してください」との指示が。
という訳で加藤さんの水田にもたくさんいますので、網を持ってお邪魔してアルコール溶液に入れ、郵送したという次第です。現在、結果待ちですが、「こうなったら新種だったらいいなぁ~、ナガヌマカイエビがいいなぁ~」などと、結果を楽しみにしているところです。
さて、専門家に聞いても判別がつかなった難敵もいました。どなたかわかりましたら是非お知らせください。
このこは誰?
飛んでいるのはオオヒシクイです。途中から、くちばしが黄色い個体が1羽だけ飛んでくるのがわかります。
「誰だ?こいつは・・・へんなのが混じってる・・・」それまでこの画像に「ヒシクイ」とスーパーを打ってオンエアする予定でしたが、放送直前で気づきました。
ヒシクイと間違いやすいのはマガンですが、大きさや体の柄はヒシクイそのもの。専門家に映像を見てもらったところ「目の周りがかすかにオレンジ色でくちばしの様子からハイイロガンの幼鳥かも。ただしくちばしがピンクではなく黄色いので、アジアに生息するハイイロガンではなく、欧州で繁殖する亜種キバシハイイロガンに近いかも。そうなると欧州のハイイロガンが北海道にいるのは考えられないので、やはり違うか・・・。
ということで、この映像だけでは判別できないということになりまして、「ヒシクイ」のスーパーを慌てて削除しました。27日の放送を観て鳥の映像に名前スーパーが出ていない箇所を見つけましたら「ははぁ、スタッフが判別できなかった例のやつだな。HTBもたいしたことないな」とほくそ笑んでいただいてもかまいません。そのかわり、誰かわかった方いましたら教えてくださいね(涙)
(ディレクター沼田博光)
本日(6月26日)のHTB夕方情報番組「イチオシ‼」のニュース(午後6時15分~)の中でも一部紹介する予定です。
「たづ鳴きの里~タンチョウを呼ぶ農民たちの1500日~」
6月27日(土)午後1時30分~(北海道ローカル)
<ナレーター> 森さやか 藤村忠寿 嬉野雅道
<番組サイト>https://www.htb.co.jp/hn/
*たづ(鶴)はタンチョウのこと 万葉集で数多く詠まれている
例)若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴(たづ)鳴き渡る