新型コロナ 陰性になっても退院できない “高齢者”
2020.07.03
「では立ちましょうか」
車いすからゆっくりと立ち上がった男性。
「いきますよ、スタート」
約2か月前、新型コロナの患者として意識不明で病院に搬送されてきました。ICUでの治療の甲斐があり1か月後に回復。しかし、男性を待っていたのは筋力低下などの後遺症でした。
コロナに感染した70代男性は「ちょっと激しいことしたらダメ、ぜえぜえするゆっくりなら問題ないけど、長時間歩いたらダメ」と話します。
「同じ時期に(別の)病院に入院した人が亡くなったって聞いてね、びっくりしたよ。良く知ってる人で仲良くしてる人だからコロナはやっぱりこわいですよ…」
新型コロナの患者を130人ほど診てきた北海道医療センター。
陰性確認後も患者の治療やリハビリが一定期間必要です。いま病院が頭を抱えているのは、「陰性確認後の患者の転院先探し」です。
地域医療連携室の看護師「まだ当院患者さんいまして…別な患者さん。受け入れるかどうかの相談だったんですけど…」
その調整のため、介護施設や病院など50か所以上とやり取りをしたといいます。
一度患者になると再陽性の可能性があるため、受け入れは困難という病院も中にはありました。
「たくさん高齢者みてるところだったらそこで(コロナ陽性)が出たら崩壊する。医療センターだけよかったらいいっていうことじゃないので」
ただ、少しずつ受け入れる病院も増えてきたそうです。
この日は、先月の上旬から入院していた80代の女性が無事転院できることに…。
「他の病院に移動しますからね。そばにいますからね~」医療従事者が支えます。
転院先は、「陰性確認後2週間が経てば受け入れ可能」としている療養型の病院です。専門的な病院でさらにリハビリを行ってから自宅に帰ることになりました。
看護師の有馬さんは「向こうの病院も受け入れ態勢作り上げるのに苦労しながらやってるんだと思うとここまで来れたのは嬉しいなと思っています」と安心した表情を見せました。
北海道医療センターの副院長は「本当に大丈夫だとわかってから引き受けたいということでいわゆる転院というのにはかなり時間を要していますし、転院先を探すのにも苦労しているという状況」
「保健所もいくつかそういう病院を提案してくれて4,5か所出てきてるけどキャパは多くない」
「アフターコロナの療養病床が少ない」と課題を話しました。
陰性確認後も、医療センターでリハビリが続く患者は現在5人。
感染した男性は「最初手を手これだけ動かすのも痛かった。」
いまも指先のしびれが残り、震えは止まりません。男性は人工呼吸器をつけての治療が続き1か月近く体を動かせませんでした。
そのため筋力も低下…。
「目が覚めたら管だらけだったけど体が動かない」
「苦しかった。毎日苦しかった。熱があるからね」
血液の酸素濃度を測る機械を付けてほぼ毎日、どれだけ動けるかをみています。6分間でどれだけ長く歩けるかのテストします。
「安静時黙って座ってると97%だったけど、1分歩くと89%まで下がった」
90%を下回ると「呼吸不全」とみなされ酸素の投与が必要なレベルです。この日歩けたのは、同年代の男性平均の半分でした。
担当者は「ご本人の自覚症状としてはまだいけるって言ってましたけど、思ってるよりも動くと肺とか心臓に負担がかかってしまう」と話します。
陰性になっても、コロナウイルス後遺症との闘いは続きます。
副院長は「PCR検査で陰性になるというのは検査だけの陰性でして、陰性になっても肺の写真はまだまだ肺炎はよくなってない」
「我々の使命として元気に過ごしていただいた方はできるだけ元の状態まで戻したいということでそういう意味でのプレッシャーはある」
見えない敵との戦いは続きます。
HTBでは医療従事者の日々のたたかいを描いたドキュメンタリー テレメンタリー2020 たたかう生命の守り人 を 放送します(北海道 7月11日(土)午後1時半~ 日時違い全国放送)。こちらも是非ご覧ください。
テレメンタリー2020 たたかう生命の守り人
7月11日(土)午後1時半(北海道)
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