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『看護師ゼロ・・・』“介護崩壊”はなぜ起きた? 新型コロナウィルス第3波を前に① 

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今年5月、北海道を襲った新型コロナウィルスの感染第2波。
その波の中で起きていたのは”介護崩壊”でした。


「風邪ひかずにご飯食べてるのかなぁと思って」
家族のことを気にかける87歳の男性。

去年11月に札幌の高齢者施設に入所し、リハビリに励んでいました。
しかし…妻の待つ家に戻ったのは、遺骨だけでした。

遺族は語ります。
「まだなんかひょこっと帰ってくるんじゃないかって。遺体も見てないし。」
「悪くなってから亡くなるまであまりにも3日とかそのくらいで、私たちにしたらわからないうちに亡くなった」

家族が施設から後日受け取った、看護記録です。
夕方に「急変の可能性がある」とされながら、見回りもなく、翌日の未明に心肺停止の状態で見つかりました。

「病院だったら心臓の機械とかつけて危なくなったら看護師さんきていろいろしますよね。そういうのもなく、1人で苦しんで死んじゃったのかなと思うと、なんかね…」
「急変する前に医療が受けられたらと思うと、悔しいというか、悔やみきれないですよね。」

男性が入所していたのは、介護老人保健施設・茨戸アカシアハイツ。
入所者と職員92人が新型コロナウイルスに感染しました。

亡くなった入所者は、17人。
そのうち12人が搬送されず施設で亡くなりました。

法人の内部調査と、市の報告書。
二つの資料から浮かび上がったのは、数々の問題点でした。

緊急事態宣言が続く、4月。
北海道には感染の第2波が押し寄せていました。
そして、誰もが恐れていた事態が起きます。
札幌市の会見です。
「このたび、札幌市北区にあります介護老人保健施設「茨戸アカシアハイツ」において、新型コロナウイルスの集団感染事例が確認されましたのでお知らせします。」

およそ100人が入所する茨戸アカシアハイツでは数日前から、発熱者が続出していました。
HTBに寄せられたのは当時、施設内で働いていた職員が家族に送ったSNSでした。

「ひどいことになってる。」「泣きながら頑張れーってずっと声かけてる」

職員の家族は話します。
「重症者は病院が決まらないのになぜ陽性になってすぐの若い人は入院先が決まるんだろう」

私たちが入手した施設の内部資料には発熱者を搬送するよう、職員が保健所に何度も依頼していたことがわかりました。

職員「入院させてほしい」
保健所「陽性じゃないと動けない」

発熱者の症状が悪化し血を吐いたため、施設の職員は救急車を呼びました。
 すると保健所から電話が…
保健所「今後、救急車は呼べない」
「入院が出来ないから施設でみて(ください)」

なぜ、入院を断ったのでしょうか。

"札幌市は入院を断った理由に病床のひっ迫をあげています。

このころ、市内では毎日およそ20人の感染が分かり、患者数は病院の受け入れベッド数をオーバー。
ホテルへの移し替えなどで、何とか満床を防いでいる状態でした。

クラスター認定から2日後、施設内で初めての死者が出ます。
この日、保健所の職員は、さらに5枚の遺体袋を置いていこうとしました。
「使い方を説明しましょうか?」と言われ、アカシアの職員は怒りがこみ上げたといいます。

当時、応援に入った大友医師です。
「私が入る日には看護師がゼロ、もともといた人がゼロになって、どう把握して診療したらいいのかっていうのが想像できないくらい、どうしようかと思って。」

職員にも感染が広がって、入院や自宅待機、さらに家族の反対を受けて辞める人が続出。
51人いた医療・介護職員は11人にまで減りました。

職員「怖いけどどうしよう、ほっとけない」
職員「下痢もひどい。痰もひどい。血を吐く。」
「1フロア40人を一人でみなければならない。「出来ない」と泣く看護師もいた」
職員「おむつをトイレにバケツに山盛りに。異臭がひどかった」

応援の医師「家に帰れない人とか、車に泊まっている人とか、毎日夜勤に入っている人とか、いつ行っても同じ人しかいなくて…」
「介護崩壊の状態だったと思いますね」

同じ法人内の別の施設から応援に入った看護師はすぐに医師のいない時間に入所者を看取ることになりました。

応援の看護師「相談員とか介護職がものすごくそばに寄り添って付きっ切りで泣いて、という感じだったんですが。涙も出なかったですね。自分がきちんとみとらなければと。」

10人ほどの職員で90人前後の入所者を見る状態。食事は1日2回が限界でした。
応援の看護師「酸素もボンベだし、サクションも家庭用の簡易なものしかないし。あのなかで病院と同じレベルのことをどうしてできると思うんだろうと。」

わずか17日の間に、施設内で12人の入所者が亡くなりました。

応援の医師「最初は咳だったけど、次の日は酸素が必要になって。次の日に亡くなるという状況で、数時間くらいで亡くなる人もいたりして」
応援の看護師「いままでは人を救うことが仕事のメインの考え方だったんですよね、ただ、今回は救うというよりは・・・救いようがない」

アカシアの入所者が搬送されなかったのには
病床のひっ迫以外にもう一つの理由がありました。

~つづく~

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この記事を書いたのは

HTB 新型コロナウイルス取材班

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