【"ダンゴムシ先生" 佐藤ちひろ先生】北海道にはいなかった!? 25年間のダンゴムシ研究・超ディープな生態学|ねえ...その道の人生、のぞいていい? HTBPodcast #12

身近な地面や落ち葉の下で見かけるダンゴムシ。実は北海道にはもともと生息しておらず、現在も生息域を広げている最中だということをご存じでしょうか。ポッドキャスト『ねぇ、その道の人生のぞいていい?』では、田口彩夏アナウンサーが「ダンゴムシ先生」こと佐藤ちひろさんにお話を伺いました。研究歴約25年におよぶ佐藤さんに、ダンゴムシとの出会いや北海道での広がり、知られざる生態についてご紹介します。

01_対談を行う田口アナウンサーと佐藤千尋さん.jpg

始まりはコップ一杯の虫!ダンゴムシ研究歴25年の原点

佐藤さんがダンゴムシの研究に足を踏み入れたのは、大学時代の講義がきっかけでした。2000年頃、大学の授業で地面すれすれにプラスチックのコップを埋め、落ちてきた虫の種類や数を調べるフィールドワークがありました。仕掛けを回収したところ、佐藤さんのコップには8割ほどダンゴムシとワラジムシが密集していたといいます。

02_コップに入った虫の量を身振りで説明する佐藤さん.jpg

当時、専門家の間でも「北海道にダンゴムシはいない」というのが常識でした。そんな折、卒業論文のテーマ選定で指導教員から飛び出した「ダンゴムシ、やってみない?」のひと言。「あの先生の言葉がすべての始まりでした」と佐藤さんは振り返ります。こうして、愛車や公共交通機関を駆使して道内全域を巡り、ダンゴムシをひたすら探し歩く泥臭い日々が幕を開けました。

エビやカニの仲間だった!?知られざるダンゴムシの進化と生態

私たちがよく目にするダンゴムシは、正式名称を「オカダンゴムシ」と呼びます。本来は北海道だけでなく日本全土にも存在しておらず、江戸時代の鎖国が解かれて開国した際、外国船の荷物などに付着して日本へ渡ってきた外来種です。山奥などにひっそり暮らす在来種もいますが、繁殖力が極めて弱いため見つけるのは困難です。

ダンゴムシのルーツは昆虫ではなく、エビやカニと同じ甲殻類です。海から陸へと適応する過程で、フナムシ、ワラジムシ、ダンゴムシへと進化を遂げました。丸くなって身を守る手段を選んだダンゴムシは素早く逃げる足の速さを捨てた一方、丸まれないワラジムシは素早く走る能力を残しました。また、枯れ葉や死骸を食べるワラジムシに対し、ダンゴムシは植物の新芽など生きたものも食べるため、園芸などでは害虫として扱われる一面も持っています。

函館から稚内まで北上中!道内における生息域拡大の謎

港から上陸したダンゴムシは、横浜や神戸などの港町で最初に発見され、北海道でも小樽や函館、札幌の西側、網走周辺などで確認されました。札幌市の「モエレ沼公園」が造成された当初、沼の内側にのみ生息していたダンゴムシが、数年後には公園の外側まで生息域を拡大していた事例もあり、工事に伴う土や植物の移動とともに運ばれたとみられています。

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2024年に北海道新聞を通じて生息調査のアンケートを実施したところ、南は函館から北は稚内に至るまで幅広い目撃情報が寄せられました。しかし、十勝や根室、釧路といった道東エリアからは情報が届かず、知床半島の羅臼でも山を越えられずに生息していないと考えられています。佐藤さんは「今まさにこの広がってってる最中みたいな、そういう過渡期にちょうど立ち会えるみたいな、そういう楽しさですね」と語り、確実な調査のため役場や道の駅でワラジムシを50匹見つけてもダンゴムシがいなければ不在と判断する基準を設けて調査を続けています。

紙製の人体模型に浮沈子も!手作り教材で伝える科学の面白さ

子どもたちに科学の魅力を伝える活動にも力を入れている佐藤さんは、ユニークな手作り教材を多数生み出してきました。スタジオで披露されたのは、毎日コツコツと42日間かけて完成させたという紙製の人体模型「ろっぷ君」です。五臓六腑を模した内臓パーツはすべて個別に取り外しが可能で、子どもたちが人体構造を直感的に学べる工夫が凝らされています。

04_42日間かけて制作した紙製の人体模型「ろっぷ君」を披露.jpg

さらに、ペットボトルとスポンジ、クリップを組み合わせた浮沈子の実験装置「onちゃん」の実演も行われました。ボトルを強く握ると水圧でスポンジ内の空気が圧縮されて浮力を失い沈み、手を緩めると再び浮き上がる仕組みです。身近な現象から理科の原理を体感できる仕掛けに、田口アナウンサーも驚きの声をあげていました。

05_ペットボトルを握り浮沈子「おんちゃん」を沈ませる実験.jpg

周りの目を気にせず好きな道を進んできた佐藤さんは、

「結局やるのは自分なんでね。自分の人生なので、やりたいことはやったらいいじゃんっていう風に思ってます」

その飾らない言葉には、純粋な好奇心を貫いてきた研究者ならではの説得力が宿っています。足元の小さな命に目を凝らしてみれば、そこにはまだ誰も知らない壮大なドラマが広がっているのかもしれません。

この記事を書いたのは

田口彩夏(HTBアナウンサー)

「イチモニ!」「おにぎりあたためますか」「錦鯉が行く!のりのり散歩」を担当。

”その道の人生をのぞく”をテーマに、個性豊かな方々が歩んできた人生の裏側や本音を深掘り中!Podcast番組「ねぇ...その道の人生、のぞいていい?」を立ち上げ、聞き手として番組を運営しています。
※Spotify, Apple Podcasts, Amazon Music, HTB公式YouTubeチャンネルでお聴きいただけます。

学生時代は、スイーツバキュームというあだ名がつくほどの甘党。
「イチモニ!スイーツ部」の部長。

中学時代「全国中学生創造ものづくり教育フェア」で特許庁長官賞(全国1位)になったことがあり、ものづくりが好き。「イチモニ!工作部」の部長として、秋の大感謝祭などで子供向けの工作教室を開催しています。

趣味は、旅行・キャンプ・英会話・アイドルの推し活

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