「野球が出来なくなるかもしれない」ファイターズ 上沢直之投手の2020年 FFFFF ここだけの話③

 前回(12月20日)に放送したファイターズ応援番組・FFFFF(エフファイブ)では、上沢直之投手の2020年をまとめてお伝えした。左膝蓋骨の骨折という、プロ野球選手では前例がない大けがから復活を目指す中で、どんどん“大人の顔”に変わっていった上沢投手。それは、「野球が出来なくなるかもしれないと思ったこともあった」というリハビリの辛さと、そこから上沢投手自身が得たものの大きさを物語っているようだった。

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FFFFF公式インスタに掲載した上沢投手の似顔絵

 2012年、千葉県の専大松戸高校から入団した上沢投手。ドラフトでの指名順位は、下から2番目の6位。2年目までは一軍での登板が1試合もなかった。それでも、3年目、2014年の沖縄キャンプの時点では、当時既にリリーフ陣の中心的存在になっていた宮西投手が「今年は上沢を見て欲しい」と語るほど、成長を見せていた。
その年、先発ローテーションの一角に食い込むと、しなやかな腕の振りから繰り出すストレートと、140㌔台の高速フォークを武器に、8勝をマーク。宮西投手の言葉に、結果で応えてみせた。その後、怪我に苦しんだ時期もあったが、2018年に、自身初の二桁勝利となる11勝。去年は、初めて開幕投手にも指名された。
 不安定な状態が続きながらも、なんとか粘り強く勝ち星を重ねていた上沢投手。しかし、ようやく調子が上がってきた6月の試合で、強烈なピッチャーライナーが左ひざを直撃する。「膝蓋骨骨折」「全治5か月」「プロ野球選手の前例なし」。これをやれば治る、という正解が分からない中で、それでも前に進み続けた一年間。上沢投手は、一軍のマウンドに帰ってきた。そして、シーズンを通して戦い抜く姿を見せてくれた。15試合に登板して8勝6敗。チームトップタイの勝ち星を挙げたその姿は、もう膝の怪我をする前の状態に戻ったように見える。
しかし、体は動くようになっても、心に刻まれた恐怖心は、まだ残っていると言う。さらに、投球フォームにも、僅かな変化が。
「まだ左足に(体重を)載せきれない感じは少し残っているので、リリースが前より横に行っている感じがする」
12月20日の放送でも紹介したこの変化は、硬式球の直径(約7㎝)にも満たないほどだった。この僅かな変化が、投球スタイルに大きな影響を与えていた。それは、上沢投手の大きな武器だったフォークボールが思うようにコントロールできなくなったこと。腕の振りがやや横になったことで、以前までは上から振り下ろして落差を出していたフォークボールが、思うようにコントロールできなくなっていたのだ。
 ただ、悪いことばかりではない。野球が出来ない期間に筋力を強化したことで、ストレートの平均球速はアップした。そもそも、リハビリに励んでいるころから、「元に戻ること」ではなく「怪我をする前より強くなりたい」と思ってやってきた。ちょっと細くなったままの左足で8勝を挙げることができた2020年。それだけに、来シーズンの自分にかける期待も大きい。子供の頃、テレビの中で「最後まで投げ切ってみんなとハイタッチしていた」憧れのエースに、来年はきっとなっている。

 と、ここまで書いて終わりにしようかと思ったんですが、やっぱりちょっとFFFFF感が足りてないかなと思ったので、加筆しますね。
 上沢投手と言えば、中学から野球を始めて、野球歴僅か5年半でプロになる、という驚きの経歴をご存知の方も多いと思います。以前、少年野球チームの卒団式が行われるような時期にお話したことがあるんですが、「小学生のうちは野球より友達と遊んだほうがいい!」と力説していました。理由は、「中学野球をやると遊ぶ時間が全くなくなるから」。それだけ一生懸命取り組んでいたからこそ、野球歴が短くてもプロの世界にたどり着いたのだなと納得しかけたものですが、中学野球について聞いてみると、「朝練は毎回遅刻してました。遅れて参加するんで、朝練でボールを触ったことはほぼないです。走るだけで終わる。毎回」。
この人の場合は、持って生まれたセンスに“正しい”努力が乗っかった、飽くまで珍しいケースなんですね。世間の野球少年少女はあまりマネしない方がいいと思いますので、ご注意ください。

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今やファンの間で伝説になっている“上沢少年” この頃はまだ野球をやっていなかった

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この記事を書いたのは

谷口直樹 FFFFFプロデューサー

【FFFFF(エフファイブ)】
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