北海道民なら誰でもなぜか歌えるあのCM
4月15日、10年以上の時を経て復活を果たした札幌の焼肉チェーン店「昌苑」。
そんな「昌苑」といえば、店よりも有名なのが、覆面を被った奇抜な衣装の2人組が踊るあの謎のCMです。道民なら多くの人が今でも覚えているはず・・・
『しょーえん、しょーえん、やきにく、しょーえん♪』そう、そうです!
そんなCMにまつわる依頼が、今回昌苑の運営会社から我々HTBのイチオシ!特命係のもとに。
その依頼とは、「復活にあたり新たにCMを作りたいので、あの2人組を探し出してほしい」というもの。
全く手掛かりのないなか、特命係は、およそ30年前のあのCMに出ていた2人の捜索に動き出します。
果たして、2人は何者なのか?!ピエロ?はたまたレスラー!?
【手がかりは・・・ない】
今月15日。
「懐かしいですね」
「20年ぶりくらい」
かつて人気を博し、いつの間にか消滅してしまった焼肉チェーン「昌苑」が、10年以上の時を経て復活オープンを果たした。
この「焼肉昌苑」といえば道民が真っ先に思い出すのはこのCMではないだろうか。
♪昌苑~
覆面姿に、奇抜な衣装を着た男2人が踊るこの謎のCM。
「焼肉昌苑のCMは知っていますか?」
「知ってます。♪昌苑~」
「♪昌苑~」
「なんで歌えるんですか?いやわかんない」
実は、このCMにまつわるある依頼が焼肉昌苑復活のおよそ1か月前に番組あてに寄せられていた。
それが…
焼肉昌苑・小野さん「以前のCMのリニューアルバージョンを新しく作りたいのですが、かなり前のものなので、誰が踊っているのかなど全くわからないんですよ」
要するに、焼肉昌苑復活にあたり、もう一度CM出演者の二人を探し出して欲しいという依頼だ。
「Q:会社に資料とか残っていないんですか?」
「残ってないんですよ」(小野さん)
およそ30年も前に撮影されたCMで、
当時の記録も手掛かりもない中、我々は2人の捜索を開始した。
「何してる人かって・・全然わからないです」
「え?プロレスラー?プロレスラー」
「ピエロっぽいけどね」
「ピエロとか、大道芸人に見えますけど・・・」
街行く人から情報は得られなかったものの、その見た目から多くの人がピエロかレスラーじゃないかと推測。
確かに…
市民の声をヒントに、番組はこの団体に接触を試みた。
「こんにちは~失礼します。北海道テレビなんですけれど・・」
ピエロ歴10年以上のベテランも所属する札幌のピエロサークル、ピエロにチャレンジ。ここなら何か、わかるのでは。
「この人を探しているんですけど」
「知らないねえ」
「ピエロやっている人は知り合いで何人か知っていますけどおれはこれをやっていたんだという人には会ったことないなあ」
どうやらピエロの線は薄いようだ。
続いて向かった先は。
「123! 124! 125!(スクワットの掛け声)」
スクワットに励むこの覆面男たちは、
札幌近郊で活動する社会人プロレス団体。プロレスリングサッポロ。
“覆面つながり”で何か情報はないだろうか。
「この覆面の人ご存知ないですか?」
「いや知らない」
「プロレスラーではないかなと思いましたけど、プロレスラーの大胸筋ではないかな」
なかなか2人に関する情報が出てこない。
完全に袋小路状態。
そこでわれわれは方針を変え、
このCMを作った人物から当たってみることに。
すると、制作会社経由で「中村えいいちろう」という人物が浮上。
現在も石川県でCMディレクターをしているというこの人物に特命係は接触した。
当時のCMを作った中村衛一郎さん「いや懐かしい話ですね、僕もびっくりしました」
「Qあの2人はご存知ですか?」
「もちろんもちろん、知っています」(中村さん)
「Qどちらにいらっしゃるかご存知ですか?
「今2人とも札幌にいます」(中村さん)
ついに、決定的な情報を得たスタッフは
まず1人目がいるらしい Feダンススタジオへ。
「Q:こんにちは~すいません、焼肉昌苑のCMに出ている方がいると聞いたのですが」
「あ、後ろを見ていただいて・・・」
「こんにちは~CMに出ていた方?」
「ずいぶん昔ですが私が昌苑マンの西野と申します」
ついに、2人組のうち左側の出演者を発見した。
「自分はあれからダンスの武者修行、海外に行ったり、オーディションを受けたりして、Feダンススタジオを設立して若手の子どもから大人の方までダンスを教えている」(西野哲也さん)
当時からダンス一筋の西野さんは、ダンスの本場・アメリカで修業し、全国各地を飛び回っていた一流ダンサー。現在は指導者としてここ北海道から世界を目指すダンサーの育成に取り組んでいる。
「Q:ピエロをやってたりとかプロレスラーをやってたりとか?」
「そういうの実はないんですよ、こういうのを着てくださいという衣装合わせをして撮影をしたという感じです」(西野さん)
残る一人に会うため、
情報をもとに向かった先は市内の中学校。
一般開放の体育館で、おこなわれていたよさこいの練習。
先頭に立って指導するこの男性こそ・・
「Q:こんにちは、CMに出られていた方ですか?」
「はい、そうです」
2人組のうちのもう1人、高橋学さん。
「平岸天神チームのふりつけを担当していて、練習をしておりました」(高橋さん)
よさこいソーランの歴代最多受賞チーム「平岸天神」の振り付けを28年間も担当しているという凄い人。
というわけで、番組はあのCMに出ていた二人を発見。彼らの正体は、かつても今も、札幌が誇るカリスマ的ダンサーだった。
「ガチャ」
「おはようございます~」
こうして無事に出演者が見つかり、
当時のCMディレクター中村さんがメガホンをとって新しいCMの撮影ができることに。
およそ30年ぶりとなる世紀のCM復活を見届けようと特命係のカメラも潜入した。
「♪昌苑~(ダンス)」
焼肉昌苑の小野さんも見守る中、なんと踊りは当時と同じく、すべて2人のアドリブだというから驚きだ。
「♪昌苑昌苑~(アドリブ)」
そして、ついに新CMが完成。
お二人は・・・
「全道のみなさんのご期待に応えるべく頑張りました」
CMディレクターの中村さんは
「音楽といい衣装といい全てがマッチングしてできたCMだと改めて思いました」
依頼者の小野さんは
「泣きそうになってたんです、ありがとうございます」
「(Q:連絡先わからなくならないように)はい、忘れないようにいたします」
このようなローカルCMについて、映画やCM制作を手掛け、東海大学の講師も務めている早川渉先生は
『ローカルCMは「時代と故郷の匂いを凝縮させた文化遺産」。
・短い時間の中に音楽や衣装など時代の空気が反映されていて、さらにその地域と強く結びついていることで見た人に故郷を思い出させるトリガーとなる。
・特に北海道はほかの地域に比べてローカルCMが多い傾向がある。その理由は、ほかの県と行き来しやすい。首都圏エリアなどと違ってターゲット客が道民に限られるため。』
と分析します。
こうして、およそ30年の時を経て、また新しく道民の記憶に残るCMが一つ誕生です。
(イチオシ!で放送されました。動画でぜひご覧ください!)