今年度すでに18億円超の衝撃……。急増する特殊詐欺から身を守る、警察と銀行の新たな一手と私たちが今すぐできること
2026.06.20
相次ぐ特殊詐欺の被害拡大を防ごうと、警察と銀行による新たな対策がスタートしました。還付金詐欺やオレオレ詐欺など、手口が巧妙化するなかで、私たちはどのように身を守ればよいのでしょうか。今回は、急増する道内の被害現状と、今月から始まった新たな取り組み、そして私たちが今日から実践できる具体的な防衛策について詳しくお伝えします。
被害額は前年同期比で約8億円増。他人事ではない特殊詐欺の脅威
オレオレ詐欺やニセ警察詐欺など、後を絶たない特殊詐欺。道警のまとめによると、昨年1年間に道内で発生した特殊詐欺の被害額は、約27億6000万円にものぼりました。さらに衝撃的なのは今年のデータです。4月末時点の暫定値で、被害額はすでに18億7000万円を超えており、前年の同じ時期と比べると約8億円も増加しているという危機的な状況にあります。


「自分は絶対にだまされない」 70代女性が語る、還付金詐欺のリアルな恐怖
過去に実際に詐欺被害に遭った、道内に住む70代の女性が重い口を開いてくれました。女性のもとに届いたのは、市役所職員を名乗る男からの「医療費の還付金がある」という電話でした。男の指示通りにATMを操作してしまった女性は、2回にわたって計30万円を振り込んでしまったといいます。
女性は当時を振り返り、携帯電話を持っていけばATMに着いたかどうかを確認される程度の電話だと思っていた、と語ります。まさか、ATMの操作そのものを誘導するための電話だとは夢にも思わなかったそうです。「テレビなどで還付金詐欺のニュースは聞いていたけれど、だまされているときは気がつかない。自分だけは絶対に大丈夫だと思い込んでいた」という言葉には、誰もが当事者になり得るというリアルな恐怖がにじんでいます。

郵送からオンラインへ。警察と銀行が挑む「スピード重視」の新枠組み
このように口座を悪用した特殊詐欺の被害拡大を食い止めるため、今月から警察とゆうちょ銀行をはじめとする9つの銀行が連携し、新しい枠組みの運用が始まりました。ゆうちょ銀行マネー・ローンダリング対策部の橋口和人担当部長は、今回の狙いを「被害金の迅速な追跡、凍結、そして回復に向けた枠組みの創設」であると説明します。
これまでの仕組みでは、警察が被害届を受理したあと、金融機関への口座情報の照会を「郵送」で行っていました。そのため、書類が届いて金融機関が処理を終えるまでに数日から数週間もの時間がかかっていたのです。そのわずかな隙を突き、詐欺グループはだまし取ったお金を別の銀行口座へと次々に移動させ、足がつかないように分散していました。
新しい枠組みでは、警察庁を経由してこの照会手続きをすべて「オンライン」で実施します。これにより、詐欺グループの口座へこれまでよりも圧倒的に早く「鍵(口座凍結)」をかけることが可能になり、被害金の流出阻止や犯人の検挙への貢献が期待されています。

犯行の75%以上が国際電話。今日からできる3つの自己防衛策
しかし、何よりも大切なのは「被害に遭う前に防ぐこと」です。ゆうちょ銀行の橋口さんも、もし普段とお金の動きが違うと感じたら、怪しいと思わなくても振込先にすぐ確認の連絡を入れ、連絡がつかなければすぐに警察へ相談してほしいと呼びかけています。
さらに、私たちが今すぐ実践できる具体的な防衛策として、以下の3つのポイントが挙げられます。
まず1つ目は、ATMでは公的なお金や還付金を受け取ることは絶対にできないと正しく知っておくことです。2つ目は、万が一に備えて、ATMの1日あたりの利用限度額をあらかじめ低く設定しておくこと。そして3つ目は、知らない番号からの電話には出ないよう、着信拒否設定を活用することです。

また、近年の特殊詐欺における非常に大きな特徴として「国際電話の悪用」があります。実は、特殊詐欺の電話の多くが「+1」や「+44」から始まる国際電話番号からかけられており、全体の約75.5%を占めています。海外に知人や家族がいない場合は、国際電話の着信自体を拒否してしまうのが最も有効な対策です。
固定電話であれば「国際電話不取扱受付センター」へ電話手続きをすることで、無料で国際電話の着信をストップできます。スマートフォンであれば、NTTタウンページが提供するアプリなど、無料の詐欺対策アプリを導入することで簡単にブロックが可能です。
「自分はだまされない」という思い込みをなくし、日頃からシステムやアプリを使って物理的にリスクを減らしておくこと。それが、巧妙化する詐欺から大切な財産を守るための第一歩になります。

